否定確信の願望否定録

@gureenkarsu

第一否定 人形憎愛 第一節

彼女が僕の家のお茶を勝手に飲み終えた後、外に停めてあった彼女の車に乗り込み出発する。

 いつも通り、何処に向かうかの説明は一切なく、車を走らせる。

 移りゆく風景を眺めながら、二度寝を邪魔された事に少しだけだが機嫌が悪い。

 僕のそんな態度を茶化すかのように話しかけてきた。


「おやおや今日はえらく不機嫌じゃないかジン、お茶だけではなく、お菓子まで食べたのがそんなに気に障ったかい? まぁそう不機嫌にならずに、いつも通りの質問はないのかい。

 今からどこに連れていくのだとか、今回は仕事の依頼じゃないのかとか、私がなんでこんなに頭が良くて美人なのかとか。」


 最後の質問はどうでもいいが確かに今からどこに行き、今回も仕事関係で酷い目にあうのかは気になるが……その質問の返事は大体予想できている。

 聞いてほしそうにチラチラこちらを見ているのは気に入らないが……まぁ聞いてみるか。


「それじゃあ聞きますけど、どこの店に行くんだ?」


「それはついてからのお楽しみだ。」

 

「そうかぞれじゃあ、今回は仕事は関係ないんだな」


「それについても秘密だ。」


 ……やはり予想通りの返答をされたか……。


「もう僕は何も喋らなくてもいいかな?」


「まてまてジン!君は一番大事なことについてまだ質問してないだろ、ほら早く私に質問しなさい!」


「人に聞かれた事をまともに返さない奴に聞く事はない。」


「むう、そんなふてくされないでくれよジン、全くしょうがない奴だ、仕方ないからちゃんと答えてあげようではないか。」


 当たり前だ、と口を開く前に彼女が答える。


「まず一つ目の質問だが今から行く所は高級レストランだ、実はお食事券をいただいてねせっかくだから君を連れて行ってあげようと思ったのだよ。」


「高級料理店だって? ああだから僕はスーツを着させられているんだな、思わずどっかのお偉い方に会うのかと思ってたよ、僕の就職先の紹介として。」


「アッハッハ何を言うだ、君は既に私の事務所に就職しているではないか。」


「それだけは願い下げなんだが……あれ? 僕はスーツなのになんでお前は普段着でいるだ?」


 彼女の服は紺色のズボンを履き、上は黒と黄色をモチーフにした服を着ていた。

 もし僕の様なスーツを着なければいけない所なら、彼女の服装では入らないのではないのか?


「ん?ああ安心したまえ、今から行く店は別にスーツとかの正装で来るなんて条件はないところだよ。」


「……じゃあなんで僕はスーツなんだよ。」


「それは完全に私の趣味だから気にするな。」


 ……コイツの趣味でスーツを着させられた事も腹立たしいのだがそんな事よりも、わざわざスーツを仕立ててきたコイツの行動力に、怒りよりも呆れる感情の方が強かった。

 彼女が車線変更をし、店の駐車場で車を止めた。


「さぁ着いたぞジン、ここが目的地の店ハシカノカモだ。」


 ハシカノカモ確かネットで見たことがある、なんでも色々な種類の食材があり、日替わりで色々な国の料理を作ることができるのが有名なのたが。

 ここの一番のメインは、食事中に歌う歌手の女性たちの声が美しく、その声を聞いたお客さんは食事を忘れ彼女達に釘付けになることもあるらしい。


「ほらージンさっさと中に入るよ、この季節の夜は冷えるから風邪ひいちゃうよ。」


 といい彼女はやや早歩きで入り口に向かっていった、どうやら彼女はここの料理を早く食べたいらしい……まぁ僕も早く食べてみたいけど。

 彼女が店の人にチケットを見せると席に案内される、中は20個ぐらいのテーブルがあり、奥側には食堂らしき扉と非常時用のドアがあり、そして一番目につくのがやはり歌手達が歌う広場が中央にあり中々に綺麗な所だった。


「すごい所だな、よくこんな所のチケットを手に入れれたな、高かったんじゃないのか?」


「ん? いや私は一円も払ってないよ、叔父にワガママをいったわけではないんだが、私が良い子にしているという事でプレゼントしてもらったのだよ。」


「うん、お前の言い方からして確実に無理をいったのはわかったよ。

 でもなんでワガママをいってまでここに来たかったんだ? いつもならそこらへんの居酒屋かファーストフードで済ますのに。」

 

