【短編版】追放されたフリーターは異世界を満喫する
テリヤキサンド
【短編版】追放されたフリーターは異世界を満喫する
異世界アルグリード、魔法と呼ばれるものが発達した世界。
この世界には、人、エルフ、ドワーフ、獣人、魔族など数多くの種族がお互いに交流しながら暮らしていた。
が、近年、魔王と呼ばれる魔物の個体が観測され、魔物の凶暴性が増加。
それにより世界国家全体に被害が広がっていた。
それを打開するためにある国では異世界の戦士を召喚する儀式がおこなわれた…。
とある森にて男女が話し合っている。
「うーん、倒したはいいものの。これはどうしたもんか」
「ゴブリン討伐のはずが、はぐれオークがでてくるなんてね。オークは肉になるし残すのは勿体ないよね」
「こんなことなら大きめな袋か荷車でも借りてくるんだったなあ」
血だまりに倒れた豚のような魔物の前で悩む男女二人のパーティ。
その時、近くの街道から車輪の音が聞こえる。
「あっ、馬車が来てるみたいね。ダメもとで頼んでみようか?」
「そうだな、勿体ないしその場で買ってくれるかもしれないし。すみませーん!」
街道に出て、馬車に向けて声かけるとこちらにだんだんと近付いてくる。馬車を引くのは騎獣という運搬に特化したダッカルという鳥類の魔物で通常のダッカルとは違い強そうな気配を感じる。
御者は商人恰好の黒髪の青年とローブをまとった白髪の少女。
横までくると馬車を止め、気さくそうな口調で商人の青年が声をかけてきた。
「はい?どうしました?」
「すみません、突然ですみませんが、オークって乗っけてもらえますか?」
「ほお、オークですか、こんな街道沿いでオークとは珍しい。どんな感じですか。」
「あそこにあります。」
青年は馬車を止めて、オークの検分を始める。オークの周りを回り、じっくりと見てから査定を説明する。
「ふむ、細かい傷は多いですが、中の肉には問題がなさそうですね。ちょうど、街に行く予定なので乗っけていきましょう。で、この場で買取しますか、それとも運搬賃を払ってギルドまでいきますか?」
「元々、ゴブリン退治のクエストを受けていたのでギルドにもっていってもそこそこのポイントにしかならないので買取で。」
「わかりました。では、この状態だと銀貨5枚くらいですかね。」
「はい、それでお願いします。」
「では、オークで汚れないように荷台に布を引きますのでのせてもらえますか?」
「わかりました。任せてください。」
さすがは冒険者なのかオークを二人で持ち上げ、楽々と馬車にのせる。
「せっかくなので、このまま、街まで一緒に乗っていきますか?」
「え、いいんですか?」
「まあ、護衛ということでお願いしようかなと」
「そうですね、そういえば、商人に見えますが護衛は隣のかたが?」
「はい、私は旅商人をしているカサネ。隣の彼女はリム。ゴブリンくらいであれば追い払えるほどの魔法使いですよ。後は頼もしいダッカルのオウミです。」
「クルァ!」
褒められたと声を上げるダッカル。仲がよさそうだ。
「あ、俺は剣士のジェイド、で、彼女は弓士のシェーラ。にして魔法使いですか。魔力持ちとはうらやましい。」
「ええ、私は運がよかったです。」
冒険者二人を後ろの荷台にのせて、街道を行く。
「ジェイドさん、この辺りは初めてなのでオークは頻繁にでるものなんですか?」
「いいえ、森の奥深くならわかるんですがこの辺りで出たのはじめてですね。」
「なにか嫌な予感がしますね・・・。」
「なーに、オークくらいなら俺たちでなんとかなりますし、街も近いから応援もすぐ呼べるので問題ないですよ。」
その時、左前方の茂みがうごめいた。
「!何かいますね、警戒してください。」
「わかりました、一端馬車をとめます。」
馬車を止め、ジェイド達が馬車から飛び出し、茂みを警戒する。
「ブルゥ」
茂みから豚の鼻が現れ、続いてその体があらわになる。さきほど、死体でみたオークそのものであった。
「噂をすれば、なんとやら。これでまた稼がせてもらおうかな。」
「待って!まだ出てくるわ。」
「もしかして、群れか。これは分が悪いな。」
茂みの震えが終わったころには 3体のオークが目の前にそろっていた。
「3体・・・。なんとか商人さんたちが逃げる隙をつくれるかな。悪い、シェーラ。」
「何言ってるのよ。あんたと私の仲じゃない。最後まで付き合うわよ。」
「よし、覚悟もできた。いくぞ!」
ようやく、覚悟もでき、オークに攻撃しようと身構えたとき、ヒュンっと後ろから音がした。
「グオオオオオオ!?」
その音に先にはオークの右目に突き刺さった矢が刺さっていた。
「「え?」」
驚いて後ろを見ると弓を構えた商人がいた。
「二人とも一体に集中して攻撃してください。他のけん制はこちらでしますから。オウミもいけるかい?」
「クルァ!」
