福島少年団 ~霊界録~

若狭兎

第霊話 福島屋

 時は現代日本。


 いくさというものが人々とは程遠いものとなりつつある、平和で安定した時代が続いていた。しかし、そんな世界の裏側で、何かがうごめくようにひっそりと、そして確実に暗い影を忍び寄らせていた。


 始まりは何の変哲もない町、若浦わかうら町から始まる。自然が豊かで、海が見え、暮らす人々には素朴そぼくな優しさのある、そんな町であった。

 その若浦町にいつの頃からか存在している店に『福島堂ふくしまどう』というのがある。表向きには薬類くすりるいを販売している個人経営のお店なのだが、売られている商品がどれもこれも怪しげで、店内も気味が悪いともっぱらの噂である。だが、薬の効能と言えば天下一品! どんな傷や痛みもたちまち回復に向かうというもの。それはこの町に住む祖父母世代から親世代へ、親から子へと言い伝えられていた。


 そして、この町に言い伝わるいにしえのお話がもう一つ。


 人々が霊現象に苦しめられるとき、霊刀を持った者がこの地より生まれ、災厄をぎ払うというものであった。


 

 そんな若浦町で、ある平凡な高校生たちが福島屋と関わることになり、予想だにしない大きな戦いへ身を投じることになるとは……今は誰も知る由もなかった。

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