70話 あいりちゃん来る



 文化差1日目、コスプレ喫茶はめちゃくちゃ繁盛していた。


 だが14時くらいになると客の入りが少なくなってきた。

 メシ食って一段落したからだろうな。


「おーい亮太。きたぞーい」


 俺の親父、飯田哲朗がふらっとやってきた。

 サンダルに白衣、そしてヨレヨレのシャツとズボン。


 親父は海外を飛び回る獣医師なのだ。


 だがそれを知らない人からすれば、ただの妖しいおっさんである。


「親父。来てくれたんだ」

「ったりめえだろぉ」


 なんだかんだで息子の文化祭に来てくれるなんてな。


「大事な義理の娘に会いに来たくてさ」

「でしょうね」


 夕月のことな。だろうと思ったよ。


「あと義理の娘に頼まれたからな、つれってってほしいって」


「へいへい。実の息子はどうでも良いってか?」


「おいおいなんだよヤキモチ焼いてるのか? ん~? かわいいやつだなぁ」


 うぜえ……。


 一方で俺と親父とのやり取りを見ていたのは、義理の妹2号あいりちゃんだ。


 ストレートの金髪に真っ白な肌に、愛くるしい瞳が特徴的である。


「きちゃった♡」

「おう。待ってたよ。案内するぜ」


 あいりちゃんと親父を窓際の席に座らせる。

「四葉ちゃんと夕月ゆづきちゃんは?」

「二人とも調理室」


「んだよー、むさい男といらねーからチェンジで」


「あいりちゃん置いて帰れよおまえ」


 冗談冗談、と親父が笑う。


「あいり、悩みます……どれ頼もうか……」


 メニューとにらめっこするあいりちゃん。


 とそこへ……。


「飯田君」


 クラスメイト、特に女子達が近づいてきた。

「その可愛い子だれ? 飯田君の親戚?」


 可愛い……そうか。他の奴らから見てもあいりは可愛い。


 だから話しかけたくってしょうがなかったのだろう。


 しかし親戚と思われてるのなら好都合だ。

 ぼろを出す前に先手を打っておこう。


「ああ、俺の……」


「ぱぱ~♡」


 あいりちゃんが俺に向かって、笑顔でそう言う。


「「「ぱ、ぱぱ……?」」」


 困惑する生徒達。くっそ! 先手を打つ前に直球ぶっこんできやがった!


「あ、あはは……親父、呼んでるぜ?」


 俺じゃなくて親父のことを、パパって呼んだことにしよう作戦だ。


 しかし親父がにやっと笑うと言う。


「あいりちゃん、おれのことなんて呼ぶ?」

「おじーちゃん!」


 おいいいいいいいいいいいい。

 親父のやつ……俺が困るとわかってやりやがったなぁあ!


「ぱぱ……」「パパって飯田君が……?」「誰との子供……?」


 ざわざわ、とクラスメイト達が俺に注目し出す。


「ち、違うんだって。こいつはあいりちゃん、俺の義理の妹なんだ。な?」


「はい♡ 飯田あいりです♡ ぱぱの妹です♡」


 立ち上がってしっかりと挨拶をするあいりちゃん。


 よし、誤解が解けたか……。


「……妹なのに、パパ呼び?」「……妹で奥さんって事?」「……妹妻ってこと!?」「……け、けしからん!」「……あいりたんぼくもパパって呼んで?」


 クラスメイト達にさらなる波紋をよぶ羽目になってしまった!


 くそ、こうなったら早く出て行ってもらうしかねえ!


「ほ、ほらあいりちゃん。早く注文してくれ」


 するとあいりちゃんがちょっと悲しそうな顔になる。


「うん……あいりがここにいたら、ぱぱめーわくだもんね……」


 アア違う! 違うんだよぉ!


「……気使える良い子やん」「……てか飯田との関係がまじでわからん」「……あんなかわいい幼女をなかすなんて」「……殺す」


 余計にクラスメイト達からの注目を浴びてしまう俺。


 くそ! 泥沼にはまってる感があるんですけどぉ!?


「あいりちゃん、亮太は嫌がってないってさ。ゆっくりしていってね、だってー」


 親父がにまにま笑いながら言う。

 こいつ絶対楽しんでるだろ!


「いいの! わぁい♡ ぱぱありがとー♡」


 にぱーっと彼女が笑うと、周りに居たクラスメイト達がデレデレとした顔になる。


「……やば、あいりたんかわゆす」「……こんなかわいい妹いるなて」「……てか妹にパパって呼ばせてるのか」「……飯田やべえな進んでるな」「……殺す」


 あいりちゃんがとどまるのは良いけど、そのぶんクラスメイト達からの視線が痛いぜ……。


~~~~~~~~~~~~~~~~~

【★おしらせ】

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『えっちなファンタジー小説で主人公から女を奪おうとする悪役ヤリチン貴族に転生した俺、まっとうに生きようとしてるのに、主人公から女をことごとく奪ってしまう。なんで!?』


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