お天気組!
maise
能力少女、晴雨!
晴雨目線
こんにちは! 私の名前は晴雨、雷雪晴雨(らいせつ せいう)よ! 小学六年生! 一人っ子です!
実はね…、私、ふつうの女の子じゃないのです! とある能力の持ち主なの! それはね、私は、天気によって、性格が変わるの! みんなも同じだって? それがね、違うんだよ。私も初めはみんなと同じで、ただ天気によって気分が変わっているだけだとも思ったよ。でも、違うの。私でも抑えられないの。
たとえばね、雨の日に作文コンクールに受かったとするよ。でも、その日は、全然喜べないの。ほんとに。私はね、喜びたいんだよ。でも、その日はなぜか喜べないの。
なんでかなって、考えて考えて、考えても分からなかった。病院にも行ったよ。でも、どの病院も、『わかりません。』の一言。雨の日に行った病院では、その言葉を聞いて、大泣きしちゃった。ふふっ。
大体のことは分かったかな? あ、あと、この能力に気づいたのは、確か…、小学二年生の時だったかな? お母さんに、『晴雨って、天気によって性格が変わるのよね。』と言われたのがきっかけだったかな。このくらいでわかったかな。もう気付いている人もいると思うけど、今は晴れだよ。
「晴雨、ごはんよ。」
あ、お母さんが呼んでる。
「はーい!」
今日のご飯は何かな。楽しみだなっ。
下に着いたら、お皿に卵のサンドイッチが乗っていた。やった! 卵大好き!
「さっさと食べちゃいなさい。」
言われなくても食べますよっ。
「いただきまーす!」
サンドイッチにかぶりつく。んー、おいしいっ。あ、テレビテレビ。私にとって、ニュースはチェックしなきゃいけないランキング第一位だからな。ポチっと。
『今日は、全国晴れとなるでしょう。よい一日をお過ごしください。』
よし、晴れだ。やった。今日はいい日になりそっ!
「いつまで食べてるのー、遅刻するわよ。」
いっけない! 私は急いで食べ、制服に着替えて、かばんを持って、
「行ってきまーす!」
と言って、家を出た。
「はあっ、はあっ。」
学校までの道を駆け抜ける。私の言っている小学校は、歩いていける距離だし、坂道はないけど、少し遠い。そして、学校の通学路の近くにある三年公園は、心霊スポットとして人気だから、結構な人がいる。だから混んでる時はもう本当にたっくさんの人がいるんだ。
この辺にはいろんな都市伝説があるんだ。うちの学校にもあるよ! 校舎の間野さんと、はぐくみばやしの三人っていうんだ。
「はあ、はあ、はあ…。間に合った。やったー!」
校門が見えた! 走って下駄箱まで行き、上履きに履き替えた。そして、三階まで急いで登り、『六年一組』
と書かれた教室に入る。そのとたん、
キーンコーンカーンコーン…カーンコーンキーンコーン…。
と聞こえた。間に合ったぁー。とりあえず席に着こう。私が席に着こうとすると、
「せーいーうー。」
「ひいいっ!」
びくっとして振り返ると、沢凪晴太(さわなぎ せいた)君がいた。晴太君は、かっこいいけど、少しやんちゃなところがある。クラスのムードメーカで、かっこいいモテる子でもあるんだ。私に仲良くしてくれている人の一人だよ!
「あ、晴太君、おはようっ。」
なんであんな声で私の名前を呼んだんだろう。すると、晴太君は、いきなり怒り出した。
「おはようじゃないだろっ! 日直の仕事、今日は晴雨だろ。」
あ、そうだった。
「あ、ごめん。」
とあやまって、黒板に向かったが、後ろから晴太君が、
「もうやったぞ。あまりにも遅いから。」
と言った。あ、そうだったんだ、ごめん…。
「さー、席に座って。」
先生の声が聞こえた。私は慌てて席に着く。他の子も、自分の席に座っていく。いつもは遅い先生が、なんで今日は早いんだろう。
「さあ、今日は、みんなに転校生を紹介する。さ、おいで。みんな拍手を。」
転校生? どんな子だろう?
