お祖母ちゃんはどんな人?
惟風
母の話
お祖母ちゃんの話が聞きたいの?
何よ急に。別に良いけど。
お祖母ちゃんが死んだ当時、アンタはまだ五歳だからあんまり覚えてなくて当たり前か。オバアちゃんって言っても五十代後半だったから、オバちゃんってイメージが強いわね。明るくて豪快で、典型的な陽気なオバちゃん。
料理が得意な人でね、私も色々教えてもらったわよ。アンタの好きなハンバーグのソースのレシピも、あの人の直伝なの。カラシをちょっとだけ入れるのがポイントなのよね。
初めて私の手料理を食べた時に「全然ダメこんなの!」って笑いながら言われたの覚えてるわ。良くも悪くもストレートに物を言う人だったからねえ。ズバッと言って、「冗談よ」って笑うの。
その時は私もまだ若かったからすごくショックで、この人が姑になるんだったらやってけないかも……って落ち込んだわ。
でも後になってお父さんから聞いたんだけど、そのダメ出しの件があったから「これは私が姑としてちゃんと仕込んであげなきゃ!」って意気込んだらしいのよね。
情に厚くて面倒見の良いあの人らしい考えだなあって、今となっては思うわ。
そりゃあもうビシバシ鍛えられたわよ。
お父さんと結婚してから本当にアレコレお世話してくれてね。お姉ちゃんやアンタが生まれた時も毎日のように家に来て、私達の面倒見てくれたの。
え、死んだ日のこと?
……うーん、あんまり思い出したくないんだけど……。
あの日は二月の風が強くて寒い土曜日でね。夕方にお姉ちゃんがいきなり吐いちゃって。立て続けに何回もよ。
小学校に上がってから風邪一つひいたことなかったから、私もパニックになって、救急病院に連れてくことにしたの。そんな日に限ってお父さんは出張中だったから、慌ててお義母さんに電話してアンタの子守りに来てもらったの覚えてるわ。結果的にはお姉ちゃん胃腸炎で、症状がちょっとひどいから念の為一晩入院しましょうってことになったのね。
それで……まあ、要は、留守番中に泥酔しちゃったみたいなのよね。アンタを寝かしつけてから一人で一杯やって。飲みすぎて、ベランダに涼みにでて寝ちゃって。そのまま……いわゆる凍死だったんだって。
翌朝に私達が帰って来たときには……冷たくなってた。
お酒が好きな人だったからね。毎日のように飲んでたんじゃなかったかな。
飲んだらますますよく喋る人だったわ。いつも以上に大きな声でさ。
当時のことが、アンタの記憶に残ってないのが幸いね。
ああ、職場にお祖母ちゃんみたいな性格の人がいるのね。それでお祖母ちゃんのことを聞きたくなったの。それは……ちょっと苦労しそうね。
もういなくなった?
そう、それなら良かったわね。しごかれるのはやっぱり嫌なものだもの。
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