馬車につながれているハーネスを外した瞬間、オウミは駆け出し、目を射られ激昂して突っ込んでこようとしたオークの顔に蹴りを叩き込み、その痛みで後ろに倒れこむオーク。
「わ、わかりました。シェーラ、いくぞ!」
「え、ええ、わかったわ」
動揺しながらも矢を射られていない内の一体のオークに攻撃を仕掛けていく。
さすがに2対1の状況、剣と弓の攻撃で安定した闘いをするジェイド達。その横では
駆けながらも矢を放ち、その矢はオークの急所に当たっていき、その隙に突撃するオウミ。二人?の息の合った連携はオーク2体を圧倒し、3体を倒すことができた。
「商人さん、凄いじゃないですか!」
「私より弓の腕がいいとか嫉妬してしまいます。」
「まあ、護衛もついていないのはそのなりに自衛手段があるからなんですよ。それにこの子もいれば楽勝ですよ。」
「クルァ♪」
活躍したオウミを撫でるカサネ。オウミはその手に身をゆだね、気持ちよさそうにしている。
「まあ、護衛なのにさぼっている奴もいますがね。」
一人、馬車でのんびりとしている少女を見るカサネ。
「一人でもいいとおもったから手をださなかった。」
「ったく、めんどくさがりだな。とにかく、ここまでオークが出るのはおかしい。すぐにここかr」
ズズン!!
辺りの地面が揺れる。
「な、なんだ!?」
「地震!?」
「いや、これは・・・。」
その時、オーク達のでてきた茂み方向の木が倒れてくる。
その方向に目を向けるとさきほどのオークより2倍大きなオークが目血走らせていた。
「ハ、ハイオーク!?」
「そ、そんな!?」
「グオオオオオオオオオッ!」
ハイオークの咆哮により、体が硬直してしまい動けなく二人。その二人に駆けだすハイオーク。が、突如、横に飛ぶ。
「図体の割にいい動きをするな。」
先ほどのハイオークのいた位置のは矢が突き刺さっていた。その攻撃にイラつき、攻撃してきたカサネにターゲットを変える。
「に、逃げないと」
「そうよ、あの弓の腕でも当たらないなら打つ手がないわ!」
「まあ、弓なら無理ですね。しょうがない・・・。ジョブセット剣士」
そういうと虚空に指をかざす重。そのカサネに向けて、右手に持った大ナタを駆けながら、振りかざすハイオーク。
(や、やられる!?)
カサネの無残にやられる姿を思い浮かべた二人はその光景をみたくないとぎゅっと目つぶる
ガキン!
が、暗闇の中で聞こえたのは硬質な何かがぶつかる音。そして、目をかけると
「弓がダメなら剣ってね。」
いつのまにか、皮の鎧に身を包んだカサネが剣でハイオークの大ナタを受け止めていた。
「続いて、腕力強化!おらあ!」
カサネの腕につけたバンドが光ったと思うと気合とともに大ナタをはじき返し、返す刃で袈裟斬りにハイオークを放つ。
「ブモオ!?」
先ほどまで優勢だったのに、大ナタをはじかれたばかりか切りつけられたことに驚愕するハイオーク。
「ううん、思っていた以上の弾力のせいで切り込めないな。」
後ろに下りながら、恨みのこもったハイオークのキズは分厚い皮を切り裂いたくらいで肉まで達していなかった。
「ブモオオオオオオオオ!」
怒りの違う咆哮をあげるハイオーク。すると茂みの奥からオークが三体現れた。
「不利を悟ってお仲間を呼んだワケか。普段なら問題ないんだが」
チラッと後方に視線を移す。震えて動けない二人。人質にされたりしたら不利になる。その横にはオウミが控えてくれているから問題はなさそうだが、暇そうな少女に声をかける。
「おーい、そろそろ手伝ってくれよ。後でデザート作ってやるから」
「ホットケーキ・・・。2枚。」
「わかったよ。」
「問題ない、じゃあいくよ。パラライズ。」
リムはいつの間にか持っていた本から電撃を放つ。すると、こちらに向かっていたオークが硬直しはじめ、足をもつれさせ、倒れる。
「続いて、ドレインタッチ。」
またも本から黒い影のような手がでて、オークをつかむ。すると、オークがだんだんと萎れていき、ミイラのようになり息絶える。
「ああ、素材が」
「文句言わない。と、そっちは大丈夫?」
「特に問題ないよ。」
軽くオオナタでの連撃をいなしながら答えるカサネ。ハイオークは自身の攻撃が効かないばかりか、だんだんとキズが増えていき、半狂乱になりながら攻撃をする。
「ま、そろそろ、トドメといきますか。ジョブセット武道家からの脚力強化。」
また、虚空に指をかざすと、装備が篭手のみとなった軽装の格闘家の姿に変わり、足についていたバンドが光るとハイオークの目のまえから消える。
「ブ、ブモ!?」
いきなり消えたカサネにパニックになりつつ、キョロキョロと辺りを見渡すハイオーク。
すると背中に衝撃がくる。それは何かが背中を駆けあがるような。
そのことで上を見上げるハイオーク。
そこには空中を舞い、いつの間にか持った大剣を振り下ろそうとするカサネの姿が映る。
「これで終わりだ。」
ズシャア!
