セカイの向こうにはきっと

とある彼岸花

第1話 神様に会えたら

この世界にはがいる。

神といってもただ信じられ存在が人によって違う不確定な物ではない。

本当に存在し、国が開催するイベントなんかで優勝すれば謁見することもできる。

とはいえ、私のような何の取り柄もないただの人間には会うことすらできないだろうけど…

もしも私が神聖エルフ族なら…

帝土ドワーフ族なら…

なぜ私は序列40位、最下位の人間として生まれてきたのだろう。

この時期になると毎年思う。


窓の外では序列1位神聖エルフ族族長 カミン・レーゼがこの国「アルス帝国」の主神である『空神』 モルスフ様の謁見の為国を挙げてのパレードを行っている。

確か謁見理由は先月行われた王国武道会の優勝景品を授与されるためだったはずだ。

彼が優勝するのはもう100年以上変わらないことなんだそう。それが本当なのかはエルフよりも格段に寿命の短い人間の私たちにはわからないが祖母が言うのだからそうなのだろう。


私だってモルスフ様に会いたいのに。会ってあの時の…

私の嫉妬心はカミンが毎年家の横の大通りでパレードをするたびに募ってしまう。


いっそのこと、このタイミングで王城へ乗り込んでみようか。

そんなバカのことを思い立ったのは、つい30分ほど前のことだった。

それなのに…


どうして私はモルスフ様の前で罪人として突き出されているのだろうか。

それは、さかのぼること5分前のことであった。





よっしゃああああああああああああ!行くぜ!会うぜ!モルスフ様!!

え?キャラ変わり過ぎ?いや、そんなことはない。人間皆願望の為なら人が変わるものだ。そうだろう?キミも…

──!?気が付くと周りには城の衛兵たちが私に武器を向けている。

「いつの間にこんなに囲まれていたの?」

思わず口からこぼれる。


『全員、最大警戒態勢の上、捕獲!』

前方から出てきた序列11位人狼族の男の声に合わせ衛兵たちが私を制圧する。

もちろん、何の武器も持っていない私にはこの人数相手に何も抵抗することは出来なかった。






罪人レイ・アノスを祭典の乱入、およびアルス帝国主神『空神』モルスフ様への不敬罪として…『死刑』とする。──その言葉が私の中で木霊した。


『待て!』


──!?私を含め周りの人がすべて一点へ振り向く。

玉座のモルスフ様だった。

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セカイの向こうにはきっと とある彼岸花 @toanea

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