大事なお肉

シヨゥ

第1話

「なにが大事かなんて人それぞれよね」

 七輪を前にして友達がそんなことを言う。

「それが個性だと思う。優先順位なんてバラバラで、だから調和が取れたり乱れたり」

 そう言って網の上で焼き上がった肉をさらって行く。僕はハラミをいただく。

「俺の優先順位ではタンが上だった。お前の優先順位ではハラミが上だった。互いにぶつかり合うことのないこれは平和な焼肉だ」

「そうだね」

 今度は僕がタンを、友達がハラミを網の上からさらって行く。

「だけども平和なんていつまでも続くわけがない」

 網の上にはカルビが1枚残されていた。

「譲る気は?」

「ないね」

「ならば戦争だ」

 友達が力を溜めるように右手を握り込み後ろに引く。そして、

「最初はグー、ジャンケンポン!」

 掛け声で開戦したジャンケンと言う名の戦争。

「負けた。完敗だ」

 僕の勝ちである。

「大げさな。また焼けばいいだろう」

「今ある肉は今にしかないんだよぅ」

 そう言って友達は肉を網の上に置き出した。たしかに同じ肉なんてないのだ。これも

大事と思う優先度の違いか。なんて考え好きだろう。

「次は勝つ」

 まずばこの楽しい食事を楽しもう。それが僕にとって一番優先度が高いのだから。

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大事なお肉 シヨゥ @Shiyoxu

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