 彼女が何かを話そうとした時、呼び鈴が室内に響き渡る、すると奥の調理場から数人のウェイターが現れ各テーブルに料理が運ばれる、その料理はどれも綺麗に並べており、数万はくだらないだろうな。


「おっきたきた。ほら見てみなよジン、どうやら今日の料理はイギリス料理みたいだぞ、これはいい一度食べてみたかったのだよ。」


「こんな所で言うのもなんだが、大抵よその国の料理を違う国で作ってだ場合、その国の人の舌に合うように作られてることが多いから本場の味とはまた違うようだぞ、まぁ詳しくはないけど。」


「全く君は無駄な所に知識が偏っているんだな、そんなことは重要なことではないんだよワトジン君、こうゆう物は美味しいかとか、本物と味が違うなとか、そんな些細なものはいらないんだよ、ただ雰囲気が良く、誰と食べれているのかがとても重要なのだよ。」


 と彼女が満足げにいいこと言った感を出しているが、僕にはスーツを着させておいて自分は私服の奴に雰囲気の話はされたくないものだな。


「ほう雰囲気が大事かか、よく言うよ全く、そんな私服で来ている人物に、何が雰囲気なんかを語られたくないね。

 あと人を変なアダ名で呼ぶな。」


「んっ?服装がどうかだって?よく周りを見てみなよジン、この場所で正装でいるのは君だけだぞ?」


 彼女に言われ周りを見渡すと……周りは確かに綺麗な服装の人達が多いが、僕みたいにガッチリスーツで来てるのはいない、いやむしろ僕だけがスーツを着てしまっている為一番浮いている。

 何故僕はこんなに真面目にネクタイまで閉めてスーツを着こなしてしまっているのだ……全くやってられるかよ、綺麗に締めていたネクタイをとり、胸元のボタンを二つ取った。


「おやおや全く、そんなにムクれないでくれよ、ほらこのおいしいフィッシュ&チップスをあげよう。」


「ホント僕の睡眠を邪魔しただけでなく、飯に誘ったと思えば人を笑い者にするなんて、とんでもないやつだよお前は。」


 不機嫌になりながら僕は彼女の皿からフィッシュ&チップスを貰った。


「そういえば、まだ君の質問に答えてあげてなかったね。実はここに来たのは料理を食べたかったのも一つの理由なのだが、もう一つはやはり仕事の事なのだよ。」


 はぁ、やはりこの流れか、まぁ彼女がなんにもなく、こんな高級な所に連れてくるはずないか。


「やはり仕事の話か、で次は何をさせるんだ。またヤがつく職業の人達の所から書類をとってこいとかだったらお断りだぞ。」


 彼女が僕に頼む仕事は色々あるのだが、どれも普通ではないものばかりで、一度だけ彼女の依頼で書類をもってこさせられた事があったのだが、あと一歩間違えていれば、今頃どこかの海で魚の餌になっていただろう。


「アハハハハ、そういうこともあったね〜、大丈夫だよジン、今回の仕事は探偵関係じゃないからさ、まぁ仕事といってもまだ決まってなくて、この後私の所に叔父から依頼されてくるんだけどね。」


「はっ?斎賀さんから依頼がくるって……もしかしてここの支払いが依頼料とかいうんじゃないだろうな?」


「おやおや、私の助手であるワトジン君は変な所で疑り深い、大丈夫だよ、ここの支払いは依頼とは関係ないから安心したまえ、まあ今回はこの私もまだ本当に事件が起こるかの確証がなくてね、現在は憶測でしか動いてないからね。」


「憶測で動いているって、全く何をそんなに嬉しそうにしているのはお前は、あとそのふざけたアダ名をやめろ、何だよワトジンってシャーロック・ホームズにでもなりきってるつもりかい。」


「ちょうど目の前にイギリス料理が出てきてるから雰囲気は完璧だよ、それに私の頭脳はシャーロックにひけをとらず、地元では詠歌町が生んだ現代のシャーロック・ホームズと言われているからね。」


