第24話 第3の世界へ

 次は第3の世界だ。スカイとともに任務遂行のために頑張りたいと思う。さっそく旅立つことにした。母さんに見送られながら、コンゲルネの光に包まれた。次の世界はいったいどういうところなのだろうか。

 しばらく光に包まれて進むと、出口が見えてきた。光が薄れて周囲を見渡すと、辺り一面真っ赤だった。厳密にいうと、赤茶色だろうか。火星表面のそれといえば一番上手い例えだろうか。この世界では酸化鉄が豊富なのかもしれない。

 近くに建物らしき物はなく、人の気配も全くしない。しばらく様子をうかがっていたが、人が誰一人も通らない。少し移動してみることにした。しばらく歩いていると、鉄の臭いがだんだんと強くなってきた。大きな川が流れていて、そこに赤茶色の水が流れている。上流に鉄分が豊富な場所があるのだろうか。



 近くに建物が見えた。かなり大きく、豪華な雰囲気の建物だ。そこへ近づいてみると、中から一人の老婦人が出てきた。どうやら敵意はないようだ。建物の中へと招かれた。話を聞いてみると、彼女がこの辺り一体を治める長老らしい。

 どうやら鉄が溢れすぎたこの世界は、これから対峙することになる組織が何かしらの技術開発をしていて、そこで排出される鉄をそのまま自然界に放出していることで起こっているらしい。

 組織が何を開発しているのかも重要なことだが、鉄ばかりの世界になってしまうのも問題だ。長老から話を詳しく聞いてみると、組織の名前は、「アイアンプロダクツ」というらしい。3、4年前くらいにどこからともなくやってきて、川の上流に建物をいくつも造ったそうだ。

 今のところは組織がこの世界の住民に直接関与することはないらしい。生活用水は鉄で染まる川とは別に、地下水を使っているので実害はないようだ。まずは組織の目的が何であるのか、情報収集をしたいと思う。



 翌日、スカイと一緒に情報収集を開始した。まずは川の様子を観察してみることにした。相変わらず酸化鉄の影響で赤茶色に染まっている。水底からプツプツと泡が出ている。なんだかガスのような匂いがした。小さな炎を魔法で作り出して水面に当ててみると、ボッっと燃え上がった。やはり可燃性のガスが出ているようだ。この川に住民が近づくことはないらしいので影響はないと思う。

 近くに点火源となるようなものもなく、出ているガスの量もそんなに多くはない。しばらくは経過観察で問題ないだろう。ひとまずガスの計量器を設置して、上流の調査に行くことにした。川沿いをしばらく上っていくと、少し大きな湖があった。そこもやはり赤茶色に染まっている。深いところではかなり酸化鉄が溜まっていることだろう。

 この川の水系では生物もほとんどいないと思われる。ただし、酸化鉄でも適応できる生物がいないとは言い切れないが。パッと見る限りでは、動いている物はない。肉眼で確認できる生物はいないのだろうか。



 この湖ではガスの反応は見られなかった。酸化鉄以外には、特段何もないようである。さらに上流へ進んでみることにした。しばらく歩いていくと、洞窟を発見した。洞窟の中は涼しく、そこまで湿度も高くないようだ。これが長老が言っていた、貯蔵庫用の穴だろう。今は使っていないが、僕たちに自由に使っていいと言ってくれた。

 用心するに越したことはないと思うので、洞窟の入り口に防御結界を張っておいた。しばらく休憩を取ることにした。洞窟の中は暗いので、魔法で炎のランプを作って配置した。

 ランプのおかげで明るくなると、穴の奥まで見えるようになった。距離はおよそ30mといったくらいだろうか。この洞窟を拠点にするのに十分な広さだ。スカイと一緒に昼食の時間にすることにした。



 この世界でもしっかりと任務を遂行したいと思う。そのためにここまでやってきたのだから。

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