第4話 TOKYO大Streetにて

 東京ではやはり地元とは比べ物にならないほどの光が瞬いている。目がくらくら

して、思わずよろけてしまいそうになってしまう。

「どうだ、東京は」

「街灯の量がエグイです」

「ハハハハハハ。この中で、僕は写真撮ったりしてるんだよ。趣味が写真だからね」


班のリーダー、楠原禮次郎くすはられいじろうは話す。なんとなく、写真を

撮っていそうな雰囲気はなくはないが、上手い写真が撮れるのかは愚問である。

「それじゃあ、今日は私とってよ!!写真集でも出したらバカ売れするね!!」

郁乃田可愛子は不細工な顔のくせに意地を張った。

「いや、俺はそんなこと言うやつは撮らないよ」

「何でよ!みんなが『私撮ってもいいよ』っていうわけじゃないじゃない!せっかく

しかも自分から『撮っても良い』って言ってるんだから、感謝して撮りなさい!」

「いや、無理なもんは無理だ」

「はぁ?!いいじゃんいいじゃん!!!!頼むよぉれいじろ~!!」


「それなら、まず顔を整えろ。ひとまず、口紅をもう少し薄くしろよ」

「うっ」

そのビックマウスな口紅まみれの唇が今、結ばれた。

「本当だよ。MOPのみんなからも、『たくさん塗ればいいってもんじゃない』って

言われてるじゃないか」

「優理、痛いところをついてくれるわね」

可愛子は自分よりも格段にモテそうな叶野優理に対しては、ついに屈服したようだ。


「なあ、お前ら。そんなこと言ってなぁ。新人が戸惑ってんぞ?!」

一本杉さんが一行を厳しく注意した。

「そうだね。ごめんね、良平君」

「う~ん、西堀って子に聞いとくわ。口紅は多いほうが可愛いor少ないほうが

可愛い」

「少ないほうが可愛いね」

「何よ!!次から次へと――」


「おい、郁乃田。少しの間でも、お前は黙っとけ」

一本杉さんの抗弁の斧で可愛子はシュンとしてうつむいた。

「君も、今日から僕らの仲間なんだから。そんなに緊張せずにね。リラックス

リラックス」

「そうだ。今社長に叱られてる可愛子も悪い奴じゃないからな。まあ、仲良くして

やってくれ。できればついでに、あいつがどうやったら黙るかを研究してほしい」

「何で僕に丸投げするんですか。みんなで考えましょうよ」

そんなことを自分が言うとは。どうやら、僕の脳と体と心は可愛子が東京の駅の

アナウンスよりもうるさいということを理解し、この言葉を発したようだ。


「敬語はやめろ。あと、普通に俺らのことも呼び捨てかあだ名で言ってくれ、

良平。俺らも呼び捨てさせてもらうぜ。いいか?」

「イイっすよ」

「ちなみに、僕的に禮次郎は楠パイセンね」

「おい、そんなの今まで言ってないだろう」

「それ、イイね、優理。気に入ったよ。なあ、楠パイセン」

「お前ら、2人そろってな・・・・・」

「それ、いいじゃないの!!楠パイセン、私のこと今度先輩として撮ってね!!」

みんな、楠パイセンを気に入ったようだ。実際、自的にすごい良い響きだと思う。


ただ、可愛子が一度口を開いてしまったのは厄介だ。実際、その横の一本杉さんは

苦笑交じりのウインクを僕と優理、楠パイセンに向けて飛ばしてきた。

「あ、もうすぐ店だね!!よ~し、今日も行くのだ!!可愛子!!」

「「「出た~!!」」」

「お前、店の中では黙っとけよ。楠パイセンが困るだろう」

一本杉さんの厳しい指摘に、パイセンは顔をしかめた。


その後、僕らはレストランで会話していた。これからの具体的な方針はまた明日と

いうことになった。東京の雰囲気に、まだまだなじめないところが多いが、日本の

中心地なだけあって、僕がリクエストしたイタリア料理店は地元よりも格段においしかった。

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