え?普通ですけど
高菜哀鴨
プロローグ
第1話
こんな普通でも『異世界召喚』されるんだぁ…ってあれ?俺のスキル酷くね?
▼
夏と秋が変わる、未来を知るような空。すべての生命の死を司るような、大樹の枯れ葉。それはきっと予期していたのだろう…
何処から見ても普通すぎる少年がいた。普通すぎる少年の名前は
「田中君、クラスに荷物運ぶの手伝ってくれる?」
普段なら迷うかもしれない。だが、相手が相手だったため、すぐに引き受けることにした。
「ああ、別にいいよ」
孝はそう言って友達に別れを告げ、荷物を半分異常受け取った。
「今日荷物多くない?別に余裕で運べるけど」
「そうだね、でも本当にありがとう!」
そう言って孝と荷物を運ぶこの女子の名は、
「おい、モブ!」
その声と同時に拳が後ろから飛んできた。痛くはなかったが、孝は少し痛そうにする。そう、あいつがめんどくさいからだ。
「雑魚がよぉ、桜音ちゃんと話してんじゃねぇや」
殴った男は
「ご、ごめんなさい…どうか、腕を下ろして…」(まじでめんどいけど、歯向かうともっとめんどいし…)
心の声が漏れるのを我慢して、孝は弱そうに振る舞った。
「へっ、雑魚過ぎるだろwww」
義人は普段の鬱憤を晴らしているのか、笑顔で殴ってくる。
「義人ぉ~、そんくらいにしておきなよ」
義人はヘラヘラしながら殴るのをやめた。そして軽く義人を軽く止めてた女子、
「田中君、大丈夫?!
「このくらい大丈夫だよ…」
荷物を置いた桜音は、孝に駆け寄って怪我がないか確認する。そして孝の言葉と、体を見て怪我がなかったため、ふぅ、と息をはき安心した。そんな姿にムカついたのか、義人はまた孝に殴りかかった。だが、さすがに2度目まで食らってしまったら桜音に心配を掛けてしまうと思い、孝は義人のパンチを出来るだけギリギリで避けた。
「…チッ、モブが避けてんじゃねぇよ!!」
(いや、2度同じ技なら避けられるだろ…)
「おい、脳筋とモブ野郎…鞠江様に当たったらどうするんだ!!鞠江様大丈夫ですか?」
「えぇ、大丈夫よ。それにしても貧乏人は脳が小さいのかしら?普通の人間じゃあないでしょうに…」
「まぁ、面白いし良いんとちゃいます?」
そう言って3人がクラスに入ってきた。声を荒らげていたメガネは
「ま、まだ何か…ありますか…?」(とりあえず震えとくか)
「ケッ…やっぱりもう良いわ。てめぇごとき殴るだけ無駄だぜっ…」
「脳筋。そこまでやったらちゃんとボコそうぜwww他のモブも集まってさ」
そう土羅は周囲のクラスメイトを呼び寄せ、そして蹴ろうとし始めた。その時だった。本でよく見る『テンプレ』とやらを目にしたのは。
▽
「んっ…痛っ!」
痛みと共に孝は目を覚ました。始めは寝惚けていたが、いる場所や周りの空気…それが何を意味するか理解するのに時間は掛からなかった。それが分かった頃にはクラスメイト達が段々と起きていた。
「おい、此処何処だよ!」
「私達教室にいたじゃん!何、ドッキリ?」
「鞠江様、大丈夫ですか?」
「えぇ、大丈夫よ。それにしてもこの建物、とても古いわね」
「俺ら、クラスで誘拐されたんか…?」
こいつら静かにしろよ…。孝はそう思っていたが、周りは大体パニック状態だ。それでもパニックにならなかった桜音は孝に話掛けた。
「田中くん、みんなパニってるけど、田中くんは平気だね。それと私何か巻き込まれる気しかしないんだけど…」
孝と桜音は元々、ラノベ好きだったことで仲良くなった。2人でよく考察もしている。それもあってだろう。孝も異世界物のテンプレでしかない気がした。案の定、兵を連れた王のような風格の初老の男が来た。
「私はサピエンティア王国14代目国王、ディミオルゴ・カオス・ユリアードである。そなた達はを異世界に転移させてもらった。それと後々魔王軍・魔物討伐をしてもらうl00ことになる」
その声に覇気と威圧のような何かがあり、耐えられず孝も含めクラスメイト達は、その場に座り込んでしまった。しかし何故だろう、孝は少し軽く感じていた。
(ん?何か少し軽く感じるぞ。アイツの影響か…?)
