第40話 幸せなひと時

その後村の広場へ行き、クロスはフローズを含めミク達とも再び婚約関係になった事を話した。


もちろんみんな驚いたが、クロス自身が英雄として勇者マンルを倒した話も出始め今は色んな人達にあれやこれやと質問責めにあっている。


ミク「.........凄い人集りね」


メミル「そりゃあ、あの親善試合を見たんだから誰だって驚くわよ」


セシル「やっぱりそうだよね、私だって未だに実感ないもん」


フローズ「フフッでもクロス楽しそう」


女性陣は少し離れた所でクロスの様子を見ていた。

両親達は今度こそ歓迎するためにと食材を買いに行っている、前回はマンルのせいで悲惨な目に遭ったので、今度こそ!と意気込んでいる。


女性陣はまだまだ時間がかかりそうだと思ったので、フローズのために村を案内していた。


フローズには前世の記憶もあるため最低限の知識はある、それでもこの世界で17年間王族として暮らしているため、このようなのどかな景色をあまり見たことがないため、非常に喜んでいた。


様々な所を案内して、最後にクロスの家、ミク達の家を紹介した。


フローズ(ここがこの世界で暮らしたクロスの家か)


ミク「フローズ様にしたらちょっと田舎過ぎましたか?」


まじまじと見ていた為、気に入ってないのでは?と気を使ってくれるミク


フローズ「いえ、ここでクロスが暮らしていたんだなぁと思ってまして」


メミル「そうですね、小さい頃に拾われてから、もう数十年、色々ありましたね」


セシル「ええ、私達も良かれと思ってやっていたことが、あそこまでクロスを追い込んでいたなんて」


そう言って顔を下げる、彼女達にとってここは楽しい日々を思い出す反面、己の過ちを思い出させる場所でもある。


そんな姿を見てフローズは言った


フローズ「でも、私は貴女達に感謝していますよ?」


ミク「フローズ様?」


フローズ「もし貴女達がそんな人でなければ、私はクロスと出会わなかった、そして勇者マンルに勝てなかった、貴女達はずっとあの屑の性処理道具として一生生きていたかもしれない、そう考えると今の私達がいるのは、過去の後悔によるものなんです、貴女達が犯した罪は消えないけれど、更なる悲劇を止めることが出来た、そう思えばいいのです。」


メミル「フローズ様」


セシル「フローズ様」


彼女の言葉にミク達は心を打たれた。

そう、彼女達の束縛がなければ彼は森に行かなかった、そうすれば前世の記憶も戻らず、ミク達はずっとマンルに寝取られたまんまだった、今こうしてまたクロスといられるのは単に昔の彼女達の束縛のおかげでもある、それが許されるわけではないが、それがあってのこの未来だと言うのを実感できた。


そう考え耽っていると、


クロス「テメーら、よくも俺を見捨てたなぁ......」ニコ


フローズ「あ」


ミク「やべ」


メミル「すっかり忘れてた」


セシル「ごめんね」


クロス「....................」ニコ


女性陣「.............」ニコ


クロス「油風呂に入りたい奴から前に出ろ」


フローズ「それ本当に死んじゃうから!?」


ミク「てか、しょうがないじゃん!あたし達は蚊帳の外だったんだから!」


メミル「うんうん、しょうがないしょうがない!」


セシル「だから義兄落ち着いて、ね?」


クロス「.........」


クロス「はあ、まぁそうだよな、ずっと話しかけられて疲れたからつい、すまなかった」


どうやら落ち着いてくれたようだ、しかし、もしこれで許してくれなかったらと考えるとゾッとするので考えるのをやめた


ミク「とりあえず家に入りましょ?お父さん達は買い物に行っていないからそれまでは部屋でゆっくりしてましょ?」


クロス「それもそうだな、んじゃ久しぶりの我が家に入りましょうか」


そう言って家の中に入る、そこは前と変わらない自分達の家の中だった


クロス「.....帰ってきたんだな」


ミク「ええ、懐かしい匂いがする」


メミル「なんか何十年も家に帰ってきてなかった感じね」


セシル「本当は数ヶ月振りなのにそんなにも長く感じる程、色々あったからね」


フローズ(ここがクロスの家の中か、昔暮らしていた家と似ている)