入ってきた子は、とてもきれいな髪をした、肌の白い女の子だった。その子は、恥ずかしそうにしながら、きれいな声で、
「中村雪菜です。これからよろしくお願いします。」
と言った。雪菜? あの子と仲良くできるかも! いつも私の友達は、天気の漢字が入ってるから。先生が黒板に、『中村雪菜』と書いて、
「みんな仲良くしてあげるように。」
と言った。そして、雪菜ちゃんと何か話すと、空いていた席に座っていった。私の席の後ろだ。みんなが雪菜ちゃんを目で追って、席に座ってもずっと見ていた。
雪菜ちゃんかあ…。仲良くできるといいな。
「私、晴雨。よろしくねっ!」
やっぱり第一印象は大事だよね。今日が晴れでよかったぁ。多分、明るい子だっていう印象が着いたと思う。雪菜ちゃんは、私の方を見て、
「よ、よろしくお願いします…。」
と言った。あまり使われない丁寧語がなんかむずむずして、
「普通に話そう! もうとも…クラスメイトなんだからさ。」
と言ってしまった。雪菜ちゃんは、みるみる頬が赤くなり、縮こまってしまった。なんか悪いことしたかなぁ。
「はい、前を向いて。まず、みんなで自己紹介をするよ。中村、好きなところにいていいぞ。まずは…天野。天野から出席番号順に言っていくぞ。」
先生が言った。天野…天野雨海(あまの うみ)ちゃんが、席を立ち、前に出た。雨海ちゃんは、おとなしくて、少し怖がりな女の子。私と仲良くしてくれる子の一人だよ。
「天野雨海です…。雪菜ちゃん、よろしくね。」
雨海ちゃんが言うと、雪菜ちゃんは軽くお辞儀をした。雨海ちゃんが席に戻ると、次に晴太君が出た。ここの学校は、人数が一クラスに十五人しかいないの。でも、仲良しグループになろうにも人数が少なくてなりにくいし、男女一緒に遊べて、いじめも起きにくくて、私はいい人数だと思う。他の子はどう思っているかわからないけど…。
「沢凪晴太です。雪菜、これからいっぱい遊ぼうなっ。」
晴太君が自己紹介すると、その勢いに、雪菜ちゃんが少しびくっとした。もう、晴太君ったら。
「晴太君、雪菜ちゃん、ビビってるよー!」
晴太君に向かって叫んでやった。
「あ…ごめん。」
晴太くんは、気まずそうに雪菜ちゃんに向かってあやまった。雪菜ちゃんは、
「い、いえ、とんでもないです…。」
と、おどおどして言った。あれ、これ困らせたの私じゃない?
「はい、次、田村。」
先生の声が聞こえた。晴太君は顔を真っ赤にしながら、席へ戻っていった。雪菜ちゃんは、悪いことをしたかのようにうつむいていた。なんか、罪悪感があるんだけど…。
「田村風香です。」
真っ赤になってる晴太君を見ていたみんなは、風香ちゃんの言葉で、みんな風香ちゃんの方を向いた。田村風香(たむら ふうか)ちゃんも、仲良くしてくれる子のひとり。風香ちゃんは、何でもさらっと言える子だ。ときどき、その性格のせいで空気が読めない時がある。普段なら、そこはちょっと…。って思うところだけど、ナイス! この空気を破ってくれて!