考える孝。その一方で脳筋が「なんなんだよ!」とか言ってるのをほぼ無視でディミオルゴは話を続けた。
「実は、そちらの世界へ我が子を2人送っていた。来い、イアン、スキア」
王がそう言って呼んで出てきたのはなんと、自分達の高校の新生徒会長・議長の澤野さわの陽仁ようじ・陰姫かげひめ兄妹だった。そしてそれにいち早く反応したのは桜音だった。
「陽仁君と陰姫ちゃん…?!」
桜音にとって陽仁はオーケストラ部と軽音楽部の新部長でジャンルは違うが音楽を共に語った仲間、陰姫は入学当初からの唯一無二の大親友で色んなことを共にしてきた。そんな2人が異世界人で自分を転移させた人達だなんて堪えられなかった。
「どうも皆さんこんにちは、澤野 陽仁改め、イアン・カオス・ユリアードです。そして…」
「澤野 陰姫改め、スキア・カオス・ユリアードと申します。皆様には今から能力調査を行います。出席番号に並んでください」
そして能力調査が行われた。それと同時に浮かれる者が出てきた。
「おい、俺強いんじゃねwww」
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〔名前〕 火乃酉 義人
〔
〔
〔
〔
〔称号〕 世界渡りし者 勇者の一角 火行の一族
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「すごくねwwww」
義人こと、脳筋が「俺スゲーwwww」している中、調査していた神官が騒ぎだした。
「な、なんと…!王よ『巫女持ち』が出ました‼それも〔天〕です‼」
一気に目線がそちらにいった。『巫女持ち』とよばれていたのは桜音だった。
「桜音殿、能力情報ステータスを開示して戴いても?」
「は、はい!す、〈情報開示ステータスオープン〉」
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〔名前〕 天宮 桜音
〔職業〕 天の巫女
〔素質〕 34/299 ATK45 DFC79 SPD68 MP650
〔能力〕 天魔法(風・雷):Lv.5 五行魔法(火水木金土):Lv.3 治癒魔法:Lv2 扇術:Lv2 棒術:Lv3 味方強化:Lv1 看破:Lv5
〔技能〕 天災[暴風・落雷・砂漠・氷結]
〔称号〕 世界渡りし者 勇者の一角 巫女持ち[天] 聖女神 リーダーの器
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「ほう、『巫女持ち』でそれも、[天]か。そして他の称号の『聖女神』と『リーダーの器』…おい、『聖女神』の効果能力はなんだ…?」
「えーっと…あ!桜音殿、この{詳細}ってとこ読んで」
「はい!えーと、{『聖女神』は他のものの為に懸命に動き回り、皆に慕われし者の頂点で人でありながら神の名を許されし者。その者は仲間に慈愛の加護を与え、悪に染められしものを善へと浄化することもあると言う}だそうです!」
それを聞いたが孝はすごいとは思わなかった。いや、思えなかった。そして時が来た。自分の番だからだろうか、汗が出てくる、手が震える、そして調査水晶に手をかざした。
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〔名前〕田中 孝
〔職業〕普通
〔素質〕普通 ATK普通 DFC普通 SPD普通 MP普通
〔能力〕肉体強化:Lv1 格闘:Lv1
〔技能〕普通化
{詳細}思いし理がどんなものも普通と化す。それは敵味方関係なく、与えられし者はその‘概念’からは逃げられない。
〔称号〕 世界を渡りし者 ‘ふtUウ’の人間 勇者…?
