第20話 ◆断罪の始まり

やはり、婚約破棄イベントが来てしまった。

私は震えそうになる声を抑え込み、カイル殿下に問う。


 「カイル殿下、私は多少の嫌がらせをしたことは認めましょう。ですが、大半の嫌がらせ、殺人未遂については否定いたします。」

 「何を言うか!貴様がやったことはここにいる生徒、学校関係者が見ている。言い逃れできるか!」

 「ですが、私のアリバイと目撃証言には矛盾があります。今一度、再調査をなさってください。」

 「そういって、ここを脱した後、行方をくらませようとする企みはわかっている。その後にミラを襲撃しゆとするのもな。」

 「何を言っているのですか、そんなこと考えてもおりません。」

 「では、これはなんだ?」


カイル殿下が出したのは一枚の契約書。

 

 「ここにはミラの襲撃計画を依頼した内容が書かれている。まさか、暗部にこんなことをさせるとはな。」

 「暗部?なんのことでしょうか?」

 「ミシェルさん、いいかげんにしてください。

この書類は教会に懺悔に来た暗部の方がおいていったものです。

神の名のもとに彼の罪はこれにて許されたのです。

ですので、ミシェルさんも罪を認めて懺悔なされば、悪いことにはなりません、さあ。」


教会関係者であるクロス様が前に出て、天に祈るように手を組んでいる。


 「やってもいないことになぜ、懺悔をしなければいけませんの?」

 「最後の神の慈悲を否定なさるのですか。」

 「身に覚えがありません。そもそも暗部は公爵家ではなく、王家に使える者です。私程度の権力で使えるような組織ではございません。」

 「あくまでシラをきると・・・。」

 「私ならびに公爵家は関与しておりません。」

 「残念ですね、最後のチャンスでしたのに。ミラごめん。あの人は救えない。」


さも残念そうに見えるが目元を手で抑え、上を見上げている口元には笑みが浮かんでいる。とんだ茶番だ。


 「ミシェルさん、罪を認めてください!」


カイル殿下に肩を抱かれていたミラさんが聖女のように手を組み、前に出てくる。


 「罪?それをいうなら、あなたたちが私を罪人扱いしているのが罪ではないんでしょうか?」

 「そんな、ヒドイ!」


私の反論に顔を手で覆っているが、その下の顔は邪悪そうな笑顔を浮かべているんだろう。


 「私の指紋などの決定的証拠もないのに、ミラさん達はそこまでして何がしたいのですか?これではこの国の未来は明るくありませんね。」

 「ええい、うるさいうるさい!これ以上、しゃべるようなら、シールに制圧させる。」

 「おう、いつでもいいぜ。」


カイル殿下の横にいるシールが腰の剣に手を添える。それと同じくして回りにいる警備兵も構えていく。

まるで話にならない。

このまま捕らえられ、処刑されるのを待つのは嫌だ。

かといって、いつの間にか私達を囲む輪がせまくなっている。

強硬突破は・・・。ニールはパーティのために帯剣はしていない。私は魔法が使えるが、このドレスでは派手な立ち合いは無理。

ニールが私をかばって前に出る。


 「お嬢様、私が前に出ますのでその隙にここを脱出して公爵家へ。」

 「あなたはどうするの?」

 「おそらく、すぐに殺されることはないでしょう。」

 「そんな!?」

 「おっと、抵抗するのであれば、拘束しますよ。彼の者を縛り付けよ『チェーンバインド』」


クロスの魔法を放たれ、ニールと私は光の鎖に拘束される。


 「くっ!」

 「その鎖は教会で使われる特別製の魔法です。あきらめなさい。」

 「それでも私は!」

 「もうやめてください、ニールさん!あなたがミシェルさんに縛られる理由はもうないはずです。」

 「何を言っている?」

 「もう、隠さなくてもいいんですよ、ナイル様!」

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