その声が聴こえなくなっても

由海(ゆうみ)

心がざわざわと

 私が書くエッセイに、母はほとんど登場しない。

 人前で語るべきことと、そうでないことに線引きをしていたら、自然にそうなった。私と彼女のいびつな関係など、語るに値しない──そう思っていた。


 

 けれど、母の忌明けを迎えて、少しだけ気持ちが揺れた。

 心がざわざわとしているうちに、色々と抱え込んでいた母への思いを吐き出して、自分に出来る範囲で消化してしまおうという気になった。


 

 母のことを書くのは、きっと、これが最初で最後になる。

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