第19話「酒米豊作」

ある村で酒米が過去最高の豊作となった。

そのままだと豊作貧乏となってしまうので大量に廃棄してしまおうかと話し合われたが、ちょうど寺に大金の寄進がされたのでその金でいらない酒米を買い取り、寺の者が炊いて食べることにした。

「ちょうどいい機会なのでこの話をしよう」

食事中に住職が切り出した。

「仏教で酒のことを般若湯(はんにゃとう)という隠語で呼ぶことがある。飲酒の言い訳に使うんだ。歌の名前にもなったな」

「なるほど」

「正直に言って先日いただいた金を持て余していたので良かったよ。これも仏さまの思し召しだろう」

そう言うと住職は静かに箸を動かした。

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