 一段と調子にのってきた所で、彼女はちょっとだけ真剣な眼差しになり、周りの雑音の為か少々聞き取りづらい声で、彼女はこう囁いた。


「今日この場で……女性が殺される」


 僕はその小さくて重い言葉をかろうじて聴き取る。


「それはどうゆう……」


 言葉を遮る様に、指揮者が指を鳴らし音楽が始まり、中央に歌手であろう女性達が集まってきた。

 

「さぁ! 紳士淑女の皆様、今宵もこの時間がやってきました! 皆様に素敵な音楽と食事のおもてなしをさしていただきます!」


 そう指揮者が言い終わると同時に歌が始まる。

 さっきの彼女の言葉が頭から離れなくてそれどころじゃない、と思っていた矢先に、その歌は……とても……綺麗だった。

 10人の女性が綺麗な歌声を響かせ、まさしくこの場の全員を魅了しているのではないか、そう感じるほどの歌声だった。

 だがそんな感じで歌を聴いて心地よい気分の僕に彼女が小言で僕に話しかけてきた。


「歌声が綺麗すぎて気持ちよくなっている所悪いのだが、そろそろ何かしらの騒ぎが起こるかもしれないから、周りを見渡してくれないかな?」


 と彼女は話しかけてきた、騒ぎが起こる? どうゆうことだと考えていた所、歌が始まる前に彼女に言われた事を思い出す。

彼女の言葉が本当なら一大事なのだが、本当にそんな事が起こるのか? それでも彼女の言葉どおり僕は周りを見渡した。

 ……やはり何もおきていない、それもそのはずだこんな所でいきなり人が死ぬなんてありえないことだ、彼女を無視する形で、歌に集中しようと中央をみる。

そこで初めてある異変に気付く……十人いる歌手の内二人の女性は、歌うのをやめ、顔は青ざめ何かに怯えている様に震えているのが分かった。

 何を恐れているのだ? すぐさま女性達が見ている方向を見る。

しかしそこには何もおかしな所はなく、テーブルとそこに座っている男性客がおり、口からワインを零してしまったのか、服が少し濡れているぐらいで特に青ざめる様な事はない……なら女性達はなにを見てしまったのだ、と考えているうちに、彼女は驚く。


「あれ? おかしいぞ? どうしたものかなジン、どうやら私の推理が外れてしまったようだ。」


 と彼女が周りに気を使わず話した後、いきなり席を立ち手袋をはめながら男性客の方に近づいていった、それに気づいた他の客が彼女に注目をし始めた。


「はーい、皆さんお静かに、まずは至福の時間を邪魔して済まないけどとりあえず騒がず席に座っててくれないかな。」


 と彼女が男性に近づいた所店の人が来て彼女に注意をする。


「お客様、どうか他のお客様にご迷惑になりますので歌の邪魔をせずお席にお戻りください。」


「おっ 丁度いい所に来たね、君済まないが警察に通報してくれないかな、死人が出たと。」


「はい?お客様なにを……え?」


 と従業員は話すのをやめ、その男性を見ていた。

何を言っているだアイツはと、彼女を連れ戻す為に近づく。

彼女の腕を掴もうとしたその時、背筋が凍りつく、遠くからではあまりわからなかったが確かにその男性は死んでいた。

 男性の瞳孔が完全に開きながら、ピクリとも動かず、服に付いていたのはワインではなく、男性の口から滴り落ちる血だったのだ。

口から血を出しているにも関わらず、目立った外傷は特に見られなかった。


「外傷はない所から見て、死因は毒殺か?」


「いや残念ながら違う、この男性はどうやら体を貫かれて殺されたようだ、しかもかなり鋭利なものでね。」


「貫かれただって? ………いやどこにも外傷は見えないんだが?」


「フフフジン、よく見たまえ、この遺体の中心部に丸い穴が開いているだろ、この位置を覚えて反対側を見てくれ、同じような位置に少し大きな穴があるのが分かるだろ、この男性は背中から何かで刺され亡くなられたんだ。」