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その瞬間、自分がどんな顔になっているか孝はすぐ分かった。それは…“絶望”だ。
(普通…?意味がわからない。明らかに雑魚能力値だし、なんだよ『普通化』って職業も普通になってるし)
そして宰相らしき男が孝を伏せさせ、ロープで腕を縛った後、国王に進言した。
「な、何てことだ…国王陛下、コレはもう処理しても宜しいですか?」
「ああ、構わん。こんなゴミ、軍の邪魔になるからの。国の最奥の森にでも捨てろ。だが、最後に話だけでもさせるかw」
そうして孝はロープで縛られてしまった。だが、最後に挨拶だけさせるとか、皮肉だと孝は思った。
(本人がいる前で堂々と処分宣言しているよこの人……でも、そりゃそうだろうなぁ。だって軍事兵器的なので呼んだ人間に、明らかな不良品がいれば、それは捨てるが普通だ。それでも何か、心の中にある生存本能が、『まだ生きたい』と言っている。本当にあの夢を見てから、なぜか最悪の連続だ。あのジジイ達、夢であったら一発殴ってやる…)
そう今後を考えていた孝に陽キャ(以下略)がやって来て最低な言葉を吐いた。
「やっぱり雑魚は雑魚だなあwwwDTで人生オワタするのかw未使用の相棒ちゃんかわいそうでちゅね~wwてか、お前のあの能力値いかれてんなあwwwでもきっと処分じゃなく放置になるから。王宮にお前みたいな奴の死体なんか一時たりとも置かないと思うから、森の中で、ガ・ン・バ・レ♪あ、ちなみに桜音ちゃんのはじめては俺が貰うから~♪」
「義人、流石に言い過ぎだし、気持ち悪いよwwwでもこんなゴミ、はっきり言って価値無いよね?別にそんな損害無いだろうし…」
「ほんまやなwこいつは何も取り柄も無いし、ただのモブで居ても、居なくても変わらんやろ」
孝はそう言いに来た陽キャ共への怒りボルテージが久しぶりに突破しそうだった。それからしばらく経ち、孝に寄ってきてくれた奴らがいた。親友の佐々木と綾辺、そして桜音だった。まず佐々木と綾辺が孝に抱きついた。普通ならキモいと思うだろうが、孝からは嬉しさと悲しさの混ざった涙が出てきた。死ぬかもしれない恐怖と自分を助けられないことを悔やんでくれる人がいることを同時に理解した。そして佐々木が言い出した。
「孝、ほんとにすまん!…俺たちが無力だからこんなことになって、孝を追放させてしまうなんて…でも、絶対俺と綾辺でお前を探し出す!生きていても、そうでなくても、一緒に絶対帰るぞ!帰って3人で同じの食って、ゲームして、一緒に笑…笑っ…ウウ笑って…」
佐々木はスポーツマン系で一緒にスポーツをしたりしても佐々木が大体勝つ。スポーツをしないで家で過ごす時もあり、ドラマを見る度に普段から泣くが、ここまで泣くのは孝も綾辺もはじめて見た。そして孝はそんな佐々木の背中を摩って明るく言った。
「佐々木…俺を探すのに無理は絶対するなよ…」
孝を佐々木が離すと、次は綾辺だ。と思ったその時、孝は気付いた。少し血が滲んでて擦れてるところのある肌。服にできたまだ新しい中くらいの解れ。咄嗟に孝は綾辺に顔を寄せて言った。
「綾辺、誰と戦った…?」
「よ、陽キャ脳筋と…だ、だってあいつら孝のこと『雑魚モブ一人減ってラッキー♪ついでに変態の汚名も着させるかww?』とか言ってて許せなかったんだ…って孝…?」
孝は途中から近寄れる所までいって、綾辺の耳元で泣いていた。孝の中は嬉しさと悔しさでいっぱいになった。綾辺はどちらかというと、インドア派だ。運動はするが、中で何かする方が好きなのだ。だから、脳筋に比べると筋肉もないし、戦ったら危ないレベルだ。そんな綾辺が自分のために脳筋と戦ってくれたこと、脳筋の様子からして負けてしまって、脳筋が元気なことが悔しいということだ。そして孝は綾辺に、
「次、叩きのめせるぐらい頑張ってくれ、きっと行けるから。そして、勇気を出してくれてありがとう」
そう言って、孝は綾辺から離れた。最後は桜音だった。
(桜音には元気に元の世界へ帰って欲しい。だからこそ、ここでサヨナラしよう)
そう思う孝になぜか桜音は何も言わず近づいてきた。ガチ恋距離まできたと思ったら、キスをしていた。何が起きたか一瞬解らなかった、けど、気付いたら唇が合わさっていた。そして気付けば、桜音の職業は巫女から魔導師・治癒師になっていた。
「お、桜音殿⁉何をしているんですか!…って、たた、大変です陛下!この者の職から『巫女』が、『巫女』が…!」
「どういうことだ聖女神!」
王達が騒いでいるが、孝には消した理由が解らなかった。仲は良かったが、それだけで莫大なデメリットを背負うとは思わない。だがその答えは、すぐに知ることになった。