そして5人は2階に上がりクロスの部屋に入った


クロス「5人だと狭いな」


フローズ「まぁいいんじゃない?私は気にしてないし」


メミル「だからクロスと部屋をくっつけようって言ったのに」


セシル「それで壁を壊してこっ酷く叱られたの忘れたの?」


メミル「ちょっとセシル!?」


クロス「ハハッそう言えばそんな事もあったなw」


メミル「クロスまで!?」


ミク「メミル、貴女ねぇ」ドン引き


セシル「部屋と部屋をくっつけようと道を作ってた貴女に言われたくない」


ミク「ちょ!それは言わないでよ!?」


クロス「確かそれで雨の日にもずっと道作ってて風邪ひいたんだっけ?ハハッ懐かしいな」


ミク「ちょっと忘れなさいよ!?」


フローズ「フフッ本当に仲が良いわね、みんな」


クロス「.....だな、なんで忘れてたんだろ」


そう言って上を見るクロス、それに同じてミク達も少し表情が暗くなった。


クロスを追い込み、こんななんと変哲もない日常を忘れさせる程追い込んだ事を彼女達は悔やんでいる、例え誰がなんと言おうともこれは暫く続くだろう。


クロス「すまん、ちょっと暗くしすぎた」


この空気に耐えきれなくなり、話出すクロス


フローズ「ううん、私の方こそごめんなさい、ちょっとヤキモチ妬いちゃって」


ミク「......フローズ様も可愛い一面あるんですね?」


フローズ「ちょ、どう言う事!」


メミル「確かにフローズ様って最初はザお姫様って感じでしたけど」


セシル「今は私達と同じ女の子って感じですね♪」


クロス「それと大食いだしな」


ミク「ああ、あの姿を見た時は驚いたなぁ、あんなにあった食材がなくなるなんて。」


メミル「王女様なんて思わなかった」


セシル「ただの大食らい」


フローズ「酷い!」


そうしてみんなで笑う、他愛もない話だが、つい前までは叶うことのなかった光景だ


そうこうしているうちに、クロスとミクの両親が帰きた


クロス「よし!では俺も手伝いに行こうかな?」


フローズ「んじゃあ、私も」


クロス「いや、フローズはここでミク達が調理場に行かせないようにしといてくれ」ひそひそ


フローズ「え?なんで?」ひそひそ


クロス「........いいから....頼む」ひそひそ


フローズ「....まぁ、クロスが言うなら、わかったわ」ひそひそ


クロス「ありがとう」ひそひそ


ミク「なんの話してんの?」


クロス「ん.....ああ、俺は調理場に行くから時間になったら呼ぶからそれまで”ミク達と”待機してくれって頼んだんだ。」


メミル「?...なんで私達も残るの?私達も行くわよ」


クロス「いや、許してもらったとは言え、まだまだ時間がかかる、今回は俺1人で行くから.....な?」


セシル「.......なんか怪しいけど、その通りだから、わかったわ義兄さん今回は素直に待つわ」


クロス「ありがとう、みんな」


クロス(これでよし!両親達は分かってるから安心だな)


こうしてクロスは未然に殺人を防ぐことができた、ミク達の料理は未だに人が食える物ではない、昔料理の仕方を教えて貰っていたらしいが、信用できるものではない。


そしてクロスが手伝いに来た時にまず言われたのが、客人扱いのクロスが何故来たのかではなく、しっかりとミク達が来ないように説得したかと最初に言われた。


しっかりと対策を立てたと言った時は今日1番の緊張が解れたかのように、とても大きなため息を吐いた


————————————————————

続く

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