【第6話】破滅へのプロローグ

【終章】破滅へのプロローグ


 あの日――私は地獄の中に居た。

 人類発祥の地を荒らす不届き者を拘束するため、士官学校の級友たちと共に出航したあの日。

 先輩士官たちの命令を忠実に遂行し、自らの責務を果たすために全力を尽くしたあの日。

 私は地獄の中に居た。

 なぜそうなったのか分からない。

 なぜこのようなことが起きたのかも分からない。

 何も分からず、何も知らず。

 ただ級友たちが艦と共に沈んでいくのを見守るしかなかった。

 共に魔術を修め、善き世界を作ろうと誓いあった仲間たちは、宇宙の藻屑と化してしまった。

 なぜ?

 どうして?

 私たちは義務と責務を果たそうと頑張ってきたはずなのに。

 『古き貴き家門』の一員として生を受け、人生の全てを人々の幸福と人類の発展に捧げてきたはずなのに。

 なぜこのようなことになってしまったのか。

 分からない。知らない。

 頭の中をそんな言葉がぐるぐる回る。

 そんな中で私は見た。

 宇宙空間にたなびくホロフラッグ。

 まるで私たちを嘲笑うかのようにたなびく旗を、私は見た。

 天秤と交叉する剣を描いた紋章は、御伽噺で語られている勇者の紋章。

 勇者の旗を掲げた艦は、御伽噺の魔王のように私の友を皆殺しにした。

 悔しい。悔しくて涙が止まらない。

 自分が無力で、無能で。

 友が倒れるのを見つめるだけしかできない自分が悔しくて。

 だから私は艦を睨む。旗を睨む。敵を睨み付けていた。


 勇者の旗を掲げた残虐非道な魔王をいつかこの手で殺してみせると。

 私は心に強く誓った――。

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