第8話 アルテミス、王城に行くことになる

「娘を侮辱する声も聞こえましたが、どういうことですかね?」


「指南役程度のお前が雇い主である王子の僕に意見するのか!!」


「私の雇い主は、国であり国王陛下です。国王陛下の子ではありますが王子殿下は、私の雇い主ではありません」


「同じ事だろうが!!僕は父上の跡を継いで国王になるのだから」


「王子は第一王子ではありますが、第一王妃殿下の子ではありませんので、国王にはなれません。

 それに異母弟の第二王子だったマルス殿下が先月、立太子礼を行い王太子になられたではないですか」


「だからそれを覆し、僕が王太子になるためにもフェンリルを捕まえるんだ。僕には今、フェンリルが必要なんだ!!」


 同じじゃないでしょう。王子はあくまで王子。

 雇い主の国王陛下の子であっても雇い主は国王陛下である。

 王子が雇い主になることはない。


「王太子のマルス殿下がおりますので、フェンリルを捕まえたとしてもジャミル王子殿下がマルス殿下に代わり王太子になることは絶対にあり得ません。

 国王陛下も困られていましたからこれ以上、問題を起こすと第一王子という立場も失うことになりますよ」


 この王子、王族から除名される可能性があるほど色々と問題を起こしているのか。


「何言っているんだ。王子として生まれたものが王子でなくなるわけないだろうが、王子から立場が変わるとしたら国王になる以外にはないだろう。

 そんなことも知らないなのか。大人のくせに」


 何言っているの?除名されたら王子の立場失いますよ。


 それに王子が立場が変わるとしたら国王になること以外ない……何々、この王子の頭の中では、王子として生まれた者は、みんな国王になれるものなの?


 公爵位を与えられたり、他の貴族家に婿に出されたりとかあるよ。

 もし王位につけるとしたら他国の王女しかいない王家に婿養子として嫁ぎ、王位を継ぐくらいだろう。


「お前たちもなぜ一緒に来ているんだ。近衛騎士なんだから王子を止めなければならない立場だろうが!」


「「「……」」」


 騎士の方たちお父様に言われて、黙って何も言いませんが、何か言おうよ。

 反論があるなら言えばいいし、正論だから何も言えないのであれば、自分達の役目を理解しているってことなんだから、ここに一緒に来るのではなく、ちゃんと止めようよ。


「私もこれから行きますから、一緒に王城に帰りますよ。アルテミスも一緒にね」


「?……何で私も一緒なのですか?」


「国王陛下がアルテミスに会ってみたいと言っているから仕方なくだな」


「そうなんだ……」


 指南役の娘に会いたいって……お父様もエルフの国の元国王だし、国王陛下と親しかったりするのかな?


「仕方ないって不敬だぞ。父上から覚えがいいからと指南役ごときが国王陛下の言われたことに対してその言いぐさわ」


 うん。ただの指南役ならそうだろうね。

 お父様も大っぴらに自分のことを誰彼構わず話したりしてないだろうから王子は、お父様がエルフの国の元国王だって知らないんだな。


 そして一旦家に戻り、お母様も一緒に王子たちと合流した。


「お父様。イリスも一緒に行きたいと言っているのですが……連れていっても大丈夫ですか」


「何を言っているんだ?カエサル。お前の娘は頭がおかしいのか。フェンリルが神獣とはいえ、意志疎通ができるわけないだろうが!!」


「アルテミスは、頭はおかしくないですよ。誰とは言いませんが、誰かさんよりかなり賢いです。

 アルテミスは、フェンリルのイリスと契約しているので、意志疎通ができるのですよ」


「くぐぐぅ……」


 お父様……娘をバカにされてお怒りなのはわかりますけど、誰かさんって言いながら王子をじっと見ながら言ったら誰のことを言いたいのかまるわかりですよ。


 王子も自分のことを言われていると理解して歯を食い縛ってお父様を睨みつけてますよ。


 まあ、睨まれているお父様は全く気にしてませんけどね。


 あと私は、散歩中に森の最深部でイリスと出会い、懐いてくれたので、名付けすることが契約と知らずにイリスと名を付けちゃって、契約しちゃったんだけどね。


「大丈夫じゃないかな。国王陛下も神獣に会えて喜ぶんじゃないかな」


 お父様から軽い感じで許可が出たので、王子から私を護る様にしていたイリスは、一緒に行けるとわかり尻尾をブンブン振って喜んでいるみたいだ。


 そして私たちは、王子たちが乗ってきた馬車も一緒にお父様の転移魔法で王城に転移したのであった。

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