【書籍化】群青のステラ

愛世

序章

プロローグ

 魔法ティアが当たり前のように存在する、人間と魔獣デモンが住まう世界、ルーラティア。そんな世界の片隅にひっそりと構えるのが、雄大な自然を有する平和な国マルティアナ共和国である。


 淡色のレンガ造りの建物が軒並み連ねる中心街、朝から晩まで活気に満ち溢れた国民、そして街外れから隣国まで広がるのは青々とした草原や川といった生きる大自然。他国と比べて和やかな空気を纏うマルティアナ共和国だが、十七年前、この国で恐ろしい出来事が起こった。






 太古の昔に滅んだとされていた伝説の魔獣、炎龍メテオドラゴン。二つの首と六本の尾を持つ、真っ赤な硬い皮膚に覆われた史上最強の魔獣。それが突然、マルティアナ共和国の大草原に姿を現したのだ。この降って湧いたような脅威に国民が為す術なく逃げ惑う中、勇敢にも立ち向かったのが八人の若い男女。




 当時まだ二十歳前後という八人の若者は、他を寄せつけない飛び抜けた魔力で炎龍を圧倒した。そして、十七年経った今でも国民の瞼に焼きつけられた光景。炎龍にトドメを刺したのは、目が眩むほどの強い光を放った、群青色の魔法だった。




 国民は勇気ある八人の英雄をこぞって称賛したが、果たして群青色の魔法を放ったのはどの若者だったのか。十七年経った今でも、当事者以外誰一人として知る者はいない。

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