第5話 街の南は大変なことに。
南の状況は良くない。
すでに石で組まれた街壁の一部が壊れて、魔物が侵入していた。壁のそばでは国の騎士や兵士たちが少しでも侵入を食い止めようと頑張っている。もう街の中に入っている魔物は、冒険者や街の人たちが力を合わせて抑え込もうとしていた。
「報告よりも酷いな」
ギルド長が唸るように言った。
「あんなに壊れてたらちょっとこの量のスライムじゃあ塞げないか」
「ディルでもだめなのか……」
「いや、ダメっていうか、ダメじゃないけど。スライムをいっぱい持ってきたら、いけそう」
「大量のスライムを今から集めるのは無理だろう」
「スライムを持ってくる方法はあるんだけど、ちょっと問題が」
「方法があるんなら、それでいこう。どうすればいいんだ?」
「じゃあいっしょに来てもらえます? 運び手も十人くらい欲しいんだ」
スライムは俺の大事な商売道具で、家にもある程度は置いている。だが小さな家の中にあまりたくさん飼うわけにもいかない。害虫扱いなので飼う場所も街中だと難しい。
だから俺はスライムが発生しやすい場所に、こっそり大量に育てているのだ。その飼育場の一つが南門のすぐ外にあった。
街の外の、今まさに魔物のあふれている場所に。
「なんだとっ、今たった十人で街の外に出るのか?」
「無理に決まってる」
荷物持ちのために呼ばれてきた冒険者たちが、南門の前で渋る。
いや、そんなこと言われても困るなあ。俺が一人で何往復もスライム運びをするのは嫌だ。
「南門を出たらすぐなんだ。今なら魔物は向こうの壊れた壁のほうに集中してるから、こっちは大丈夫だって」
「そんなわけあるか」
「襲ってくる魔物は俺がどうにかするから、とにかく荷運びに来てもらわないと困るんだよ」
「お前みたいなひょろいのが一人で、一体どうするってんだ」
「俺はいつも街の外に出るときは一人だし。南門なら魔物は多くてもどうにかなるって」
悠長に言い争ってる時間はない。今もそこらじゅうに魔物と戦ってる人たちがいるんだから。
ギルド長が持ってたスライム入りバケツを1つ取り上げて、俺はさっさと門に向かって歩く。
ギルド長は一応俺を信じることにしたのか、冒険者たちを宥めながら付いてきた。
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