第40話 没落寸前 ※ラフォン家当主視点

 金が尽きた。あっという間の出来事だった。ラフォン家の当主であるクレマンスは頭を抱えて、絶望している。


 筆頭執事に任命したバジルが色々と問題を起こしていた。領地で起きた反乱はまだ鎮圧されておらず、ラフォン家の名を騙って複数の商人と勝手に取引を行い、財産を勝手に売り払っていた。それで、反乱に対処しようとしたらしいが大失敗。


 まさか、そんな問題を起こすなんて予想外だった。しかも、相談や報告もなく勝手に動き回って失敗していた。


 クレマンスは、すぐにバジルを処分した。けれども、ラフォン家の保有する資金は一気に減ってしまった。反乱が起きて税金の徴収も出来ないから、手元に金が無い。ラフォン家は、どうにもならない状況だった。


 こんな時に娘のマティルドは、レナルド王子との婚約を強請ってくる。


「ねぇ、お父様。レナルド様との結婚式は、いつ行えるの?」


 そんな脳天気な娘の期待に、クレマンスは怒りを覚える。それが実現すれば、この悩みも全て解決するのに。しかし、レナルド王子はラフォン家からお願いした婚約の申し込みに答えようとしない。拒否されていないが、肯定もしていない。


 レナルド王子はラフォン家から、軍事費を引き出すことだけを目的に今でも関係を続けようとしている。お金が無いと知ったら、速攻で縁を切るだろうとクレマンスは予想していた。


 こんなに状況が悪くなったのは、カトリーヌが居なくなってから。不運を振りまく存在だと噂されていたけれど、彼女が居なくなってからのほうがラフォン家は不運に見舞われていた。


 もしかして、彼女が居たからラフォン家は安泰だったのだろうか。クレマンスは、そう考えたことが何度かあった。家に連れ戻せば、もしかすると……。


 しかし残念ながら、カトリーヌは行方知れず。屋敷から追い出して、どこに行ったのか分からなくなっていた。どうやら、前筆頭執事のゲオルグ達と一緒にどこかへと行ったようだが。


 捜索隊を出す資金も無い。見つけ出して、彼女を連れ戻すことなど不可能だった。


 せめてゲオルグだけでもラフォン家に戻ってきてくれたら、良い解決方法を授けてくれるかもしれないのに。後悔しても、もう遅い。


 クレマンスに取れる手段は、もう何も無かった。ラフォン家が、このまま没落していくのを見ているだけしか。この危機を脱する良い方法など、何も思い浮かばない。


 こうしてラフォン家の当主であるクレマンスは、最期まで頭を抱えて悩み続けるのだった。どうして、こうなってしまったのか……。

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