何もできないまま、頭から股を一刀両断され、二つの肉片に変わるハイオーク。
「討伐完了。」
カサネは持っていた大剣を消し、震えていた二人に振り返り、ニカッと笑った。
その後、倒したハイオーク達を馬車に詰め込み、再び街を目指す。
「あの、カサネさんは商人なんですよね?」
「うん、商人でもあり、冒険者でもある。ほい、これがギルドカード。」
カサネは懐から冒険者ギルドのギルドカードをだし、二人に見せる。そこに書かれていたのはBランク。
「え、Bランクって高ランクじゃないですか!なんで、高ランクの冒険者ではなく、商人で名乗ったんですか!?」
「そこはね、高ランクだとばれるとこの馬車移動に制限がかかるんだよ。俺達の目的は観光しつつの気楽な商業生活だし。」
「そういえば、口調もさっきは丁寧だったけど、今はずいぶん砕けてますね。」
「隠す必要がなくなったからね、まあ、また街についたら元に戻すよ。二人とも多めに報酬渡すから内緒にしてね。」
「いえいえ、助けてもらったんですから、むしろこちらが払うのが・・・。」
「いや、これだけの討伐品があるし、気にしなくていいよ。なんなら、ばれない程度に街の滞在中に特訓でもする?」
「え?いいんですか?」
「森の状態が不安定なら強いにこしたことないし、やるかい?」
「「ぜひ!」」
そして、街につき、翌日に商業ギルドで待ち合わせをすることを約束した後、冒険者ギルドにはジェイドとシェーラに報告に行ってもらい、俺達は宿へととまることにした。
宿の一室にて、ベットに身を投げ出すカサネ。その横に座りリムが問う。
「特訓の件よかったのか?目立つ行動はしないと言っていたのに。」
「本当は目立たない方がこの先いいんだろうが、知り合った人が亡くなるって思うとね。」
「それは前の世界ことか?」
「・・・。」
カサネは召喚された日本人。だが、職業が意味のわからない[フリーター]ということで追放された。
追放された時には不安があったが、実は魔法関連の職業以外のすべてに適正があった。そして、ともにいるリムの正体は魔導書[スキルホルダー]スキルを奪い自分のものにできる。
そして、カサネのスキル「アイテムリスト」はリムの持っているスキルに干渉することができ、好きにスキルを内包したスキル玉を作ることができた。
そのことで二人がこの世界では上位の存在となってしまった。追放をした国は連れ戻そうするだろうと予想をつけ、旅をしているワケだが、本当の理由は元の世界で妹が最後に願ったこと。
『自由に生きて』
その言葉があったからこそ、ここにいる。
「確かにそのこともある。これは俺の願いだ。」
「そうか、ならいい。」
リムは満足そうにうなづくと光を放ちながら、魔導書の姿に戻り、枕元に移動した。
相棒がそのまま、寝静まったのを確認しつつ、カサネはこれからのことを考える。
自由に生きる、妹の分まで・・・。まあ、その前にこの依頼をすませないと。
そう思い、懐から取り出す依頼書。協力者になってくれた貴族ナイルさんからの依頼。
難易度が高そうな依頼であるが、何か運命的なものを感じる。
その予感が実現する日は近い・・・・。
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