四、
11.鬼にばかされた顛末
ざわめきの中、おい、と呼ぶ声に目を覚ました広松は、我と我が身を疑った。慌てて飛び起きると頭が天井にぶつかり、状況が分からず這い出れば、そこは見知らぬ家の庭先、どうやら犬小屋で足だけ出して寝ていたようだ。顔を上げれば警官が、呆れ顔で見下ろしている。
「お父さん、ここがどこだか分かるか」
「はい。えっと申し訳ありません、昨夜はちと飲み過ぎて――」
(夜響の奴め)
まるで狐にばかされた、昔話のあほ坊主だ。
「名前は、住所は、電話番号は? 言える?」
パトカーの中に移されて、警官が手帳片手に尋ねる。
今日は日曜、補習をやらない広松は休みを幸いに、とりあえずベッドに横になる。リビングにいる
織江自身は模擬試験のために今日も出勤した。難関クラスの子供たちは、毎週のように模試を受け、受験後塾で答え合わせをするのだ。
まぶたの裏に交互に現れる、昨夜のはかなげな夜響と織江の冷たい顔、淡い興奮に酔ったり、うなされたりしながら、いつの間にやら眠っていた。
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