第49話 ※魔剣の行方
この世界の教会の役割とは
人が神への感謝を示す礼拝
罪人の罪を聞き、その罪に対しての許しを答える懴悔
聖水や神聖魔法による呪いの浄化
そして、浄化が効かないほどの呪いが込められた魔導具などを来るべき日に神の奇跡で払うための封印
教会内部にはその封印した魔導具を集めておく封印区画がある。
そこには新しく収められた魔剣があった。
その部屋に近付く足音が一つ、その後をズルズルと何かを引きずる音が一つ。
その足音の男は封印区画に近付くと血濡れの鍵を差し込み、ニヤニヤ顔でゆっくりと扉を開ける。
「へへ、お宝ちゃん♪何処ですか?」
この男は物を盗むためなら、平気で人を殺す指名手配犯リンガ。今もまた、彼の足元にはここの鍵を管理していた聖職者の変わり果てた姿があった。
良かったことといえるかわからないが、男が入ったときには移送がすんだ物品が多く、最近入ったものは切り裂き魔が使ったという魔剣が一振りだけであった。
「なんだ、この剣しかねえのかしけてやがるな!」
男は亡骸になった聖職者を蹴りあげる。死骸は剣の台座に当たり止まり、死骸から出た血が魔剣に飛ぶ。
その時、男の頭に声が響く
「足りない」
「な、なんだこの声、誰かいるなら出てこい!」
キョロキョロと周りを見渡しても何もいない。あるのは血を浴びた剣だけ。
「気のせいだったか、まあいい、剣だけしかないが、売ればそれなりの値段になるだろう。」
男は剣を手にする。
剣には血がついてはいたが、その刀身には惚れほれするほどの輝きがあった。
男はその輝きに目を輝かせ、魅入る。段々とこの剣は手放しはならないと思うようになり、そのうちに売り払う考えなど考えなくなっていた。
そして、心の内にある願望が生まれる。
「生贄が足りない。集めろ、生贄を。あの方を復活させるために!」
この声が響いた時、男の意識は剣に乗っ取られていた、生贄を探すための手駒として。
教会から放たれた獣はその場の血を剣にすべて吸いながら闇に紛れて消えていった。
教会が殺人と魔剣の紛失に気づいたのは翌日のこと。魔剣のあった台座のそばには干からびた死体。血痕は何もなかったことから、封印区画を開くまで誰も気づかなかった。
その同時期に町で行方不明が多発した事件が起こったが、関連性がなかったことにより、別件として、処理された。
魔剣の紛失は城へ、行方不明の調査は冒険者ギルドに依頼される・・・。
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