第39話 故郷

村の前まで行くと入り口に人がいた。


村人「?.....なんですか?貴方達」


急に来た馬車に驚く村人、それはそうだ、なんも聞かされていないのにいきなりこんな豪華な馬車が来れば誰だって驚く。


馬車を運転していた人が言う前に後ろの扉が開く、そして


クロス「よう、久し振りだな」


村人「クロス.....クロスなのか!?」


クロス「おう!」


村人「なんだよ!久し振りじゃねぇか!待ってろすぐみんなを呼んでくる!」


そう言って村人は村の中央に行く、

"クロスが帰ってきたぞー!"

と言う声が響き渡る。


ミク「あたし達もいるんだけどね。」


メミル「まぁ最初に降りたのがクロスだから仕方ないけど。」


セシル「私はみんなの目線が怖いよ」


そう心配していると、馬車から優雅に降りてきたフローズに


フローズ「大丈夫よ、クロスも言ったでしょ?"必ず守る"って」


と言われた


それを聞いて3人はくすりと笑い


ミク「そうね、まだ怖いけど」


メミル「でも、勇気を持っていかないとね」


セシル「このままじゃ、何も変わらないからね」


そうして、覚悟を決めた3人は村の人達がくるのを待った。


————————————————————


クロス父「....クロス」


クロス母「.....メミル、セシル」


クロス「義父さん、義母さん」


メミル「............」


セシル「.............」


まず最初に来たのはクロスとメミル、セシルの両親だった。


駆け足でやってきたのだが、彼女達を見て、顔が引き攣っていた、それはあんな裏切り方をしたのだ、例え魅了でもなかなか受け止められるものではない。


メミルもセシルも意気込んでいたが、やはり目の当たりすると、言葉を濁してしまう。


クロス「.......あのさ」


そんな緊迫した中クロスが話しかける。


クロス「俺はもう気にしてないよ、確かに寝取られてとても悲しかったけど、またやり直したから.....さ?」


そう言ってクロスはメミル達を見る


メミル達も悲痛な顔をしながらこちらを見る


メミル「あ....あの..ね、話は知ってると思う....けど、私達、彼奴の魅了に....か...かかってて」


言葉を何回も噛みながら、それでも


メミル「本当にごめんなさい!!」


セシル「私も、たくさん傷つけてごめんなさい!」


謝る、己の犯した罪を自覚して


クロス父「お前達......」


クロス母「クロスはこれでいいのかい?」


唐突に振られる、もちろん答えは決まってる。


クロス「ああ、彼女達は十分傷ついた、これ以上やっても意味はないし、それに、傷ついている姿ももう見たくないから」


メミル「クロス.....」


セシル「義兄さん......」


その言葉に満足したのか、クロス母は微笑みながら声をかけた


クロス母「わかったわ、クロスが言っているんです。信じましょう」


クロス「義母さん...!」


メミル「お母さん.....」


セシル「お母さん」


これで一安心、と思いきや


クロス母「貴方はどうするのですか?」


クロス父「俺か?」


クロス母「ええ」


クロス父「もし許してなかったら、1発ぶん殴ろうと思っていたが」


クロス.メミル.セシル

(.....マジで!?)


クロス父「お前やクロスが許したんだ、俺からは何も言わん」


クロス「義父さん、ありがとう」


クロス母「あなた」


メミル「ありがとうお父さん!」


セシル「お父さん、ありがとう!」


これで本当に一安心だ...クロスの家族は


ミク「...クロス」ギュ


クロス「ああ、わかってるよ」


————————————————————

次に来たのはミクの両親だった

クロス達の両親も最初は顔が引き攣っている程度だったが、これは更に酷かった


クロス「お.....お久しぶりです、おじさん、おばさん」冷汗


殺気と言うか、殺意と言うか、そのようなオーラが漂っていた


クロス(おい!みんな知ってるんだろ!?魅了の事!)ヒソヒソ


ミク(知ってるはずよ!でも...あんなにこわいお父さんとお母さん初めてだよ!?)ヒソヒソ


ミク父「ああ、久し振りだな」


ミク母「数ヶ月ぶりね、元気にしてましたか?」


話し方は普通だが時折見るミクを見る目が殺る目だった


クロス「え、ええ、元気にしてました、ミクともまた1からやり直そうと話し合って決めました。」


ミク父「やり直す?」


ミク母「それなんで?」


一言一言に重みを感じる、言葉を間違えたら一貫の終わりだ


クロス「ええと、ミク達は確かに俺を裏切りました、で...ですがそれはあの勇者の魅了能力によって引き起こしたものです」


ミク父「それで許したと?」


クロス「はい」


ミク母「貴方はそれでいいの?そんな事されても貴方が傷つき、裏切った事実は変わらないのよ?」


クロス「確かに彼女達のせいで俺は傷つきました、でも、それは彼女達も同じです、自分の犯した罪にずっと苦しんでました、だからまた一歩ずつ一緒に歩んでいこうと決めました(婚約は仮だけど)」