 と彼女が説明すると、身体の反対側を見るとそこには正面よりも少し大きいぐらいの穴が開いており、そこから血が流れ出ていた、どうやらこの男性は刺されて死んだみたいだ。

 すると彼女は次に従業員用のドアの方を向いた。


「ジン、私の推理が正しければ犯人は今頃あの従業員用の通路で外に逃げ出しているかもしれないな、さて逃げられる前に追いかけるか。」


 おいまてと言いかけた所、彼女は足早に従業員用の通路に行ってしまった。

 周囲が男性や歌手の異変に気づきざわつき始める、このままではパニック陥った人達に巻き込まれてしまうかもしれない。

仕方がない彼女を追いかけて通路の方に向かうか。

 彼女を追いかけたが通路にはおらず、奥の非常口から外に出たのではないかと考え、外にでると彼女は何かを探しているのか、地面を注意深く見ていた。


「ん?おお、やっときたかジン、残念ながら犯人はすでにここを立ち去ってしまったかもしれないのだよ、素早いやつだよ全く。」


「立ち去ったのが分かるって事は足跡でも残ってるのか?だとしたら残念だけどその足跡は犯人ではなくて、この路地を通った誰かの可能性もあるぞ。」


「んん、その可能性に関しては既に推理が終わってる、足跡は多数存在するからそれで判断するのは困難だよ。」


「じゃあ何でお前は地面なんか見ているんだ?足跡が分からないんじゃ見る意味ないだろ。」


「んー、それもそうなんだがもしかしたらと思って、とあったあったやっぱりここに落としていっていたか、そらそうだよね、血のついた凶器なんか持ち歩いていたら犯人ですって言ってるようなものだからね。」


 と彼女は手袋をはめ、路地の端っこに落ちてあったものを拾い上げ袋に入れた。


「凶器だって?何でそんなもの落ちているんだ、普通は隠して持っておくべきだろ。」


「そうとも限らないよジン、犯人これを持ってると都合が悪かったのか、それともワザとここに落としたかもしれないさ、それか単純にいらなくなったから捨てたかかな? まぁだいたいは前者だと思うけどね。」


 クルッと彼女は僕の方に向きちょっとだけ困った顔をしている、……まぁだいたい理由はわかる。


「自分の推理が外れたことにご不満でも?」


「んー、そうなんだよね、私的にはあそこで殺されるのは女性で、しかも歌手の誰かだと予想していたんだけどねー。」

「いやそこは残念そうにする所じゃないだろ、てか犯行が起こるかもしれないなら警察を呼んでおけよ。」


「いや、そこはその、あれだ、最初に言った通りあそこで犯行があるかの確証はなかったんだよ、ただ近いうちに声の美しい女性が死ぬ確率が高かっただけだったんだよ。

そんな事よりももっと重要な事がある、これを見てくれジン。」


 彼女は手に持っていた凶器の入った袋を見せる。

袋の中には長い棒の様な物が入っており形からしてアイスピックなのではないかと考えた。


「それじゃあワトジン君には、今からこの凶器がどうゆう物なのかをりかいしてもらうとするかな。

これは何だと思うかな?」


「どうゆう物ってそこら辺で買えるアイスピックか何かだろ、わざわざ僕が考えることでは……て何だこれは?」


 僕はその凶器にあることに気付いた、確かに形状はアイスピックに似て細く長く鋭いが、見るべき点はそこではなく、その凶器の持ち手の部分には木ではなく肉みたいなものが付いており、その凶器がなにを元に作られているのかが理解したくなかった。


「これは……この凶器は何なんだ。」


「どうやらこれは何かの生き物の肉体から作り出したものであり、この形状からみて人の指に近いものかな、そしてそこに特殊な加工を施し殺傷力を高めているね。」


殺傷力を上げているとかそういう問題ではない、最も注目するべき所はこんなものを作る奴がいることの方が問題だろ。


「こんな物作るなんて中々エグい事をするな、一体どんな奴なんだよ。

……でほらさっさと喋りなよ、まだ僕に隠してることが沢山あるだろ。」


「ん、おやおや中々鋭いねぇ、何でまだ私が隠しているってわかったんだい。」


 彼女はいつも通りのニヤニヤ顔でそう問いかけてくる、こうゆう顔をしている時は大抵私はまだ色々と知ってることがありますよ、という時だホントめんどくさいな。


「いいからさっさと教えろよ、大体最初から全部話してたら良かったんだろ、事件が起きるとか、女性が死ぬとか、それは何かの確証があったからそういってるんだろ、まぁその考えは外れたけど。」


