68話 みんなのコスプレ【先行版】



 文化祭初日。

 俺は男子ロッカーにて着替え終えた。


「いつも思うが全校生徒分のロッカーがあるってすげえな」


 俺たちの通うアルピコ学園は【天竜川グループ】という、日本三大財閥の一つを母体としている。


 三大財閥といえば開田、白馬そして天竜川として有名だ。


 まあようするに理事長一族が金持ってるから、うちの学校は結構立派な施設をしている。

 クラスに割り振られたロッカーで着替えを終えた俺は、部屋を出る。


 廊下の壁にはべたべたとポスターが貼られている。

 教室は喫茶店田のお化け屋敷だのと、普段は見られない姿にチェンジしていた。


「文化祭だなぁ」


 生徒たちがみんな楽しそうに準備している。

 先生が言うところの、青春を謳歌してるってやつだろう。


 青春、俺は謳歌してると言えるのだろうか。

 いやでも夏休みに入る前の1学期は、みしろとデートしたことがある。

 謳歌は、いちおうしてるのか。


 2学期からなんかおかしなことになってるけど。


まあ、先生の言う通り、楽しむか、一度きりしかない青春ってやつを。


 俺は教室へと戻る。


「あ、いいんちょ遅い~」


 クラスメイト達はもうすでに準備完了しているようだ。

 俺たちのクラスの出し物はコスプレ喫茶。

 みなアニメだったり、漫画だったり、といろんなコスプレをしている。


 なかでもデジマスのコスプレは、すごい多かった。


「人気だなデジマス」

「へいりょーちん」


 ぺん、と俺の頭を気安く叩いてきたのは、幼馴染の四葉だった。


「おう」

「どうよ?」


 四葉の格好は真っ赤なチャイナ服だった。

 すりっとからのびる、すらりとした足が美しい。


 スタイルがいいから、こういうぴっちりとした服装が似合うな。


「どう?」

「あー、うん。まあ……あれだ。いい感じじゃん」


「んだよ~。そのたん白な返答」


 ぶー、と唇を3にして言う。

 もっと違う回答がほしいのか? なんていえば……。


「あー、まあ、似合ってるよ。きれいっつーか」


 ずいっ、と四葉が顔を近づける。


「服だけ? なんか気づかない?」


 ちょっと日に焼けた肌に、黒いショートカット。

 ぱっちりと大きな瞳。


「いや、別に」

「0点。おめーは65話を読み返せぼけえ」


 なんだよ65話って……。

 ほかにどこか気にかけてほしいことがあったのだろうか。


「ま、いーや。りょーちんが鈍感なのは昔からだし」

「なんかすまん」


「すごいのはちんちんだけの男だからな」

「そんなことないよね!?」


 え、そんなことあるの?

 すごいのはちんちんだけ?

 うそ……。


「亮太君♡」


 そこへやってきたのは、義妹の夕月。


「わぉ、ゆづちゃんはミニスカメイドかー、気合入ってんねー」


 上半身はオーソドックスなメイドのコスチューム。

 ふりふりとしたスカート。ガーターベルト。


 だがスカートの丈が、あまりに短い。

 完全にこれパンツ見えるだろ……。


「やん♡ 亮太君目がえっちぃ~♡」


 夕月の格好につい目が行ってしまった。

 胸も大きいが、お尻もなかなか大きい。

 スカートからちらちら見える、か見えないかというふうにのぞくおしりは、実にエロい。


「りょーちん。ちらちら」


 すすぅ、と四葉が足をあげると、スリットから四葉の生足がのぞく。


 ……てゆーか、股の付け根が普通に見える。

 なのに、パンツのひもが見えない。


「お客さん、ノーパンですぜ♡」

「の、え、ま!?」


「マ♡」


 うそぉ。ノーパンチャイナとか、こいつ……痴女かよ。

 け、怪しからんな……。


「四葉ちゃんなにそれ、痴女みたい♡」


 にっこりわらって夕月が言う。

 だが四葉は気にした様子もない。


「スカートぺろーん」

「きゃあああああああああああああ!」


 夕月が顔を真っ赤にしてしゃがみ込む。


「欠丸出しのわかめちゃんスタイルのくせに、なーにが痴女か。あんたも痴女だろうが!」


 夕月が四葉をにらみ返す。

 四葉は堂々と睨み返す。


「「ぜってえ負けねえから」」


 な、何か知らんがすごいバチバチいってるよ。

 平穏に文化祭は過ごしたいってゆーのに……。


 とそのときだった。

 PRRRRRRRRRRRR♪


 俺のスマホに、先生から着信があった。


「先生、どうしたの?」

『飯田君! 梓川さんが! 全裸に!』


「え、いつも通りじゃん」

『じゃなくて! 全裸姿で教室へ行こうとしてるの!』


 ふぁ!? どういうこと!?

 受話器の向こうからみしろの声がする。


『離して先生!! 教室にいかないといけないんです!』

『全裸に犬耳に犬のしっぽつけて、なにしにいくの!?』


 全裸に、犬耳にしっぽ……?


『コスプレです!』

『なんの!?』

『犬ですよ! 見てわからないですか!』


 ……こいつ、全裸(ガチの犬のコスプレ)で、接客するつもりだったのか!?


 く、クレイジーすぎる……。


「今からそっち行くんで、セクモンを止めてて!」


 俺は電話を切る。

 四葉と夕月がどうしたのか聞いてきたので、電話で聞いた内容を話す。


「「く、クレイジーセクモン」」


 はぁ、無事に文化祭、のりきれるかなぁ。

 先が思いやられる……


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