第3夜 DRAMATICでDRASTIC!第3話 金太郎とミホーク

「さーて! そろそろ行くかー!」


 モテモテの水原が松田の肩を叩くと、里奈へテーブルチェックのサインを送る。

 サインを送られた里奈は、残念そうな顔で視線を返す。


「え~、もう帰っちゃうんですか~♡」

「明日もゴルフだから朝早いんだよ。なあ、ヒデ!」

「そうなんだよ。里奈ちゃん、タクシー呼んでもらってもいいかな」

「1台? 2台?」

「一緒に帰るから1台でいいよ」

「わかったわ。ママー! 水原部長、お帰りで~す!」


 里奈がそう呼ぶと、カウンター奥からこの店のママらしき女性が登場。カウンターの奥から獣のように目を光らせていたのはこの彼女であろうか。

 どうやら、というより、当然のことだが“鷹の目”ではなかった。


 このママと思われる女性は不細工なわけではないが、どことなく日本のおとぎ話に出てくるような雰囲気で鉞が似合いそうに思える。


「俺も1台呼んでもらおうかなー」

その姿を確認した常松は、思わず本音を口にした。


「ちょっと、ちょっと、常松さん、まだ来たばかりなのに何を言い出すんですか!」

「いや、ちょっと言ってみただけだって!」


「あ~ら、水原部長、もうお帰りになっちゃうのかしら!」ママは、なんだか凄味のある口調で水原を凝視する。


 それはもう、なんだかマーティ(※1)の親父を見るビフ(※2)のような目力で睨みまくっちゃっている。

   ※1・・・バックトゥなんとかに出てくる主人公の父親

   ※2・・・バックトゥなんとかに出てくるいじめっ子


 いったい、この部長が何をしたというのだろうか?

 その睨み攻撃にいたたまれなくなった水原が口をひらいた。


「いや~、明日はゴルフで朝早いんだよー。なっ! ヒデ!」

「部長、さっきとまったく同じセリフですよ」

「そうだったか? ガッハッハッハッハ! おーい、お前からもママに何か言ってくれよ」


 焦り気味の水原に言われた松田は恐る恐る口を開いた。

「あっ・・・ママ・・・今日もまた一段と美しいですよね」


(おいおい、わざとらしいセリフだなー。ママが怒るぞ)


「あ~ら♡ ヒデキちゃん(松田)、あなたに言われると〜♡ たとえ嘘でもうれしいわー♡」


 どうやら、ママは松田にホの字のようだ。


 ママの顔が若干緩み、気持ちニコやかになった表情を見知ってか、よせばいいのに辻野が口をはさむ。

「本当だ! ママは、今日もキレイだよねー!」


「なにぃーーー!! テメエ、なに調子こいてんだぁ! 嘘ばっかこいてんじゃねえぞ!そんなことはわかってんだよ!」


「!!!!!」辻野は、恐怖のあまり顔面が引き攣り声が出ない状態だ。


 よく考えればわかることなのだが、松田はイケメンで辻野はイケメンではないのである。これは完全に辻野の失策である。


(うわぁーーー! 大魔神が降臨しちゃったよぉーーー)


 震え上がる常松と辻野。ふと横を見ると、松田も恐怖に飲まれた状態のようだ。カウンターの空気は凍りついたように張り詰めている。一体、この状況をどう取り繕うつもりなのかと隣の空気の読めない後輩に問い正したくなる。


 そんな空気を変えようとしたのか、里奈が口を開く。

「ごめんなさいね~。うちのママったらお世辞とか嘘が大嫌いだから。辻野さんは、いつもママのこと“金太郎にクリソツ”とか“金太郎そのもの”とか言ってるのバレてるから~」


「ええーー! バレてるの!! ホントにーーーー! ヤバいよそれは」


 金太郎に似てるというよりも、すっかり鬼神の形相になったママは、辻野に攻撃照準をしぼりこんだようだ!


「お前がいつも言ってることは筒抜けなんだよ!」荒々しいセリフが辻野に突き刺さる。


 辻野は一世一代の大ピンチのような焦燥感を感じていた。


 と、その時、店の扉が開いた。


「お待ちどうさまです! タクシーでーす」


 間一髪のところをタクシー運転手のファインプレーに助けられたのであった。


 しかしいったんは、タクシーに助けられたものの、ママのお気に入りの松田が帰ってしまったら、この先の展開はどうなってしまうのだろうか?


 果たして、辻野の運命やいかに!


この先、スナックミホークに血の雨が降るのだろうか!?

それとも、思いもよらぬバラ色の展開が待ち受けるのであろうか!?


次回、ついにミホークのママの名前があきらかになる!


あーーっ!

・・・・・そういえば、スナック不二子のママの名は?

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