第43話 国境線上の戦い ※レナルド王子視点

 ファルスノ帝国とラクログダム王国の国境で、戦いが起きていた。


 まずはじめに、ラクログダム王国軍が国境を超えて仕掛けてきた。国境で防衛していたファルスノ帝国軍が受けて立ち、戦端の火蓋が切られる。


「敵を殲滅しろ!」

「ぐっ! だ、ダメです! 敵は、びくともしません」

「なにッ!?」


 大将のレナルド王子が、敵を倒せと指示する。だがラクログダム王国軍の勢いは、一瞬で止められた。


「全軍、とつげきぃぃぃ!」

「ま、まずい! 奴らを止めろッ! 早く!」

「駄目です! 敵軍の勢いが、止まりません!」

「何をしている! 敵がすぐ近くにッ!」


 ファルスノ帝国軍の勢いが激しくて、貧弱なラクログダム王国軍では止めることが出来ない。一斉に突撃してきくる敵軍に、どうすることも出来ずに蹴散らされる。


 馬上で慌てて、敵を止めろと指示を出すレナルド王子。だが、その指示に誰も従う事は出来なかった。指示する声が聞こえず、ファルスノ帝国軍の勢いに飲まれていたから。


 ファルスノ帝国軍とラクログダム王国軍は、比べ物にならないぐらい戦闘力に差があった。当然、ファルスノ帝国軍が圧倒している。


「そのまま、ヤレ! ヤレ! ヤレェェェ!」

「うぉぉぉぉぉ!」

「ッ!?」


 相手の将軍が突撃してきた。同時に兵士も多数、攻めてくる。鬼気迫った勢いに、身体が硬直して動けなくなったレナルド王子。後ろに下がろうとするが、馬も動いてくれない。その場から、逃げ出せない。


「あっ、ぐうぅぅ!?」

「レナルド王子ッ!」


 ラクログダム王国軍の大将であるレナルド王子が攻撃された。敵の放った矢が肩に刺さって、落馬する。


 その光景を目撃したラクログダム王国軍が動揺して、攻撃を手を止めてしまった。混乱を見逃さず、勢いに乗って突撃を繰り返すファルスノ帝国軍の兵士達。


 ラクログダム王国軍は、一気に瓦解した。


「敵の大将を発見したッ! 拘束する」

「抵抗した者は斬るぞ!」

「うっぐっ……」


 レナルド王子は、ファルスノ帝国軍の兵士にあっさりと捕まった。レナルド王子が生け捕りにされて、その戦いは終わる。


 戦争する準備も不十分なまま出撃して、装備も悪く士気も低いような状態で戦いを開始したラクログダム王国軍。初めから、勝ち目のない戦いだった。


「大将を生け捕ったぞ! 戦いは終わりだ! お前ら、武器を捨てろ!」

「まだ戦う意志のある奴は、前に出ろ! 俺が斬ってやるぞ!」

「お前! まだ戦うか?」

「あ、いや。お、俺は戦わない……」

「俺も、戦いたく、ない。い、いやだ……」


 戦場全体に、終戦を伝える声が響き渡った。


 ファルスノ帝国軍の兵士に睨まれて、すくみ上がるラクログダム王国軍。彼らは、持っていた武器を放り投げて、無駄な抵抗はしなかった。そのまま捕縛されていく。


 ファルスノ帝国とラクログダム王国の戦いは、すぐに決着した。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る