昭和ブルー ヤバくない?高校編

まさき博人

ヤバくない?その知らせ

ボクたちの夢のような空間、喫茶店シャントーゼ。そこにあることが当たり前みたいに、自分たちの居場所になっている。ここでの時間がずっと続いていくかのように、今日もキャロルキングのピアノが響き、歌声が沁みてきます。

高校三年七月初めの日曜日、梅雨の中休みで久々に晴れたのに、ボクとマナブは一日シャントーゼで過ごしました。アルバイトはボクの番ですが、マナブが勝手に途中から手伝ってくれています。

コーヒー一杯で粘っていたお客さんも帰り、もう閉めてもいい時間ですが、ふたりともカウンターの椅子に座り、肘をついて呆っとしていました。

🎵winter spring summer or fall~


入り口のカウベルが激しく鳴って、ナオヤが飛び込んで来ました。

「良かった!まだいた。いい話がある。」

ナオヤの目は、妖しく光っています。

「このあいだ、シンジュクでナンパ成功したヌマヅに住んでる女子大生と、今日も会って来たんだ。今度の夏休み、親がしばらく旅行でいなくなるらしいんだ。その時家に遊びに来てって言うんだ。」

「ふーん、そりゃ良かったね。」

羨ましさを隠して、ボクは素っ気なく応えました。

「ふーんじゃないよ、彼女にお前たちの話をしたら、『友達呼んどくから一緒に来れば』だって。」

ん?親がいない!?友達が来る!?泊まり!?

マナブの目が光ってきました。

「それって、デキるってこと?」

「うん、オレの経験からするとかなりデキる。」

「デキるって、オレも?」

ひっくり返りそうな声を押さえてボクも聞きました。

立派なナンパ師に成長しつつあるナオヤとマナブは、もうとっくにチェリーボーイを卒業しています。ボクはというと、中学の時のカワトぽっちゃり唇に自分の唇を押し付けた以外は、片思いばかりで何もありません。

「アタリキシャリキ!」ナオヤの答え。

「ヌマヅって遠くない?」マナブ

「近い近い、カナガワのとなり!」ナオヤ

よし!行くぞ!

受験?まだ大丈夫!

部活?こっちの方が大事でしょ!

行くぞ!

何があっても行くぞ!

三人の妄想は膨らみながら、ヌマヅの町へと飛んでいきました。

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