EP21 採用担当者の苦悩
あれから10日、採用受付を締め切った。
ギルドの飲食スペースで目の前のテーブルには応募者のシートの山がテーブル3つある。
鑑定する8.966枚ある。
ネットの応募がやばい事になっている。
15.233件応募メール何来ている。
これを1人で全て見ることを考えるとうんざりする。
会社って大変なんだな取り敢えずUbeberでドーナツを30個頼んだ。
「よーし!長期戦覚悟だ!」
「まずテーブルからやっつけよう」
確認し始めると意外と面白いシートをシンプルにした事やキメキメポーズの写真などなかなか楽しめた。
「うんうん、わっはははな」
採用担当者はガチガチのつまらん履歴書をよくチェック出来るなこっちは面白いから続くけど。テーブルひと山で午前中かかった。
「あ〜〜目からしばしばする」
「そろそろお昼だ。お蕎麦にしよう」
たくみさんにお邪魔した。
ここの蕎麦美味い!
蕎麦って言うものは騙しが効かない食べ物だし店主の心意気がダイレクトに伝わる感じが好きた。
合盛り950円を注文した。
ざる蕎麦と田舎蕎麦の二色盛りで味わう。
つゆは本枯節と真昆布で丁寧に出しを取り、かえしは2年熟成の小豆島産醤油を使い絶妙なバランスで出しと合わさっている。
かえしだけでも味わえる。
このかえしを熱々ごはんの上に新鮮卵を割って卵かけごはんにしたら3杯はいける。
つゆだけでも夏は冷蔵庫に入れて飲みたいレベルだ。
まあ蕎麦を語り過ぎるのも粋じゃないからとにかく美味い!この一言。
昼は軽めしておかないと応募シートの山で直ぐに眠くなる。ギルドの前に戻るとおっさん2人がギルドの建物を見ながら話をしていた。
近づくとギルドを建ててくれた業者の建築家さんと設計士さんだった。
オレに気が付くと挨拶して話しかけてくれた。店はまだオープンしないのかとか、何が不具合はないかとか取り敢えず立ち話しもなんでギルド内へ招いた。
(ぎょ!)
散らかったテーブルの山を見て驚いていた。
別のテーブルで冷たい麦茶を出した。
「どうぞ麦茶です」
『いただきます』
『ありがとございます』
今日は近くまで来たから様子を見に寄ってくれたらしい。先日電話で不具合はないかと連絡を取ってはいた。彼らも店のオープンを楽しみにしているみたいだ。
(どっさり!ドーン)
あの応募シートの山を見ると…
『まだしばらく掛かりますね』
『そう言えばと先日お電話でギルドの名前と宿屋の名前がまだ決まって無いと話を聞いてギルドは後でもいいが、宿屋は名前が無いと看板も掛けれず宿屋の宿屋(仮)と言うわけにはいかなでしょう』
「確かにそうですね…」
「なんかいいのあります?」
なんとなくイメージだけは伝えてあったが今日は看板のサンプルを持って来てくれたらしい。
『此方はロートアイアンタイプの看板です』
「ほぉ〜凄くいい!かっこいい!」
欧州の街並みで見る店前にぶら下がるアレだ!
