第3話

「大西ー!空なんか眺めてる場合か!」

誰かの怒鳴り声が聞こえてきた。

俊一郎は返事せず自分の仕事をつづけた。

きつい、という言葉さえも、のどをつかえて口に出せない。言ったところでどうにもならない。誰がそんな戯言聞いてくれるか。みな同じことを考えているのはわかってる。自分一人だけそんなことを言ったところで、この一連の動きはおさまらない。ただ、もくもくと仕事をつづけるしかない。

雪が降ろうと、やりが降ろうと。しかし、そこに一帯感がうまれてくるのも確かだ。

みな、それぞれ思い思いのことは頭にあっても、きつい、というひと言だけは頭の中にある。深夜の工事現場とは、そういうものだ。

いや、もうそれを通り越して、それぞれが、それぞれの仕事に集中することで、それを忘れているようにも思える。ただ確かなものは、作業に集中しなければならない。

それだけだった。

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