「むう、中々言うてくれるじゃないかジン、まぁしょうがない事の発端を一から話すよ……ん、ちょっと待てジンさっきから何か聞こえないか?」


「そうやってはぐらかすな、全くいつもいつもお前は僕を面倒事に巻き込んで、もし僕が怪我でもしたら……ん?」


 話すのを途中でやめ耳をすます、確かに何かがぶつかり合う音が聞こえる、その音は僕らがいる所よりも奥の方から聞こえ、何の音だと思いながら恐る恐る音のする方に近寄る、すると音ははっきりと聞こえるようになってきて人影も見えてきた。

 どうやら男性2人が話しているだけだったみたいだ。


「何だ、ただ普通に話してるだけじゃないか、驚かすなよ全く。」


「よく見て、よく聞きいたほうがいいよジン、そして注意深くあの闇の中にいる生き物がこちらに攻撃してこないか警戒して後ろに下がるんだよ。」


「なにを……」


 目が次第に暗闇に慣れ奥にある三つの人影が見えてきた、最初はどこも変な所はないと思っていた。

僕に近い所に二人並んでおり、奥の方の人を見ていた。

ただここで一つ気付く、よく見ると奥の一人の足元らしき場所にもう一人、人が倒れていたのだ。

 すると暗闇が月の明かりに照らし出され、その場にある全てのものが確認できた。

二人の人物は特に異常はないが、奥の人物は違った。全身を黒い布で覆っておりそいつは普通に立っているものだと思っていたが違う、そいつは立っているのではなく、頭だと思っていたのは背骨であり、そいつの頭は地面に倒れている人の内臓あたりに噛みつき周りに血を撒き散らしながらその人物を食べていた。

時折口らしきものが見えるが歯はとても鋭利で、あれでは人の体など容易く引きちぎられてしまうだろう。この生き物は一体なんなんだ? 何のためにここにいる? 何が目的なんだ? いや そもそも何故こんな所にいるだ? と考えていると僕を呼ぶ声が聞こえる。


「ジン……おいジン?……聞いているのかい緑化 侭りょっか じん!!」


 と彼女の声に僕は気付いた、周りにいた二人の人影はなくなっており、どうやら長い間考え込んでしまっていたようだ。


「すまない、考え方をしていたあれは何なんだ?」


「考えごとをするなんて結構余裕だなぁ君は、あれが何なのかは分からないが、取り敢えずヤバいものだということだけはわかる。

で深く考えていた様だが何かいい方法でもでてきたのかな?」


「残念ながらなにも浮かばないよ、それにあれは普通の人が相手をしていいレベルではないようだから後ろに下がるよ。」


「あらあらそれは残念だね、まぁそういう時もあるよ、それじゃあ君は後ろに下がっててね。」


 そう言い終わると彼女は近くにあった鉄パイプを持ち構える、本来ならここは男の僕が前に出て彼女を守らないといけないと思われるが、そうゆうことは僕はしない。

何故なら僕よりも彼女の方が圧倒的に強いからだ、昔不良の集団に囲まれていた彼女を助けようとして不良共々ぶちのめされたという苦い経験がある。

ゆっくりと彼女は間合いを詰めていき自分の攻撃が当たり、相手の攻撃をすぐさま避けれる距離まで接近していく、そして僕もまた彼女の巻き添えを食わないようにゆっくりと後ろに下がっていく、彼女がもう少しで黒布に鉄パイプを振りかぶろうとした次の瞬間……


「動くな!!!お前達!!!」


「わっ!?!? えっ!ちょ!うわっ!?」


 この緊迫とした空気の中で、後ろから突然聞こえた大声に、かなり動揺してしまいその場でゴミ箱に足をつまずき見事に転んでしまった、そして僕が転んだことに対して彼女はかなり動揺してしまいそいつから目を離してしまった。

 次の瞬間そいつは壁を凄い速さで駆け上がりものの数秒でいなくなってしまった。


「はぁ、そこの警官さんいきなり大声を上げるなんてどうかしているよ、あいつを逃してしまったじゃないか、あとジンなんで君はそんなギャグ漫画なみに面白いこけ方をしているのかな。」


「だれだってあの緊張感のなか、いきなり後ろから大声を出されたらこうなるだろうが。」


 ゆっくりと一回転をしながら起き上がる、我ながら恥ずかしい目にあった。


「お前達動くなという言葉が理解出来ないのか!お前達を署に連行する、大人しく投降しろ!!」


 と警官は銃を構えながらこちらに言い放った、僕と彼女は二人で顔を見合った後、仕方ないかと大人しく警官に逮捕されてしまった。

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