【連載版】追放されたフリーターは異世界を満喫する
テリヤキサンド
第一章 追放
第1話 魔法陣
『自由に生きて』
それが妹の最後の言葉だった。
妹は小さいころから体が弱く、病室での生活だった。
両親も妹の医療費のために働きづめで体を壊し、俺が高校生になるころには亡くなってしまった。
俺には妹の存在だけが希望だった。
医療費は両親の残した金でなんとかなっていて、俺は妹のためにバイトで稼ぎ、色々とプレゼントしていき、笑顔を見ることで生きがいを感じていた。
それもわずかな時間だった。
妹が死んでからというもの何をしていいかがわからなくなってしまったが、それでも通学しつつ、バイトを続けていた。
そんな、バイト中の休憩室でのこと
「カサネ先輩は高校卒業したらどうするんですか?」
バイトの女後輩「スミレ」に質問された。考えたことがなかったので、なんとも言えなかったが
「日本縦断旅行にでもいこうかな。いや、世界旅行か。」
「え、大学にはいかないんですか?」
「大学にいってもいいが、まずは自由に何かしてみたいんだ。」
本当のところは、自由に動けなかった妹の代わりに世界でも見にいこうかなと思っただけだった。
「ふーん、私も一緒にいきたいなあ。」
「そんなこと言っても一年学年が違うんだから無理だろ?」
「ふん、冗談ですよ、冗談」
後輩はそういうとそっぽを向いた。へそをまげてしまったようだ。
「お土産くらいは買ってやるから待っとけよ。」
「ご当地お土産でお願いしますね♪」
休憩も終わり、まばらな客入りのフロアに出て注文受けていく。
そんな時、スミレの担当テーブルから怒声が聞こえる。
何かあったのかと近付いていくと、どうやら、高校生3人がスマホで動画配信しているようだ。
「ですから、ここは撮影禁止なんですよ。」
「はあ!いいじゃねえか客も少ないんだし」
「そうよ、店の宣伝になるじゃない!」
「それか悪評でも流そうか?」
「・・・。」
あれはよくない雰囲気だな。急いで俺も向かい、声をかける。
「お客様、どうなさいました?」
「ん?ああ、こっちが善意で撮影してやってんのに文句言われたんだよ!」
「「そうよ!そうよ!」」
「お言葉ですが、こちらのマーク通り、撮影が禁止なんですよ、あまりにも悪質な場合、警察を呼ぶ可能性がありますので、おやめください」
「なんだと、てめえ!」
客の男子高校生は俺の胸元をつかむ。そんなにらんでもいきっているだけで怖くはない。だから、横でオロオロしなくていいよ、スミレさん。
こちらもにらみ返し一触即発の中、それは起こる。
俺達を中心に足元が光り輝く。その光は円型で内側には模様がびっしり、まるで魔法陣のようだった。
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