第36話 繰り返さない為に

屋敷をくまなく探し、何も情報を手に入れることが出来ないまま一同は王城に戻っていた。


王城~国王執務室~


国王「一難去ってまた一難、はぁー」


宰相「仕方ない事です、諦めてください。」


国王の疲れも大分溜まってきている、それもそうだ、勇者マンルのフローズに

対する求婚やその他の悪行から始まり、英雄の職業、それへの各国の対応、

フローズ、ミク、メミル、セシルとクロスの婚約発表、そしてこれだ、

こんなにも連続で来るとなると、誰だって嫌になる、それでもやり続けているのはやはり国王としての器なのだろう。


クロス「マンルの状態を考えると一人で逃げる事はまず不可能」


フローズ「そうなると、誰かが裏で手を引いている可能性がある」


ミク「でも、一体誰が何のためにこんな事を?」


メミル「まだ魅了が解けていない人がいたとか?」


セシル「それだと聖教会の時に、いや私達があいつに復讐した時に気付くはず」


王妃「そうなると、考えられるのは他国の連中か聖教会の中でも絶対的信者達、これぐらいかしら?」


充分ありえる事だ、まだ広まっているかはわからないが、クロスとフローズ、

そしてミク、メミル、セシルは婚約関係になる、

そうなれば王族相手に婚約を無くし他国の者と婚約しろ、

なんてことは簡単に言えない、

もしそれで戦争にでもなれば他国は必ず負ける、

ならどうすればいいか、

そう考えると勇者の存在に気づくはず、勇者の事を詳しく調べれば、今ほど利用しやすい者はいないはず、

だからこそ勇者を拐った可能性もある。


聖教会も一枚岩ではない、神父のように信仰はしているものの人間として心を持っている者達と完全なる女神、勇者を

崇拝する者達と別れている、

その後者に当てはまる者たちは、自分の崇拝する勇者を幽閉した我らを恨んでいるはず、たとえそれが間違った事だとしても。


クロス「.....厄介な事態になってきたな」


フローズ「一つの事態を治めるとまた次の事態が起こる....まるでイタチごっこね」


国王「何か策は出来ないのか?」


宰相「私に聞かれましても、そもそも婚約の件だってクロス達に頼ってしまったのですから、こうすぐには。」


王妃「うーん、どうにかして他国との歪み合いを無くさないと」


ミク「レプリカ...でしたっけ」


メミル「そいつが、何をするかわからない状態でこれだと、本当にまずいわね」


セシル「こう言う時こそみんなで力を合わせるべきなのに」


クロス「それが出来ないのが....俺たち人間だろ」


結局勇者マンルの行方は騎士団に任せ、クロス達はフローズ(クロス)の部屋に集まり一息入れていた。


クロス「ふー」ボフッ


フローズ「みんなお疲れ様、はいココア」


クロス「ありがとう」ごく


ミク「ありがとうございます!」


メミル「ありがとうございます、....ふー」ごくごく


セシル「ありがとうございます」ごく


フローズ「............さて、これからの事なんだけど」お菓子用意


クロス「...ああ、そうだな」


クロス「ミク、義姉さん、セシル、俺があげた指輪、まだ持ってるか?」


ミク「ええ、持ってるわ」


メミル「大事な思い出だからね」


セシル「魅了されてもこれだけはずっと持ってた。」


そう言って3人はポケットの中から指輪を差し出す、それは昔クロスがミク達に渡した指輪だった。


フローズ「まだ綺麗ね」お菓子の山


ミク「当たり前です!」


メミル「これは私達にとってとても大切な物ですから!」


セシル「なくすわけないですよ!」


これは運が良かった、魅了されていても心の奥底ではまだそういう感情はあったという事だ


クロスはそれを確認した後


クロス「すまないけど、それを一旦貸してくれないか?」


ミク「?....別にいいけど」


クロス「ありがとう」


そう言ってミク達は差し出す


メミル「何に使うの?」



クロス「ああ、これからこの指輪に俺たちの魔力を込める、そうすればいざという時に役に立つからな」


セシル「たとえば?」


フローズ「....勇者マンルの魅了とかね」


そう言って二人は体に赤いオーラを出して指輪に魔力を込める、この対策は今勇者マンルの行方が不明な中、もし万が一の事があってはならないためのものである。


そして3人もそこまで自分たちのためにしてくれたことに感謝して、必ずその分の活躍をしようと心に誓った。


————————————————————


クロス「ふー、こんなもんかな?」


フローズ「そうね、これだけ精密にやればあの屑の魅了は効かないかな?」


そう言って2人は3人に返した


ミク「ありがとう、クロス、フローズ様」


メミル「今度こそ間違わないようにします」


セシル「あの屑が来ても、これで不安はなくなったね」


クロス「ああ、これでこの件は終わった..........さて......フローズ?」


フローズ「何?クロス?」


クロス「お前.......」


そう言ってほっぺを思いっきり両手でつねる


クロス「さっきからおやつ食い過ぎだ!最近太ったんじゃなかったのかよ!」


フローズ「ごへんなはい!ひっはらないへくらはい!!」涙目


ミク「そう言えばさっき大量のお菓子の山があったような..........」


メミル「.......よく見たらもうないよ、これ」


セシル「....でも1番驚くのはそれを躊躇なく言ってほっぺをつねってる義兄さんなんだよね」


ミク.メミル

「うん」


クロス「お前....今度こそお義母様直伝のやつ、やってもらうぞ」


フローズ「あれだけはいやーーー!!」涙目


フローズ「ごめんなさい!もうしないから、もうそんなに馬鹿みたいに食べないからー!!」


食べた後適度に運動でもすれば良かったものの


クロス「.......もう遅い」


そう言ったと同時にガチャと部屋の中に王妃が入ってきた


王妃「さあ、フローズ?しっかりと.......運動しましょうね?」ニコォー


フローズ「いーやー!!」号泣


逃げようとするフローズを羽交い締めするクロス


フローズ「........クロス~」子犬のような眼差し


クロス「........にこ」


フローズ「........!!」パァー


クロス「はい、義母様、煮るなり焼くなりしてください」


フローズ「この裏切り者ー!!」ジタバタ


王妃「はいはい、では皆さんまた」


フローズ「いやー!ミク!メミル!セシル!助けてー!」


ミク「..........そうしたいんだけど」


メミル「流石に王妃様には逆らえないし」


セシル「.....自業自得」


クロス「というわけだ、そのはみ出している腹を元に戻してこい」


ずりずりと引きずられていくフローズ


おにーあくまーひとでなしぃー!!


と叫びながら部屋の外へと連れ出された


そして再び沈黙が訪れる


............


ミク「ところでさクロス?」


クロス「うん?どうしたんだ、ミク」


ミク「いや....フローズ様があんなに嫌がっている運動ってなんだろうなぁと思って」


クロス「.....................」


メミル「....クロス?」


クロス「.....................」


セシル「.....義兄さん?」


クロス「..........勉強」


ミク「へ?」


クロス「今までの国の事、世界情勢あらゆる分野の勉強を強制的に12時間ひたらすらやられる」


ミク「........嘘でしょ?」


クロス「なんなら受けてみる?」


ミク「いや、遠慮しときます。」


こうしてクロス達の濃い1日が終わる


フローズ「まだ私は終わってないよ!?」


王妃「つべこべ言わないでね.....フローズ?」


フローズ「あばばばばばばば」


————————————————————

続く

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