風香ちゃんは、雪菜ちゃんの方をちらっと見て、さっと席に戻っていった。
そのあとも、みんなが自己紹介をしていった。私と仲良くしてくれる子は、さっきの三人をのぞいて、あと一人いる。その子が…。
「浜木雷。」
浜木雷(はまぎ らい)君。この子はおこりっぽけど、本当は優しいの。みんなからはあまり人気じゃないんだ。少し暴れん坊なところがあるからなのかな? 私はそれはそれでいいと思うけどな…。
これで仲良くしてくれる人は全員。みんななぜか、天気のどれかが名前についてるから、周りからは、お天気組って言われてるんだ。
あ、こう言ってる間に、私の番が来てた! 私は一番最後なんだ。自己紹介の時は…。
苗字が「ら」で、出席番号が一番最後っていうのもあるけど、あの能力について、言わなくちゃいけないから。なんか最後って、リレーのアンカーになれたみたいでいいよね! 私は、席から立ちあがり、黒板の前に立ち、
「雷雪晴雨です! 私には不思議な能力があります。私は、天気によって性格が変わります! 今は晴れだから明るめだけど、雨の日は暗い性格になり、雷の時は大変なことになります。迷惑かもしれないけれど、仲良くしてください!」
と言った。あれ? なんかまるで私が転校してきたみたいじゃん。まあ、いっか。
「よし。全員終わったな。では、授業を始める。中村は、雷雪に、大体のところを教えてもらえ。さあ、国語だ。教科書の六十五ページを開いて。」
先生が言うと、みんな国語の教科書を取り出し、開いた。私は、教科書を開いて、雪菜ちゃんのところまで椅子を持っていき、雪菜ちゃんの方を見た。雪菜ちゃんは、きれいな動作で教科書を開いた。そして、私の方を見た。
うわあ、きれい…こういうなんか少女漫画に出てくるような女の子って、本当にいたんだ…。
あ、いけない、説明説明。
「あのね、今は、ここまでの主人公の気持ちを考えていて、今回は、ここを発表するの。」
私は教科書を見ながら説明した……つもりだった。
雪菜ちゃんの方を向いていて、まったく違うところをさしていたみたいだった。雪菜ちゃんは、私の言っていることがよく分からなかったのだろう。首をかしげて不思議そうにしている。やっちゃったぁ。
「あ、これはここじゃなくてここだよ。今日はここを発表するの。」
今度は落ち着いて言えた。雪菜ちゃんも納得したみたい。よかった。
私がほっとしていると、近くの席だった晴太君が、小さな声で、
「晴雨、お前、雪菜ちゃんに恋しちゃったんじゃないか?」
と言ってきた。こ、恋⁉ そんなわけないじゃない!
「雪菜ちゃん、可愛いもんなぁ~?」
晴太君がまだからかってくるので、言い返してやろう。と思ったら、
「沢凪、雷雪。説明が終わったなら元の席に戻れ。」
先生が言った。言ってきたのは晴太君なのに…。
それから、国語が終わり、算数が終わり、休み時間になった。
「晴雨~、あそぼーぜ!」
晴太君が言った。今日は晴れてるし、遊ぶっかなぁ~。
「うん! 外いこ! 雷君も遊ぼ! 風香ちゃんも、雨海ちゃんも!」
「おう。」
「行く。」
「先に行ってて。本返したら行く。」
三人が賛成した。晴れの日の休み時間は、いつも同じ会話が流れる。あ、雪菜ちゃんも行くかな?
「雪菜ちゃんも来る?」
私がさそうと、雪菜ちゃんは困ったような顔をして、
「あ、ええっと…。私は、その…。」
と、迷っていた。何かあるのかな?
私はそう思い、
「何かあるならいいけど。それとも一人の方が好き?」
と言った。雪菜ちゃんは、ますます困った顔をして、
「私は…。」
と言った。その様子に耐えられなくなったのか、雷君が、
「なあ、来るなら来る、いやならいやって、どっちかにしろよ。」
と言った。
そんなに怒らなくても…。雪菜ちゃんが、怖がっちゃう。
「雷君っ。」
「雷、そんないい方しなくてもいいだろ!」
雨海ちゃんと晴太君が止めるが、雷君は止まらない。
「おれ、こういうどっちか決まらないやつが嫌いなんだよ!」
雷君はそう言うと、
「オレ、今日パス。」
といって、教室を出て行ってしまった。あーあ。怒りっぽい性格がここにきて悪い方向に使っちゃったよー。とりあえず、雪菜ちゃんにいろいろ言わないと。
「雪菜ちゃ…。」
「ごめんなさいっ。」
雪菜ちゃんも、どこかに行ってしまった。
「なあ、今日はやめようか。」
晴太君が言った。
「私も…その方がいいと思う。」
雨海ちゃんも賛成する。風香ちゃんは、
「雷が悪い。私、雷を探してくる。」
と言って、雷君の後を追っていった。実は、あの雷君にはっきりと言いたいこと伝えられるのは、風香ちゃんだけだ。任せよう! 私は、雪菜ちゃんを探そう。
「私、雪菜ちゃんを探すね。」
私が言うと、
「私も行く。」
雨海ちゃんが言った。二人なら心強い!
「オレは教室にいるよ。」
と言って、自分の席に戻った。私と雨海ちゃんは、教室を出て、雪菜ちゃんを探し始めた。
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