第26話 ブラックス商会の勧誘

皆でヤギ乳をシェイクしている時に、玄関からノック音が聞こえる。

その音に反応してフェルが玄関をにらんでいる。

何が来たっていうんだ?

その行動で予想ができたんだろうか、瓶を置いたペディさんがめんどくさそうに玄関に向かう。


 「はいはーい、今出ますよ。」


 ガチャッ!


ドアの前にいたのはキッチリとしてスーツを来た男。


 「こんにちは。」

 「ああ、またあんたか。今、客がいるんだ遠慮してくれないか?」

 「ああ、あなたの上司ですか、ならご挨拶をしませんと。」

 「そんなことしても意味ないぞ?」

 

玄関で押し問答している。


 「レードさん、あの方は御存知ですか?」

 「たしか、この首都で2番目に大きい商会である「ブラックス」の人だったと思います。」

 「そんな人が来るなんてペディさんは有名なんですか?」

 「さあ、私が声をかけた時はフェンととぼとぼ歩いていただけですので。」


そんな会話をしている内にペディさんの制止を振り切り、こちらに男が向かってきた。

その顔は胡散臭い笑顔。


 「どうも、レードさんでしたか。私はブラックス商会の人事担当を勤めておりますグレイと申します。」

 「ウチの商会に何か用でも?」

 「ええ、私どもはペディさんのことをかっておりまして、こうして誘い続けているのですが、首を縦に振ってくれないのですよ。」

 「それは私の商会の人間ですからね。」

 「それでどうでしょう。ウチからここよりも大きいカッパーゴートをテイムしている牧場を提供しましょう。その代わり・・・。」

 「ペディさんと差し出せと?」

 「ええ、いい条件だと思いますが。」

 「お断りいたします。どんな条件であろうと一度結んだものを手放すのは商人としてありえませんね。」

 「・・・そうですか、そちらの方々は関係者でしょうか?」

 「いいえ、友人ですね。」

 「そうですか、ではよろしければ、ウチの商会で働きませんか?いい待遇を約束しますよ。」

 「お断りします。俺達はきままな冒険者でいたいんでね。」

 

誰も靡かなかったことで、口の端がピクピクとしだすグレイ。が、一度、頭を伏せ、顔をあげるとまた笑顔に戻る。


 「そうですか、今回は残念でした。今後、心変わりがありましたら、ブラックス商会までお越しください。歓迎しますよ。では、失礼いたします。」


丁寧にお辞儀をして、グレイは去っていった。


 「ああ、やっと帰ったか。まったくいい迷惑だ。」

 「随分毛嫌いしてますけど、どうしてですか?」

 「ん?それはな、あいつら俺が断ったら、ここに嫌がらせに来てるんだよ。バレてないと思ってるのかね、そこらかしこにあいつらのにおいがしみつくほどになってて、俺もフェンも迷惑してるんだよね。」

 「私もあの商会にはいい評判を聞きませんからね。脅し、買収をやっているとも聞きます。」

 「まあ、あの待遇話を聞いているだけでやばそうなのは伝わってきますよ。」

 「今以上に警戒しないといけないかな。フェルの負担が増えるけど、頼むぞ。」

 「ウォン!」


さきほどまで噛みつきそうな顔で静かににらんでいたフェルも頼られてか、元気そうに返事をする。

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