『グレイさんがカラスがどうとか言っていたのでとギルドと宿屋用にと八咫烏をモチーフにした看板を作って見ました』
「うわぁ、いい!いいです」
ギルド用は八咫烏をエンブレムのデザインにしてくれた。宿屋用にと八咫烏のマークの下にからす亭と飾り文字が付いていた。
この2人やりおるな、オレの背中に電撃が走った。
「はい看板採用!」
『え〜!本当にいいんですか?』
『まだサンプル段階でお持ちしただけなので…』
『でもサンプルだか作りは手を抜いていないんですが…』
2人は困惑気味だ。
デザインは元より2人の仕事ぶりを気に入ったと伝えると2人は大変喜んだ。
早速脚立を立て取り付けして見る。
『うーーーん!もう少し左、少し上、そこ』
「いい!」
「看板がある無しだと建物の雰囲気も違う」
今迄は何処未完成な感じだったのだろう。
画竜点睛と言ったところだ。
宿屋の名前からす亭も気に入った。
ハチクロも2人のネーミングセンスを褒めている。お前が言うのかと思った。
看板を付け終えると。
後ろから…
『なかなかいいじゃない』
『素敵です』
と声を掛けられた。
ひめ先輩とさくちゃんが居た。
選考具合を確認しに来たらしい。此方の2人は建築家さんと設計士さんですと紹介し恒例の名刺交換をしている。
ギルド前ではなんですからとギルド内に入った。応募シートの山を見て2人はくるっと180度回転して行く。
『さく!次のアポイントの時間に直ぐ移動しないと時間に合わないかも〜行くわよ!』
『はい!道が混んで…そうですねひめ先輩』
なんの茶番劇だと思ったが2人の肩を叩きなが
ら…
「まあそんなに急がなくても先方も待ってくれますから…」
取り敢えずと席に座らせ麦茶を出した。
(キョロキョロ、チラチラ)
2人はソワソワ、上の方やら横の方やらをキョロキョロ落ち着かない。
あの山を見たらそうなるよなあ。
しばらく歓談していると諦めたのかいつもの2人に戻っていた。
『いただきま〜す』
(ん〜〜モグモグ、パクパク…)
さくちゃんはドーナツを頬張りウキウキしている。
『で!あの山どこまで進んだの?』
「まだひと山しか終わって無い…」
『朝から何をしているの?』
とプレイが始まった。
スーツにメガネ女子に怒られるプレイだ。
「え〜っと午前中少しやって…たくみにお蕎麦を食べに行って…今休憩してます」
と伝えたらプレイが激しくなった。
『なぜ?れ、ん、ら、く、を、し、な、い、ん、だ?』
「そんなに濁点挟まずに言ってよ〜」
『え〜っとさじゃなくてさ』
『ひとりでお蕎麦を食べに行ってすみませんでしょう!』
「あーー!すみませんでした。すみませんでした」
どうやらお蕎麦が地雷のようです。
『まあ初犯なので今回は多目に見よう』
『鰻とお蕎麦!覚えたな!』
「鰻!蕎麦!です」
今後は注意して置くよう諭される。
建築家さんと設計士さんはキラキラした目でこっちを見ている。今度、君たちもひめ先輩から叱らプレイをされなさい。
(あっははは〜クスクスクス…)
それから3人で笑いながら応募シートを確認した。3人なら直ぐ終わった。
「あれ?確認しただけで仕分けされていない様な気がするんだけど?」
2人は本社に戻ると行って出て行ってしまった。まるで瞬歩のスキル持ちかと思うほど速さで。
「あが〜〜」
オレは頭を抱えた、振り出しに戻ってしまった。そんなオレを見てハチクロが
『主人殿は鑑定が使えるんじゃろ!』
『それで仕分けしたら良いのではないか?』『朝から何をしているのかと思ったぞ!』
「早く言ってよ〜〜」
(ガクン…)
オレは崩れ落ちた。
(ピカピカ〜リン〜)
鑑定!採用したい人をイメージすると応募シートの山の中から仄かに光るシートを抜いていく。
8.966枚から53枚になった。
まあ一通り目を通したから折角応募してくれた人への礼儀と言うものでその後の鑑定はご愛嬌。その後2日かけてメールを確認し合計で158枚まで絞った。
なんと応募シートの中に高橋の名前があった。
「あいつ何やってんだ?」
まあお友達枠で残して見た。
それよりももっと驚く事があった。
「うわぁ!マジか!」
あのメイド喫茶のルルカちゃんが応募してくれているではないか!
「はい!採用!」
ルルカちゃんが移籍してくれたらギルド窓口は大混雑間違いないしオレも毎日並ぼう。
そして…
(モヤモヤ〜ファンファン〜)
『オーナー!なんで並んでいるんですか?」『もーふざけないで下さい。お仕事の邪魔するとお仕置きしまくりますよ!』
「はい、お願いします」
「今日は強めの口調でお願いしまくります」
『主人殿は並ばなくてもいいのではないか?』
「馬鹿だなそういうプレイなんだよー」
『うーむ主人殿の妄想変態プレイはわしには良く分からないもんだ』
「大人になると分かるものさ」
「坊やだからさ、、、」
赤い彗星の名言だ。
『主人殿別にカッコつけて言わなくても…』
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