自治

フウ呂 滋心

第1話 令和3年2月

家にいるのに、居心地が悪い。

愛する家族もいるのに、居心地が悪い。


そんなことを感じながら、ふと、壁掛け時計に目を向ける。まだ20時か。

次いで、隣を見ると、暗がりのなかで娘が寝息をたてている。先月1歳になったばかりの娘、私の宝物だ。


妻は、下の階にいる。娘を寝かしつけたあとで、自由時間を満喫しているところだ。

耳をすますと、不明瞭な声のあとに、聴き慣れた笑い声が聞こえてくる…どうやらお笑いに夢中のようだ。


私はというと、愛する娘の見守り役を任されている。実に光栄な役だ。年々低下していく視力すら愛おしい。今日も暗がりのなか、画面の明かりを最小にし、マナーモードに加えて音量も0にした。闇に溶け込んでスマホをいじる、至福の時間である。


さて、話を戻そう。

私には愛する妻と娘がいる。小さいながらも落ち着く我が家もある。

では、私の居心地の悪さは、どこから湧いてくるのだろうか。

そう考えて頭に浮かぶのは、いつも同じ。

あの老人、あの隣人、そしてあの古びた会館

…そう、比灯ひとう自治会の連中だ。

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