第28話 首都観光-ワコクの商人コウ-

気の毒な武器屋を後にし、未だにZに近い区画を見て歩いていく。

すると、気になる服を来た店員を見かける。

 

 「あれは着物だよな。」

 「そうですね、頭にかぶってるのは藁の笠みたいですね。」


ここだけ江戸時代になったのか思うような恰好の店員がそこにいた。

が、その人物は肌が少し赤かった。

とにかく、声をかけてみる。


 「すいません。」

 「ん?ああ、なんだい。」

 「それって着物ですよね?」

 「お、着物を知っているのか。って、黒髪じゃないか!もしかして同郷か?」

 「い、いえ、俺はグランバニアから来たので同郷ではないと思いますが。」

 「・・・そうか、でも、着物を知っているってことは子孫かもしれないな。」


まあ、否定してても話が進まないし、この辺りで本題に入ろう。

後ろに並んだ、バスケットボール大のツボの中身が気になる。


 「ここでは何を売っているんですか?」

 「ああ、これは調味料だな。」

 「調味料!見せてもらってもいいですか?」

 「ああ、2種類あってな、一つは醤油っていう液体、もう一つは味噌っていうここでいうとペーストだな。」


ツボを開けてみると、嗅いだことのある懐かしいにおいと見たとこがある見た目の醤油と味噌が見えた。


 「ああ!これ探していたんですよ!もしかして、米も持っていますか!?」

 「お、おう米か。個人的に持ってきたものならあるが?」

 「少し分けてもらってもいいですか!?」

 「随分喰いつきがいいな、ボウズ。まあ、何か買ってくれるなr。」

 「全部買います!」


俺はアイテムリストから金の入った袋を取り出し、目のまえに差し出す。


 「全部って、さすがに全部は困るんだが、とりあえず、3個ずつでいいか?」

 「はい!買えるのであれば、何個でも構いません!」

 「あ、ああ、じゃあ全部で金貨2枚でどうだ。」

 「買った!」


即決した醤油と味噌、後おまけでもらった米1kgをアイテムリストに入れていく。


 「あ、アイテムBOX持ちか、うらやましいねえ。」

 「あ。」


しまった‼喜びすぎて、カモフラージュするの忘れた!


 「・・・内緒にしてもらえませんかね?」

 「常連さんになりそうなのに、そんなマネはしないさ。また、買ってくれるだけでいいさ。」

 「あ、ありがとうございます。そういえば、醤油とかってどこで作っているんですか?」

 「ああ、俺達の故郷であるワコクさ。」

 「ワコクです。どこにあるんですか?」

 「ここから東に行って、海に出て、さらに東に行った島国なんだよ。」


ほお、こっちでも日本っぽい配置しているんだな。


 「随分、遠そうですね。」

 「ああ、まあな。でも俺たち鬼人族はな、体力が多いからそんなにつらくはないぞ。」

 「鬼人族?」

 「鬼人族っていうのはワコクで一番人数のいる種族でな、特徴としては肌が赤かったり、青かったりしてな、特にこの角が鬼人族っていう証になる。」

 

店員が笠をはずすと、おでこに白い角が飛び出ていた。


 「痛いとかあるんですか?」

 「思いっ切り鈍器で殴られるとか切り落とされない限りは痛みはないさ。まあ、角に一撃入れられる時点で体が無事じゃなさそうだがな。」


言われてみると、角を狙うよりは他に部分を狙うよな。

下手に近付いて、角にグサっとされる未来が思い浮かぶ。


 「一度、ワコクに行ってみたいですね。」

 「お、そっちにも興味があるのか。じゃあ、俺からワコクに連絡してやろうか?」

 「いいですか?」

 「子孫かもしれない人間と会ったんだ、仲良くなれるなら、それがいいしな。で、名前聞いていいか?」

 「はい、俺はカサネっていいます。横にいるのが妹のミエ、後ろにいるのがリムです。」

 「初めまして、これからよろしくお願いします。」

 「お、礼儀がしっかりしてるな、よろしく。俺はコウだ。」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る