家と部屋

バブみ道日丿宮組

お題:彼と墓 制限時間:15分

家と部屋

「今年もやってきたよ。なんとか生き延びたって感じがするけれど、いつまた不況になるわからないね。あなたが用意してくれた貯金で私はなんとか生きていけるけれど、いつまでもそうしてはいられないよね」

 お墓に彼の好きだったカードゲームのパックを起き、しばらくしてから剥く。

「相変わらず運がいいね。レジェンドレアっていうんだっけ? 声優さんのサインカード、これ何回目だろうか」

 キラキラと光るカードには、その作品のキャラを担当した声優さんのサインが書かれてる。

「やりもしないのに買うのはおかしいって、親はいうんだけどさ。あなたのために買ってるんだから、おかしくないよね」

 ゴミとカードをかばんへとしまう。

「そろそろあなたのためのグッズが一部屋全部埋まりそうだよ」

 私は暮らす用と、飾る用の2つの部屋を作ってる。

 どちらも彼が生きてた頃に購入したマンション。元々は、会社用と自宅用だったものだ。私は副社長。彼は社長だった。

 社員はほとんど在宅ワーク。部屋に来るのは企業か、面接に来る人ぐらいで、あまり役には立ってなかった。

「親戚の子に部屋を譲りなさいっていうのも言われたんだけどさ、あそこは一応会社だからね。たった二人ではじめて、今じゃ大きくなった」

 副社長というポジションにいるにはいるが、ほとんど後任の社長に任せっきり。やることしたら、面接やら、めんどくさい仕事。

 それも毎日あるわけじゃないが顔は業界で知られてるため、取引先と交流をとることもある。それは彼が生きてた頃と変わらないワークスケジュール。

「そろそろ私もここにくるのはやめたほうがいいかもしれないね」

 彼との思い出を捨てれない私は、グッズ部屋をやめることはできないかもしれない。

「最近新しく入った子が可愛くてさ、一緒にすまないかって誘われたんだよね。新人なのに、ハキハキしててさ光ってるんだよね」

 住むのであれば、私の部屋になるだろう。

 子どももいないのに、4LDK。二人であっても、十分すぎる。

 あっ、でも、

「そういえば、うちの猫ちゃん。妊娠したんだ。お母さんになるんだよ」

 家に一匹、飼い猫がいる。

 彼が昔から世話をしてた一匹だ。

「こんなに順調なのはあまりないってことだよ。嬉しいよね。子どもは里親募集するか、飼うかはまだ決めてないよ。猫に囲まれて生活するのも悪くはないけどね」

 視線に振り返ってみれば、黒服が立ってた。

「時間みたい。また来年くるよ。あなたはここにはいなくて、もしかすると仏壇がある部屋にいてくれれてるかもしれないけどね」

 ばいばと手を振って、彼の墓石を後にする。

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家と部屋 バブみ道日丿宮組 @hinomiyariri

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