85話 夕月と学祭デート4
夕月と早い昼食を取ったあと、校舎へと戻る途中のこと。
「あれ? 飯田君じゃん」
「
クラスの女子、上松が俺たちに気づく。
……やべ。
「それに、夕月ちゃんも。あれ? ふたりなんで手ぇつないでるの?」
俺と夕月は普通に手をつないで歩いてる途中だった。
はたからみれば、デートしているように見えるだろう。
どうする、クラスメイトに今の俺たちの関係を聞かれるのはめんどうだし……。
「なんで、て。ねえ、【兄さん】♡」
夕月は笑顔で俺の腕にぎゅーっと抱き着く。
それはまるで、人懐っこい妹が、兄にくっついてるような絵だ。
「兄さんと学祭デートだよ♡」
「あ、なるほどぉ。そういえば飯田君と夕月ちゃんって、義理の兄妹だったね」
「そうだよぉ、ね、兄さん♡」
呼び方も、接し方も、意図的に変えることで、さも義理の兄妹が仲睦まじく学祭を楽しんでいるよう演出していた。
夕月おまえ……たすかる。
「あ、ああ……」
「たしか詩子ちゃんにもお兄さんいたよね?」
え、そうなの?
上松は笑顔でうなずく。
「いるよー! ちょうかっこいいの!」
「へえ! そうなんだ! 写真ある?」
「あるあるー!」
兄妹トークに持ち込むことで、俺たちがデートしていた話題からそらしていた。
なんて言葉巧みなんだこの子……。
ひとしきり盛り上がったあと、上松が笑顔で手を振る。
「じゃあね夕月ちゃん。学祭楽しんで! 飯田君は、またあとでね」
「あとで?」
夕月が苦笑しながら「OBOG戦でしょ。詩子ちゃんもバスケ部じゃない」という。
そういえばそうだった……。
上松は手を振って俺達から離れる。
「ありがとな、夕月。フォロー」
「ううん、気にしないで♡ いこか」
俺たちは手をつないで歩きだす。
しかし……。
「おまえ、色々知ってるのな」
上松に兄ちゃんがいることとか、バスケ部とか。彼女自身はバスケ部でもなんでもないのに、よく知ってる。
「クラスメイトのことはだいたい知ってるよ。女の子だもん」
「女子だとそういうもん?」
「うん。そういうもんだよ」
そういえば夕月はクラスメイト達から好かれていた。
かつてみしろがいた愛されポジションに、今は夕月が完全に座っている。
男女問わず好かれて、みんなと仲良くしている。
しかもみんなのことをよく知ってる。俺と同じく、ほぼ毎日セクモンバトルしてるのに。
「おまえはすごいな」
「そうかな?」
「ああ。なんか改めて、おまえがスペック高い女子だって思い知らされたよ」
「ふふ♡ 今更? 亮太君は、もっとわたしのおにいちゃんであること、ほこってもいいんだよ?」
夕月はニコッと笑って俺に笑いかける。
日の光の下で浮かべる彼女と、夜ベッドのうえであやしくほほ笑む彼女。
二つの顔を持つ彼女に、俺はどうしようもなく惹かれていく。
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『女神な先生と同居ラブコメ~学校1の美人教師からめちゃくちゃ溺愛されてる件~』
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