ダサいモブ令嬢に転生して猫を救ったら鉄仮面公爵様に溺愛されました

あさひな@10/30発売【ダサいモブ令嬢

第一章 猫好きに悪い人はいません!

プロローグ

「んん」


 眩しい……朝?


 重い瞼を開け、真っ先に入ってきたのは見慣れない天井。


 あれ? 私は確か、車に轢かれそうになっていた猫を助けようとして車道に飛び出したはず。

 ってことは、ここは病院?


 身体を起こして周りを見渡すと、小さいシャンデリア、天蓋付きのベッド、鏡台……

 なんだか、病室というより貴族のお屋敷にでも迷い込んだ様な煌びやかな部屋。


「ここは……何処?」


 あれ? なんか声が変。

 それにさっきから見えている手もいつもと違う気が。

 ん? この髪は……あ、赤毛!?


 髪色が気になり慌てて部屋の隅にあった鏡台の前迄行くと、そこに映っている姿に愕然とした。


「え!?」


 癖のある赤毛に茶色い瞳。

 コケシ……いや、純日本人顔だった私とはかけ離れた容姿。


「どういうこと!?」


 その時、頭にガンッと殴られた様な衝撃が走った。

 頭が痛い!!


「うっ!?」


 頭を押さえて思わずその場にしゃがみ込むと、大量の情報が頭の中に流れ込んできた。

 どの情報も、私の知らないことばかり。

 もしかして、この身体の持ち主の記憶!?

 頭を押さえつつヨロリと立ち上がり、再び鏡を見つめる。

 そうだ。この容姿、見覚えがある。


「ま、まさか」


 昨日買ってきた乙女ゲームのパッケージに載っていた悪役令嬢の取り巻きにそっくりじゃない!?


「嘘、そんな事って……」


 いやいやいや、落ち着け。落ち着くんだ。

 一先ずそこのソファにでも座って頭を整理することにしよう。


 「ふぅ」


 ああ、これってあれ?

 ラノベ小説で読んだことのある異世界転生ってやつ?


 こうなったのって、絶対あの事故が原因だよね。


 目を覚ます前の私は、千葉県産まれの東京都育ちで生粋の日本人だった。


 残念なことに容姿には恵まれなかったが、両親からは「女は愛嬌があれば大丈夫! ポジティブに生きるのよ!」とよく分からない自論で育てられたため、性格は明るく育ったと思う。


 持ち前の明るさでお笑いポジションにつく事が多かった私は、周りの友達にも恵まれた。


 しかし、顔面や体型だけはポジティブ思考ではどうにもならず、メイクやファッションを頑張ってみたものの限界があった。

 そのため容姿に自信が持てず、恋愛なんて美男美女達のする事だとどこか諦めていた私は、恋愛経験値ゼロを独走する喪女でもあった。


 そんな私には同じ境遇の友達がいたのだが、ある日その友達は興奮した様子でとあるゲームを勧めてきた。

 それは乙女ゲームという、イケメン達がチヤホヤしてくれる夢のようなゲームだった。

 私も漏れなく乙女ゲームにハマった。


 その日以来、乙女ゲームにどっぷり浸かる日々を過ごしていたのだが、ある日新作の乙女ゲームが発売されるとの情報を入手した。

 事前公開のストーリーは、中世ヨーロッパ風の学園が舞台のごくありふれた物だった。

 しかし、攻略キャラがツボだった私は発売日にそのゲームを買いに行った。

 ソフトを無事に購入しプレイを楽しみにしながらルンルン気分で自宅を目指していると、目の前で野良猫が車道に飛び出した。


「危ない!」


 自宅で猫を飼っていて、尚且つ、猫愛好家の私は咄嗟に身体が動いてしまった。

 猫を車道脇に追いやり自身も逃げようとしたが、私の身体能力では間に合わなかったようだ。


 ドンッと身体に強い衝撃が走った。


 ーーそれから目覚めてみたら、この姿になっていた。

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