冒険者編 東京支部 誰かのための物語
第46話 プロローグ
◆
◇東京支部
支部内では魔物の討伐の話で談笑してたり、いつもと同じように魔物討伐のクエストを受注する為の受付で冒険者達で溢れかえっていた。
ただ、受付の受注と言ってもここで冒険者達────主に男性冒険者の勝負は始まっている。
簡単に言ってしまうと美人受付嬢の取り合いだ。
受付と言っても担当者は何人かいる、大半が女性だかベテランのおばさんから〜若い女性の受付嬢がいる。
他にも男性の受付もいるがあまり人気が無い為割愛。
女性だってそうだと思うが誰だって受付をしてもらうんだったら美男・美女にやってもらいた物だ。それも歳若い人に。
なので男性の冒険者達は我先にとお目当の美人受付嬢の所に向かい、クエストを受注又は少しでも話せたら御の字と思い並んでいる。
中には告白をする猛者もいるが大抵が撃沈している。その理由は勿論タイプの男性では無いとかもあるかもしれないが一番の断る理由が────冒険者だからだ。
それは何故かと言われれば冒険者は儲かればかなりのお金を手に入れられる職業だがその分自分の命を賭けて戦っている為、もしかしたら付き合っても自分の元に帰ってこないかもしれないから冒険者と付き合うのはあまりオススメされていないからだ。
ただ、その中にも無謀者は跡を立たず────
「────穂花さん!前から良いなと思っていました!────俺と結婚を前提に付き合ってください!!」
一人の初心者装備を身に付けた男性冒険者が穂花と言う名の受付嬢に告白をした瞬間だった。
周りで聞いていた
『なんだなんだ?また瞬で撃沈する勇者が現れたか?』
『それもここ「東京支部」では一番人気の穂花ちゃんに告白をするとか────やるな』
『で?告白をした奴は誰なんだ?』
『あぁーー、確かアイツはこの前冒険者になったばかりの
『………あぁ、思い上がりさんか。まぁ若いうちはそんなもんだろ、どうなるか見るべ』
そんな事を他の冒険者達は面白そうに口々に話しているが誰も止めようとする奴はいない。冒険者も毎日ただ、魔物を倒すだけじゃ飽きてしまう。なので何か娯楽を求めている人が多い。
だから、面白そうな気配がするのに止める馬鹿などいないのだ。
中には「告白が成功するか失敗するか賭ける人〜!」などと馬鹿な事をやっている人まで出てくる始末だ。
そんな中、男性冒険者に公衆の面前で告白をされた人気受付嬢の穂花はと言うと────
「────ごめんなさい!今は誰とも付き合うつもりはないんです!!それに、少し気になる人もいますので………なので、この告白はお受け出来ません!!」
男性冒険者に頭を下げるとしっかりと自分は付き合えない事を伝えた。
「そ、そうですか。やっぱり気になる人って────アイツですか?」
告白を断られた男性冒険者は食い下がるでも無く、"気になる男性"という言葉に反応したようで聞いていた。
この男性冒険者もなんとなくはその人物が誰なのか察しているようだ。
「ま、まぁ、はい。────ただ!気になるだけで別に好きとかでは無くてですね!!」
そんな事を叫ぶ穂花だが、見ているこちらから言わせると────「そんな顔を真っ赤にして言われても説得力がない」という感じだった。
ただ、それも面白がってか穂花には誰一人指摘しない。
そんな穂花を目の前で見た男性冒険者は「そんな恋する乙女みたいな顔で言われたら諦めるしかないじゃないか」と、小声で呟くとクエスト受注をする事なく項垂れながらトボトボと外まで歩いて行ってしまった。
そんな玉砕した男性冒険者の話題より今、穂花の口から出た"思い人"の話で持ちきりだった。
『かっー!やっぱり穂花ちゃんもアイツ目当てか!まぁ、俺からして見てもカッコいいし雰囲気あるもんなアイツは!』