ミク父「そうか、ならクロスの覚悟はいい、だが、ミク」


ミク「は.....はい!」


ミク母「あなたはクロスを傷つけました、それもせっかくの婚約もあなたとあの屑のせいでなくなりました、この溝は大きいと思いますが、やり直せるのですか?」


ミク「はい!.........あたしのせいでクロスは傷つき、あたしは精神を病みました、それでもクロスはあたし達を暖かく迎え入れてくれました、そんな優しい彼をあたしは...いえ、あたし達は支え合っていこうと決めました」


その目は真剣で本当に覚悟をした目だった。


それを見てなのか、ミクの両親の殺気だった様子がなくなり、いつもの姿に戻っていた


ミク母「貴方達がそこまでの覚悟なら私達は何も言いません」


ミク父「まぁ、まだ許せない気持ちもあるが1番の当事者であるクロスが許したんだ、もういいだろう」


クロス.ミク

「!......ありがとうございます!」


これでバラバラになった家族がまた、1つになったな..と少し喜んでいるとゆっくりと誰かがやってきて話しかけてきた。


村長「どうやら無事に仲直りしたようじゃな」


みんな「村長!」


それはクロス達を本当の孫のように可愛がってくれた村長だった


村長「久し振りだな、クロス、ミク、メミル、セシル」


クロス「はい、お久しぶりです」


ミク「あの.....村長...私達....」


村長「ああ、気にしなくても良い、わしはもう許しておる」


メミル「え?」


セシル「なんでですか?」


村長の言葉にこちらも驚く、全員が全員両親のように怒らないと思っていたが、まさか村長が怒っていなかったとは、とクロス達は思っていた。


村長「わしもな、昔婚約者を盗られたことがあったんだ」


クロス「村長がですか!?」


それは初耳だその言葉でみんな村長の話に釘付けだ


村長「わしは元々この村の者ではない、彼女を寝取られて失意の中、たまたま盗賊に襲われていた今のわしの妻を助けてから、ここに住むようになったんじゃ」


ミク「そんなことがあったんですね」


唖然としてそれしか言えなかった、細かく言ってくれなかったが、クロスを裏切った時に最も怒り狂っていた理由がよくわかった、同じことを経験したからこそ、そう言う態度になったんだろう。


村長「だからこそ、お主達がああなってしまった事には本当に悲しかった、わしにとってお前達は孫に等しい、その孫達がわしと同じ悲しみを背負う姿は見たくなかった」


メミル「村長」


涙が一滴零れたそれはクロスとミク、セシルも同じだった


村長「それでも、お前達はやり直せた、わしに出来なかったことをお主達は出来た、その絆大切にするじゃぞ?」


セシル「はい!絶対に無くしません!」


そう言うと村長は、ふっと笑いそして言った


村長「おかえり、我が可愛い孫達」


クロス.ミク.メミル.セシル

「ただいま、みんな!」


そうやって本当に帰って来れたこと実感して村に入ろうとした.......が


フローズ「ちょっと待って!?」


クロス「?」


フローズ「?じゃないよ! ?じゃ!私は!私の紹介は!?」


クロス母「?......紹介?」


クロス父「クロス、誰なんだいその子は」


みんな唖然としている、それもそうだまだみんなフローズの事を知らないのだから


フローズ「初めまして、私はベンデイ王国王女、フローズと申します」


ミク父「え?」


フローズ「そして、クロスの婚約者でもあります」


ミク母「え?え?え?」


村長「クロスの.....婚約者?」


フローズ「はい♪」


クロス父母.ミク父母.村長

「ええええええええええええええええええええええええええええええええ!!!!!!!!!!!!!!!????????????」


クロス「そういえば紹介してなかったな」


ミク「あたし達の事で精一杯だったし」


メミル「うんうん」


セシル「しょうがないですね、これは」


フローズ「なくないからー!」


クロスの両親達が驚いている中、とても冷静でいるクロス達であった。


————————————————————

続く

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