全部私に任せときな💙💚💛💜❤💗💖
夜萌 鳴月
出会い〜ホテルまで
あれは、ウンザリするほどの蝉の鳴き声が鳴り響く6月半ば
彼は、とある求人に目が留まった。
"7月入社。小学校教諭1名急募"
彼は、中学の頃一時期教師を目指していた。
その夢は高校の時には薄れていて大学に入った頃にはすっかり忘れていた。
しかし、運命とは悪戯で、大学の知人に誘われ教職課程を経て、小学校教諭一種を取得していた。
〜7月某日〜
彼。後藤は晴れて小学校教諭として働くことになった。その際、彼の教育係として当てられたのが4つ上の女性教師。
「困ったことがあったら全部私任せときな!」
これは廣澤の口癖だった。
どんな時にも明るく、同僚は愚か、保護者からも好かれる完璧人間。
自分には眩しすぎる存在。しかし、彼女のおかげで初年度で担任という異例の職場であっても、何とかやっていくことが出来ていたのかもしれない。
入社して程なく経った蒸し暑い日が続く8月の中頃。
時刻は19:00を回り、殆どの教員が帰り始めている中
廣澤は1人残っていた。
同棲している彼氏がいるとかなんとかで、いつも18:00には校門をくぐる廣澤。
しかし、その日は誰よりも明るく元気を振りまく向日葵のような彼女がどこか虚ろな目をして思い詰めているようにも見えた。
仕事以外の話をしない僕だったが、声をかけられずには居られなかった。
「何かあったんですか?廣澤先生が暗い顔してるの初めて見ましたよ。僕で良かったら話聞きますよ?」
「あぁ、後藤か。こんな時間まで何しているの?早く帰りなよ?」
「あの。誤魔化さないでください。廣澤先生らしくないですよ。」
数秒の沈黙。廣澤は深く息を吸い、溜息混じりの息を吐く。
「後藤!飲み行こっか!」
彼女の満面の笑みは卑怯だ。
こじんまりとした居酒屋で、生ビールを飲みながら廣澤は溜まっていたものを吐き出すかのように2時間まるまる喋りっぱなしだった。
具体的にはこうだ。
役所から送られてくる要望と現場との相違
また、それを保護者に下ろす時に発生する摩擦。
それら全てを廣澤が3年もの間1人で纏めていたというのだ。
下手な言葉は返って会話を妨げるのでは?と思い、僕はただただ頷くことしか出来なかった。
彼女はひとしきり話すと、僕が黙って聞いているのを見てクスリと笑った。
「後藤。お前童貞だろ笑」
「いや、どこをどう見てそうなったんですか?僕は1度も童貞だと入ってま…」
「いいや、童貞だ。100%童貞だ。男ってのはなぁ、女が話してる内容はほとんど左から右。頭の中ヤることしか考えてないの。わかる?
それに比べて後藤はどうよ。ずっと私の目を見て真剣に聞いてやんの笑
どうみても童貞だよ笑」
「いやいや、普通じゃないですか?少なくとも僕の中では、人と会話する時は目を見て真剣にって思ってるんですけど…」
「あー、お堅い話は結構結構!これだから賢い人間はダメだ。22にもなって童貞じゃモテないぞ?早く卒業しなって」
「余計なお世話ですって。それに僕は童貞じゃn…」
「…全部私に任せときなよ」
耳元でそっと、甘い声が囁き
鼻にアルコールの香りが抜けた。
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