第2章「はきだめ」 5-1 ストラ組
「私に」
「分かりました……いや、先日の試合を見させていただきましてね。ぜひ、お話が……」
「何かの勧誘なら、あとでフューヴァを通して」
もう、ストラが踵を返す。
あわてて、フューヴァが続いた。
が、ペートリューがまだ凍りついていたので、その手をとって小走りに路地を去る。
シュベール、その軽薄な笑顔を消して、三人を見送った。
5
アパートへ戻り、ようやくフューヴァが口を開いた。
「申し訳ありません、ストラさん、けっきょく助けていただいて……」
「うん」
ストラはそれだけ云うと、また窓辺に佇んで外……隣の建物の壁を見つめ始めた。
「なんとなく、察しがつきやしたぜ。気がついたら旦那がいなかったんで、外に出たんだろうなとは思っていやしたが……」
「なあ、プランタンタン」
「なんでやんす」
「アタシ、ここに来るよ。それで……やっぱり、金を貸してほしいんだ」
「合点でやんす。いくら御入用で?」
フューヴァは一瞬、たじろいだが、
「2,500トンプ」
ペートリューがひきつけのように、小さい声を喉から出した。が、プランタンタンはすましたもので、
「御安い御用で。……組織と、ケリをつけなさる?」
「……ああ……」
「親の残した借金か何かで?」
「よく分かるな」
フューヴァが苦笑した。
「なあに……おおかた、そんなところだろうと。あっしも、借金のカタに売られて奴隷になりやあしたからね」
「そうか」
「ペートリューさん、フューヴァさんに、金貨を五枚、渡してやっておくんなせえ」
「う、うん……」
ペートリュー、革袋から金貨を出し、フューヴァへ渡した。
「恩に着る。借用書を用意してくれ」
「借用書はいらねえでやんす。利子も担保もいりやあせん」
「そいつはダメだ、プランタンタン」
「なあに……これがお遊びに使うとか、フューヴァさんが外のモンだっちゅうんなら、キッチリ取り立てやすけどね。正式にこっちに来るとなりやあ、人材確保の必要経費でさあ」
「プランタンタン……」
フューヴァが柄にもなく、涙ぐむ。
「
プランタンタンが腕を組んでニヤリと笑い、フューヴァを見つめた。
「分かってるよ。ストラさんに逆らう気なんて、これっぽっちもありゃしない。逆に、たとえ捨てられたって、どこまでも着いてくぜ」
そう云ってフューヴァはストラの背中に向かい、
「明日に昼までに戻ってきます」
ストラは無言だった。フューヴァはストラに礼をすると、アパートを出た。
「大丈夫でやんすか……また、妙なのに狙われやせんか」
「大丈夫だよ」
もう、プランタンタンやペートリューと同じく、フューヴァも常時追跡保護対象に入った。ギュムンデ程度の規模なら、瞬時に攻撃用プラズマ球電をピンポイントで飛ばすことができる。
もちろん、三人を襲うほうに、だ。
潜伏モードでも、最大で二百人の敵に対応できる。
そして、翌日……。
昼前に、簡単な荷物と共に、フューヴァがアパートにやってきた。全てケリをつけ、完全にフリーの身となったという。
「改めて、ようこそでやんす、ストラ組に」
「なんだい、そりゃあ」
フューヴァが笑った。
「なあに、組織名みてえなもんで……」
「釣りがあるぜ」
「持っててくだせえ。支払いがあったら、払っておいてくだせえ」
「了解だ」
「さて……」
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