『だよなぁ、この「東京支部」でそれもルーキーで一番の人気を博しているのはアイツだろうな。1週間前に突如として彗星の様に現れて直ぐに「C」ランクまで冒険者ランクをあげちまった。それに実力は本物ってきたもんだ』
『だな!強さもあるけどあのクールな感じがなんかカッコいいんだよな!だからか穂花ちゃんも含めてここにいる受付嬢は全員アイツを狙ってるって噂だぜ?』
『はぁ、ああいう奴がモテるんだよな。それに妹の方も兄にべったりだが凄え美人だもんな。マジで羨ましいわ………』
『『『分かるわ、その気持ち!!』』』
そんな話を冒険者達で盛り上がっているとさっき穂花に玉砕された男性冒険者が出て行った協会の出口ら辺から少し騒めきが起きた。
ただ、その騒めきはもうここ1週間前からの恒例になっていたので他の冒険者達は何も言わずに背後を振り向いた。
そこには────
「お兄ちゃん!今日は何の魔物を討伐するの?」
「………あまり騒ぐなネロ。今日はそんなに危ない魔物は討伐をするつもりはない」
「とか言って強者と闘いたいくせに〜!」
「────否定はしないが」
熟練の冒険者風を醸し出す茶髪の2人の冒険者装備に身を包んだ美男・美少女が話しながら受付まで歩いてくる姿があった。
支部内の静けさ・視線など気にならないのか2人だけの世界を作るとお決まりの受付に2人は向かう。
「よっ!お二人さん。今日もイチャイチャを見せてくれるね〜!────で?今日は何を討伐するんだい?「サラマンダー」か?それとも「サイコロプス」?」
そんな事を言う"黒色のアフロ姿"に加えサングラスと言う奇妙な面持ちの男性の受付は、この2人に慣れているのか気さくに話しかける。
話しかけられた男性の方は少し苦い顔をして、女性の方はそのアフロの受付の男性の話をニコニコしながら楽しそうに聴いている。
「蔵さん!おはようございます!今日もお兄ちゃんと僕はイチャイチャしてます!!」
「そうか!それはいい事だ!」
「流石!話が分かるぅ〜!!」
「ネロ」と呼ばれた「妹」の方と蔵と呼ばれた男性受付はハイタッチをしていた。
それを間近で見た「兄」の方は────
「────お前達は朝から何を馬鹿な事をしているんだ。それにイチャイチャなどしていない。そもそも「サラマンダー」も「サイコロプス」も「A」ランクの魔物だろうが………」
そんな事を言うと呆れた様にため息を吐いていた。
そんな男性冒険者の態度を見ると慌てたように受付の男は首を振る。
「ジョーク!ジョークよフオン君!────でもぶっちゃけそんな魔物達、楽勝なんだろ?」
「────ノーコメントで」
「かっー!今日もスカしてるなぁ!!」
その男性の名前を「フオン」と呼んだ蔵は何が楽しいのか笑っていた。
ただ、笑いも少しすると治まり蔵は真剣な表情になりフオンに話しかけた。
「────で、本題だけど今日はどうするよ?いつも通りかな?」
蔵のその言葉に以前から変わらないニヒルな笑みをフオンは浮かべると
「勿論、今日も「ダンジョン探索」だ。討伐依頼も色々と良さげな奴を見繕って冒険者カードのデータに入れといてくれ。ただし高ランクは辞めろよ?俺が"上"から何か言われるから」
"フオン"────又の名を"幸太"は呆れながら返事を返していた。
その蔵とフオンの話を「妹」のネロはいつもと変わらずにニコニコと見ていた。
「あぁ、任せてくれ!適性のランク帯で君達兄弟が楽しめる物にしとくよ──今回も宜しくな「シュトレイン兄弟」!」
蔵は楽しそうに幸太とネロに「シュトレイン兄妹」そう伝えるのだった。
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