第6章 前世との因縁

第61話 正義

翌日、クロス達は村を出て、新しい仲間グエンとシルフィを加えて、魔王城へ向かっていた。


クロス「...........」


フローズ「..........」


ミク「..........」


メミル「..........」


セシル「..........」


いや、向かおうとしていた


クロス「なぁ」


フローズ「何?」


クロスは目の前の光景を理解しながら、その事を否定したくてフローズに質問する


クロス「ここにさ、馬いなかった?」


フローズ「いたね」


そうクロス達は村の入り口で馬を繋ぎ止めていたのだ、しかし今目の前にはその馬らしき影がない。


クロス「フローズ、メミル」


フローズ「何?」


メミル「?」


クロス「魔物の大軍がここに向かってくる時にこっち方面から迎え撃ったのってお前達だよな?」


フローズ「そうよ」


メミル「そうだけど」


そう四方向から攻められた時、馬を繋ぎ止めていた方向の敵を担当していたのは彼女達だ


クロス「その時はなんともなかったの?」


つまりいえば、彼女達は必然的に見ているはずなのだ。


しかし


フローズ「ごめん、見てなかった」


メミル「私もつい」


クロス「てことは、その時に逃げられたのか」はあ


クロスは大きくため息をつく


グエン「そんなに落ち込むとは、そんなに大切なのか?」


理解していないのかグエンが突拍子もない事を言う


クロス「当たり前だろ?あの馬には非常食が入ってたし、それに帰り道どうするんだよ?」


クロス達は馬を使って最短ルートで来ている、それでも1ヶ月以上はかかっているのだ


シルフィ「でしたら英雄の力を使えば良いのでは?」


英雄の力なら彼女達を連れて王国まで行くのは容易いだろう.....が


クロス「..........それさ、その分の体力を残してレプリカと戦えと?」


普通に考えて無理だろう


クロス「...............はあ、まぁ、今はレプリカだ、帰りのこととそれまでの食糧は後回しだ」


クロスは少し絶望しながらも、そんな後の事よりも今の事を考えようと思い歩き始めた


————————————————————

そうやって数時間歩いて、セシルが「あっ」

と言ってみんなの足が止まる


フローズ「どうしたのセシル?」


セシル「いえ、出発前に言っていた帰り道のことですが、逆に行きは使えるんじゃないかなって」


帰りの事をクロスは言っていたが、賢者あるセシルなら行きで消耗した分を魔法で補える


メミル「でも、そうすると体力の温存が」


セシル「いえ、そうではなくて、私は賢者ですから、多少の回復なら私が行えますので、そうすれば歩く必要ないかなって」


つまりはこういう事だ


クロス「セシル.......」


セシル「っ!」ピクッ


手がこちらに伸びる、それによりに体が震えるが


クロス「その手があったな、そこまで頭が回らなかった、ありがとう」なでなで


そう言ってクロスはセシルの頭を撫でる


セシル「ふあ..どういたしまして」


ふにぁと聞こえそうな程、顔がにやけるセシル


フローズ「..........」ジー


ミク「..........」ジー


メミル「.........」ジー


その姿を見て目のハイライトがオフになる3人


グエン「相変わらず、お前はモテるなあ」


シルフィ「本当です、その人たらし、なんとかした方が良いですよ」


クロス「してるつもりはないんだよなぁ」なでなでなでなでなでなでなでなで


クロス曰く、小動物を愛でる感じらしい


セシル「あ....///に...義兄さん.....らめ////」


頭を撫でられているだけなのに、何故か感じているセシル


フローズ「ミク.....メミル.....」


ミク「はい、フローズ様」


メミル「汚れ仕事ならなんなりと」


かなりやばい雰囲気になってきたので慌ててグエン達が止める


グエン「おい!クロスもう良いだろ!」バッ


クロス「.....そうだな、ごめんな」


シルフィ「貴女達も仲間なんですから、やめてください」


フローズ「ごめん、ちょっと取り乱してた」


ミク「ごめん」


メミル「ごめんなさい」


セシル(なでなでよかった///)


その後、クロス達はいざこざがあったが無事、魔王城に向かう事が出来た


————————————————————

~上空にて~


クロス達は英雄の力を使いミク、メミル、セシルを1人ずつ背負いながら飛んでいた


そしてクロスが背負っているのはミクで、そのミクがクロスに話しかける


ミク「ねぇクロス」


クロス「ん?」


ミク「前に言ったよね?レプリカがああなった理由」


クロス「ああ言ったな」


レプリカがああなった理由、愛する人を殺した人間への復讐心、それが今は世界へ牙を向けている


ミク「あたしね、わかる気がするんだ」


そう言ってギュッと抱きつく


クロス「レプリカの事か?」


ミク「うん」


ミク「大好きな人を殺した人間への復讐心、もしそれが、全世界にならないで、その殺した人達だけなら、あたし達は今、こんな事をしているのかな?」


所謂、敵討ちか、しかし


クロス「どうかな」


ミク「え」


クロス「もしその人間が、その一帯の権力者だったら?きっと上手いことほかの人間を騙して、更に酷いことをしていたかもしれないぞ」


ミク「そ....それは....」


ミクは口を閉ざしてしまう、そう、それが山賊や盗賊ならお咎めはないだろうが、それが権力者だったらそうは行かない。


それを堕とせる証拠などがなければ、逆にこちらが咎められるだろう


クロス「人間というのはそういう者だ、己の為なら平気で仲間を裏切る、そんな奴ばっかなのさ」


ミク「クロス....」


多分前世の世界の記憶だろう、クロスは多分人間の悪意に触れてしまった、だからだろう


クロス「だけど」


クロス「人間の中にはどうしようもない馬鹿がいる、こんなクソッタレの世界で誰かの為に頑張れる馬鹿どもが、俺はそう言う人間を守りたい、だから俺は英雄になった」


その悪意に立ち向かう者達がいる事を知ったのは


クロス「フローズもそうだ、俺と同じような環境で暮らしてきた、だから俺達は繋がりが欲しくて色々な事をした」


そう言って左手を見る、半分になった紋章、2人で共に生きていこうと、例え共依存となろうとも


クロス「"正義が勝つ"と皆が言う、けど違うんだ、正義が勝つんじゃない」


クロス「"勝った者が正義"なんだ」


ミク「.............」


クロス「勝った者が、自分がいかに正しいかを言い、負けた者は弁論しようとしても負けているから何も言えない、これが世の中の現実だ」


そしてこれはいつまでも変わることはないだろう


クロス「だからこそ、俺達が勝つんだ」


ミク「クロス.....」


クロス「勝った者が正義なら、俺達が勝って、これが正義だと、証明するしかないんだ。」


ミク「そうね.....そうだよね」


ミク(負けたら、全てが終わる、クロスの言った通り、レプリカが正義となって、この世界を侵略する)


ミク「勝とう!絶対に!!」


クロス「ああ、勝って証明するんだ!」


勝った者が正義なら、勝ち続けるしかない、己の正義を証明するために。


クロス「行こう、最後の戦いに」


そう言ってクロス達は魔王城へと向かう


————————————————————

続く




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