第18話

千優と銀花は、ついに15層に到達し、1級探索者としての称号を手に入れた。いつも通り、今日もダンジョンセンターへ足を運ぶと、異様な雰囲気が漂っていることに気づく。センター内の探索者たちは重苦しい空気に包まれ、何か大きな事件が起きていることを察した二人は、受付に急いだ。


「何が起きている?」銀花が焦りながら受付に問いただすと、受付の女性は顔を曇らせ、深刻な表情で説明を始める。


「今朝、ダンジョンの奥深くで大量のイレギュラーが発見されました。その数は尋常ではなく、すでに地上への進行が始まっているとの報告がありました。スタンピードの可能性が非常に高く、全探索者に招集がかかる予定です。」


その言葉に千優と銀花は息を呑んだ。彼らの中に広がる不安は、次第に現実のものとなっていく。


「このままだと…街が危険。」銀花がかすかな声で呟く。


「銀花、僕たちも準備をしよう。」


準備をして防衛陣の指揮官のもとへと向かった二人は、イレギュラーの大群がどれだけ危険であるかを再確認する。指揮官は戦術を説明し、二人に最前線での役割を任せた。


「これって、もしかしてあいつのせいか?」千優は真剣な眼差しで彼女に問いかけた。


「ああ、その可能性が高いわね。」銀花は冷静に応じた。


イレギュラーの到達まであとわずか。千優と銀花は、緊張と焦燥感に包まれながらも、迫り来る敵に立ち向かう覚悟を決めた。


ついにイレギュラーの大群が姿を現した。地平線の彼方から押し寄せる黒い波は、これまでに見たことのない規模だった。千優と銀花は前線に立ち、無限とも思える敵を迎え撃つ準備を整えた。


「こんな数…どうやって対処すればいいんだ…!」周囲の探索者たちからは不安の声が漏れ始める。


「恐れるな!私たちは一人じゃない。力を合わせてこの危機を乗り越えるんだ!」銀花は周囲を鼓舞し、士気を高める。


そして、彼女は素早く前線に飛び出し、剣を振るってイレギュラーを次々と斬り倒していく。


「銀花、右から来る!」千優が彼女に警告し、彼女は瞬時に対応して敵の攻撃を防ぐ。


しかし、イレギュラーの数は減るどころか、さらに増えていくように感じられた。その猛攻に、次第に防衛陣は圧され始め、仲間たちの悲鳴が聞こえ始める。


「これでは持ちこたえられない…!」千優が焦りながら言う。


すると銀花が後ろに少し下がって目を閉じ、集中する。


「やっぱりか…」銀花は顔を歪めて呟く。


「何かわかったのか?」千優が尋ねる。


「ああ、こいつらを倒しても竜魂が回収されないし、なのに竜魂の匂いがすると思ったらダンジョンの奥で強い竜魂の気配がする。おそらく本体がいるんだと思う。」


「本体か…それを見つけて、倒すしかないってことか。」千優は銀花の言葉に同意し、二人はダンジョンの奥へ進む決意を固めた。

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