第10話 希望を載せたアイリス
凍気を自由に操れるらしく、それをローダに向けて飛ばしてきた。
ローダはこれをかまいたちと同様に交差させた刃で受ける。かまいたちとは違い、止める事は出来た。だが受けた剣は凍り、その腕は
「グッ……!?」
「どうした………もう
文字通り、身も心も凍らされた思いがしたローダ。それを
「ハァァァッ!」
「あ、あれはマーダとやった時の!」
ローダが気合の声を上げると、その両腕を燃え上がらせた。それを目の当たりにしたガロウは、暴走しながらマーダと
あの時も体液を凍らされそうになった処で自らの全身を燃やし、それを防いだのだ。
「あれを自らの意志で出来る様になっていたのか!? だがそんな力を何処で?」
「恐らくそれは、ジオの
リイナがガロウの疑問をすんなり解いた。確かにジオーネからリイナに不死鳥を引き継がせた際、ローダも
「そ、そうか。そうだ、
ローダが今までの封印を解いてきた相手の事をガロウは、一人一人思い返してみた。
(日本刀が扱えるのは悔しいが俺の力によるものが大きい。だが
ガロウの中に新しい疑問が生まれた。
「我が剣の
次に士郎は散らした突きを放った。4つの凍気がローダを襲う。
(もう受けては駄目だ!
ローダとてこのままではジリ貧だと判っている。取り合えず宙に上がり一つの凍気を躱す。けれどその先には、既に次の凍気が届いていた。
「風の精霊達よ、我を守れ!」
風の精霊術で自らの身体の周りに空気の壁を作り、これらを風で押し返すと二刀を振りかざし、士郎の上空から襲いかかった。
(………次を撃たせる前に斬る!)
(大抵の二刀流は短い剣で此方の攻撃を封じ、加えて利き手の剣で斬りつける。貴様はどう来る?)
士郎が刀を振る前に左手の脇差でそれを押さえつけた。これなら凍気は生じない。
この後、士郎が知る二刀流なら、右手の剣は全く違う方から急所を狙って襲ってくる。
(……見てかわせば良いだけの事、
士郎はそう
しかしローダの右手の剣は、自分の脇差の裏側、
(な、何の真似だ?!)
峰に当たったローダの剣は、脇差の裏側を滑りながら登ってくる。先に有るのは士郎の首だ。
(こ、これはいかんッ!)
ギリギリ
「こ、
これには士郎、大変に
それも西洋の両刃の剣と脇差を操る騎士にも武士とも言えないような男がやってのけた。それに殺されかけたのだ。
怒りを載せて三度目の凍気の刃をローダに向かって飛ばしたが、またも風の精霊で弾き飛ばされた。
「す、
「あ……あんなのデタラメだ。二度目は通じん………」
槍と剣は違えど同じ二刀を操るランチアは
そして丁度この頃、ルシア
―ローダ君、今だ! この機を
突然
(……ドゥーウェン? ルシアが?)
―いけるか?
ローダも
だがこのタイミングを逃す
―いけます! 早く! ルシアさん、貴女もです!
これにルシアはただ無言で
士郎とティンには、そんな声こそ届かないが、この不思議なやり取りに
「「何をする気だッ!」」
士郎とティンが、それぞれ己の相手目掛けて飛び込もうとした。
「「
ローダとルシアの天を突く程の鋭い声が、その場にいる全員の魂すら震わせた。
◇
「………
少し時を
フォルテザの砦でドゥーウェンが、『AYAME』プログラムのバージョンアップ版をルシアに説いていた時の事である。
目の前には全身に電極を付けられたローダが寝ている。彼には既に説明済の話であるらしい。
「アハハハ……正直な話、私、花にはあまり詳しくないの」
「英語表記で『Iris』、アイリスって読みます。日本の
ルシアは女性らしくないと恥じたのか乾いた笑いで
「"燃える思い"、加えて"情熱"。燃える思い………言葉通り、
「そ、そのアイリス………AYAMEのVer2をローダと私に?」
「はい、一応私の身体で人体実験は終えています。副反応は覚悟して下さい………。マーダ……いえ、ルイスによって扉を開いたのだとしたら、此方も
迷わずルシアはコクリッと頷いた。
◇
(そう、アイリスは僕の思いそのもの。これを受け入れてくれた皆の
「二人共いいですか。
ドゥーウェンは拳を握り締めながら、相手に聞かれるのも構う事なく声に出した。
「「アイリスッ!」」
ローダとルシア、二人の叫びと共に全身が赤い輝きを帯びる。以前、ローダが狂人と化した時と
「何か知らんが…………」
「構わん! 斬るのみだ!」
ティンと士郎は構う事なく、ローダとルシアへの
「………ローダの野郎が加減をしている?」
「お前も槍を極めし者なら判る筈だ。ローダの青い
対してガロウは厳しい顔つきでローダを見るのを決してやめない。これが彼の言う「二度目は………」はの
「だ、だってアイツは早くこの戦いを終わらせて、
「それでも出来ねえんだよ………
いかにも嫌そうな顔つきでガロウは告げる。彼自身、初めて相手の命を絶ったくノ一との戦闘を思い出し、思わず苦笑した。
(果たしてこのアイリスとやらが引き金になるか………とにかく死ぬなよ)
とにかくジェリドは祈る想いで
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