「田中君。いや、孝君。私は貴方が好きです。これからも貴方と過ごしていきたい。だから、貴方一人じゃなく、私も貴方と行く。きっと今ので私は、国家反逆罪か何かになったと思うから」
「それじゃあ駄目だよ!天宮さんまで来てしまったら…」
「いいえ、私は絶対についていく。それが私の意思だから」
桜音のことを守りたかった孝。孝と共に過ごしていきたい桜音。二人は互いにに生きて欲しいと思っていた二人だからこそ、したいことは違った。
「孝君がなにを言おうと私はついていって、貴方を横で支える。そう決めたのだから私はやる」
孝は自分を好きな桜音に何を言っても諦めないのだと思い、何も言わなかった。だが、その邪魔をする奴らはやはり出てきた。
「桜音ちゃん‼そんなゴミのどこが良いんだ!そいつより俺選ぶ方が良くない?それと俺は、俺は君に一緒に過ごして欲しいんだ!駄目かい?」
義人が桜音を性的に見てるのを知ってる孝は、怒りと呆れに満ち溢れそうだ。孝が義人に手を出す前に桜音が動いた。桜音は義人に近づく。義人は自分側に来ると思ったのか、鼻の下を伸ばしていた。だがそれと裏腹に、桜音の答えは違った。
「私にとって、貴方と共にいて何かメリットはありますか?」
「えっ?そ、それは…」
「何も言えないですよね?私は何度頼んでも毎度優しく手伝ってくれ、趣味の話をしても、私に合わせてくれる。そんな孝君の人柄に惚れました。孝君といて、とても私は充実していましたし、今もそれは変わりません。それに比べ貴方は、強欲で傲慢、そのうえ怠惰ですか。どんな面でも成長する努力をせず、ただ自分の欲とプライドだけを満たそうとする。私や他の顔の良い女子を見る貴方はまるで、性欲の化身…あ、それなら色欲もでしたね。あと3つで7つの罪が完成してしまいますね」
「う、うるせー‼顔が良いからって調子乗りやがって…王様!早くこの女ごと追放してくれ!」
ディミオルゴは二つ返事で「うむ」と答えた。孝はそうなるのをなんとなく予想はしていた。それはそうだろう。意味不明な能力情報の孝、希少レア職である巫女を捨てた桜音。そんなのは国にとって、最大な汚点の塊のようなものだ。そして少しして時が来た。
「じゃあな、ゴミ共ww」
悪意のある満面の笑みを見ながら、孝と桜音は王族によってある森まで転移させられた。明らかに開拓されていない森、所々から聞こえる聞いたことのない音、完全に森だ。そう孝がアホ面をしながら周りを見呆けていると王族達…イアンとスキアが話掛けてきた。
「二人とも大丈夫?!てか桜音‼本当にびっくりしたわよ‼まさかあんな手に出るとは…でも何故か少し思い浮かんでたけどさ」
「まったくだよ。桜音ちゃんならやりそうだけども」
「えぇ!二人ともあんまりだよ~‼異世界人だってこと、教えてくれなかったし…」
「「いや、桜音 (ちゃん) は少しドジったりしそうだからさ~…」」
以前と変わらず、桜音や陽z…イアン達が楽しそうに話していて、それを見ていた孝は心がポカポカしていた。だがそこから一気にイアンが話題を変えた
「あのアホジジイが孝君に追放させるとかバカだとは思わなかったよな~」
「「え?」」
「というか、俺の名前知ってたの?!?!?!」
「いや知ってるよ。これでも生徒会長だよ?ある程度は生徒を覚えたし、孝君は桜音ちゃんからずっと聞かされたしね。それに孝君は意外と先生や生徒、用務員さんにまで評判良いよ?」
いや、嬉しい。それ以外の何がある?中位カーストが一番覚えづらいよ?てか、話したことのない月みたいな存在よ?え、ヤバい。顔崩れそうだわ。孝はそんな感情でいっぱいになっていた、ついでに桜音は顔真っ赤。だが、忘れてはいけないことを聞く。
「俺って糞能力だよね?だってなんだよ、『普通化』って…」
「「いや、それ!!!」」
「『普通化ソレ』が何?」
「それがね、僕たちにも『看破』あるんだけど[Lv.10]なんだよ。その域なら読みやすい詳細までいくんだけど、『普通化』は、{素質に合った主の望む力を、主の普通とする}って言う奴なんだ…」
それを聞いた孝は、「嘘だろ」と思ったが、唐突に耳鳴りがし、景色が暗転した。…そして目覚めると元の世界あっちと異世界そっちの間に来た空間にいた。そして後ろから、すぐにでも殴ってやりたいと思っていた奴らが現れた。それに気付いた孝は形相を変え、その老人の見た目をした三つ人影に詰め寄るのであった。
「おい、覚悟はあるんだろうな…?ゼウス、オーディン、イザナギ」
「「「は、は~い…」」」
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