人は物語でできている。
冷田かるぼ
眠り
自室で勉強をしていると、気が付けば既に日をまたいでいたみたいだ。
深夜だからだろうか、視界がぼんやりと霞んで頭が働かなくなってきた。
そろそろ寝ようと思い、教科書とノートを鞄の中にしまう。
学生、しかも受験生なのだから勉強をするのは当たり前なのだが、ここまで長くするのは久しぶりだからか疲れてしまった。
私はベッドに倒れ込む。ベッドに全体重を預けると、ギギ、と不安になる音がした。
布団に潜り込みぬいぐるみを抱きしめる。
寝ようと目を閉じると、昼間に見たホラー漫画の解説動画が頭をよぎってしまった。
……だめだ。ちっとも寝られない。
別のことを考えよう、とするとさらに心が締め付けられる記憶が戻ってきた。
Twitterで出会った人。
1週間ほど前に、死ぬと宣言したツイートが残されていた。
それから、その人のアカウントに動きはない。
……気付けなかった。気付いたからと言って止めることはできなかった。それはまだ分かる。
でも、どうして、1週間も気が付かなかったんだろう。
もっと仲良くなりたかった。
その人の書いた小説が好きだった。
でも、1度も感想を伝えられていない。
戻ってきてくれないかな、と思いつつもそれはその人にとって苦しいことなのかもしれないと思うとどうしていいかわからなくなってしまう。
そんなことを考えていたら全く寝られなくなってしまった。
頭の中に恐怖の画像とその人のことがずっとぐるぐると絡みついて離れてくれない。
布団を頭まで被って考えてみる。
私に出来ることなんてあったのか?いや、なかった。
じゃあ後悔する意味なんてないんじゃないか?そんなの分かってる。
自問自答を繰り返し、なんだかんだ嫌なことばかり考えてしまったけれどその日は寝ることはできた。
それでもしばらくはその人のことが頭から離れなかった。
その人の小説を何度も読み返し、感想を書き出してみた。
いつかまた話せるように、その時は小説の感想を言うことができるように。
来世だっていい、あの世でだっていい。
特に仲が良かったわけでもないけれど、感想を伝えたいんだ。
忘れないように、眠りにつく前に思い出させて。
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