第2章「はきだめ」 6-1 ギーランデルに決める
「そういうわけでやんす!」
二人が、楽しそうに大声で笑い合った。
ペートリューもつき合って愛想笑いを浮かべるが、頭の中は早く打ち合わせを終わらせて酒を飲みたいことでいっぱいで、話は上の空だった。
ストラは、いつもの通り半眼で瞑想でもしているような表情で、席について微動だにしない。
だが珍しく、
「ねえ」
プランタンタンとフューヴァ、一瞬、ストラを見やり、話しかけられたのが嬉しくて二人同時に、
「なんでやんす!?」
「なんですか!?」
と、声を発した。
「そいつを排除したら、組織の上層部に接触できるかな」
プランタンタンがフューヴァを見る。組織の話なら、フューヴァしか分からぬ。
「そりゃあ、できますとも! 組織に入るのなら……ですが」
「組織に……」
「入るとすれば、どちらにしますか? フィッシャルデアと、ギーランデル」
「どっちでもいい」
「えっ?」
そう云われても、フューヴァにだって決めることはできない。
「困ったな……」
思わずプランタンタンを見た。が、プランタンタンとて決めようが無いことは明白であった。
「フューヴァさん、その、ナントカってえ
「フィッシャルデアだ」
「じゃあ、ストラさんがソイツをぶっ倒したあと、フィッシャルデアに所属したら、ただ一位のヤツが入れ代わるだけでやんすか」
「……そうなるね」
「ギーランデルにしやしょう」
プランタンタンが、いきなりそう断言。
「ええ!? どうしてだ!?」
「おもしろくねえからでやんす」
大真面目にそう云うので、フューヴァは思わず失笑してしまった。
「……なにが
プランタンタンは気分を害したわけではなく、本当に理解できないといった表情でフューヴァを見やった。
「いや、あんたがカネ以外の事でそんな判断をするなんてさ、意外だったから」
「はあ……」
プランタンタンは、フューヴァの云っている意味がわからなかった。なぜなら、自分が金銭にがめついと自覚していないからだ。
「まあいいや……。じゃあ、ストラさん、次の試合に勝ったら、ギーランデルに所属しましょう」
「うん」
「しかし……メンツを失ったフィッシャルデアは、なんとしてでもストラさんを潰しにかかってくるでしょうね」
「うん」
この世界でストラにいっさいの興味は無いが、いま現在あるとすれば未知の地下探査不可能領域だ。組織の上層部が、そこへ何らかの方法で出入りしているのを確かめたい。それだけだ。
「そいつあ、もしかしたら暗殺を含めてで、やんすか?」
「もちろんだ。試合の外でもしかけてくるだろうさ」
「じゃあ、あっしらが足手まといになる可能性も……」
「む……」
ストラに
「でも、アタシらも当然ギーランデルの構成員になるんだから……下っぱだろうけど……そうなったら組織同士の戦争になっちまう。そこまでやるかな」
「わかりやせん……。ま、そうなる前に、とっとと逃げちまいやしょうや」
「そうだな!」
また二人で笑い合う。ストラはいつも通り半眼のまま微動だにせず、ペートリューはもう我慢の限界だった。
「あのー……そろそろ結論が出ましたでしょうか」
「あ? ああ。出たよ」
「じゃあ……そろそろ」
云うが、ペートリュー、卓の下からワイン差と木製ゴブレットを出すや、並々と白ワインを注ぎ、駆けつけ三杯めいていきなり三杯を水のようにゴクゴクと飲み干したので、フューヴァは度肝を抜かれて凍りついた。
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