第26話 再会

「もう二度とこんな店来るかっ!!」


「儂はいつでもお主が来るのを待っておるぞ。それと、今持っておる煙草はここで捨て置け」


「うるせーっ!!」


 カランカラン


 すごい勢いで出ていったなあの人。


 あ……しまった。信長さんと目が合ってしまった。


「ど、どうも」


「なんじゃ。雪女か」


 なんじゃとはなんじゃああああ。


「信長さん、あなたは私になんじゃと雪女しか言えないんですか?」


「そんなわけなかろう。で、何しに来たのじゃ?」


「え、何しにって。そりゃあ……漫画を読みに来たんですよ。何か問題でも?」


「何をじゃ?」


「え?」


「何を読む?」


 え、何この質問。答えないと店に入れてくれないわけ?


「べ、別になんでもいいじゃないですか。それよりも寒いから早く中に入りたいんですけど」


「出せ」


 え、出せ?何を?


「いいからはよう出せ」


 ちょ、ちょっとまって。いきなり出せって……何を出せばいいのよ。


「えーっと…初めてだから私全然わかんないんですけど。私、何を出せばいいんでしょうか?」


「決まっておるじゃろう、お主の物じゃ。儂はお主のが見たい」


 私の……モノ!?私のを見たい!?え、どういう意味。やばい、全然わかんない。この人そういえば初対面の私に「抱くぞ」っていきなり言ってくるよう人だった。しかも今は私達二人しかこの空間にいない。どうしよう、この人やっぱり変態なのかな。


「はぁー。雪女よ、お主何をまた顔を赤くしておる。ここは初めてなのじゃろう。身分証、持っておらぬのか?」


「み、身分証?あ…あぁー身分証ですね。なんだ、早く言ってくださいよ。てっきり…」


「…なんじゃ?」


「いえいえいえいえ!気にしないでください。それにしても信長さん、相変わらず言葉足らずですね。出せだけじゃわかりませんよ。それに、私の身分証が見たいだなんて趣味悪すぎませんか?」


「で、あるか」


 もう、なんでいちいちこんなやり取りで私がドキドキしなくちゃいけないのよ。


 鞄から身分証を取り出して彼に渡した。


「ほう。やはりな」


「な…なんですか?やはりって」


「美しい」


「……!!」


 な、何でこの人はいつもどストレートな直球を急に投げてくるのよ!私はまだミットを構えてない。


「が、その赤面はだめじゃ。お主の白い肌を皆に見られるのは構わぬ。が、赤い面は見られるべきではない。あの珍獣め。思い出しただけで忌々しいわ」


「え、どういう意味ですか?」


「あの珍獣、お主が酒で赤くなった面を生配信で皆に見せおった。あやつは許さぬ。映すなら酒が入っておらぬときに映せばよいものを」


「……あのー。あの時信長さんが珍獣…じゃなかった、アキちゃんに怒ってたのって私がカメラに映されて、それを私が嫌がっていたから…じゃないんですか?」


「まあ、そなたの許可なしに映しておったことにも腹が立ったのは事実。じゃがもし雪女の肌の美しさが鮮明に映るようであれば儂は止めなかった。女は人に見られるとより美しくなるもの。あの時のお主は肌の白さを全くもって感じさせぬほど赤かった。だから映るべきではなかった」


「は、はぁ」


 なんか、納得できたようなできないような。嬉しいような嬉しくないような。でも、この人は本当に私のこの肌の色を褒めてくれているようだ。雪女……んー呼ばれて喜ぶ人いるのかな。


「で、どうする?」


「はい?」


「時間じゃ。何時間おるつもりじゃ」


「あー時間ですね。えーっと。特に用事もないし。んー3時間…にします」


「1時間にせよ」


「え?」


「儂があと1時間程でここを出る。だからそなたも1時間でよかろう」


「え…えーっと。なんで?」


「飯を食おう」


「は…はあ」


 相変わらず私は押しに弱い……うん。押しに弱いから断れないだけ。








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