第159話

アルキアンと二人で学園を歩く。

御者の方はどうやら馬車を指定の場所へ置いてくる為「ごゆっくり~」と言いつつ馬車を引き連れて行ってしまった。

ちなみにだがアルキアンのそば付きのメイドや執事は普通の馬車じゃ追いつけない為遅れて来るみたいだ。


…やっぱりあの御者の引き連れている馬がやばいんだろうなぁ。

普通あんなスピードで駆け抜けるなんて事出来ないだろうし。


そうして私達は二人で職員室の前まで来た。

今は授業中らしく外には誰もいなくこの学園直属の研究員が数名とかしかいない。

まぁここで同級生とかにあったらと思うと…面倒だしいなくて正直助かったな。

それにコレから職員室で話す事は特にあの殿下には聞かれたくない話だしね。


そんなことを考えながらこの学園の場所を少なくともアルキアンよりかは理解している私が手を引き職員室の扉を開けた。

開けて見えるは知った顔。

笑顔を貼り付けコチラを見続けてくる…その顔からは「はよ、しろ」という威圧的な表情が見え隠れしておりつい背筋が凍りつくような感覚に陥ってしまう。

まさにこの職員室全体には吹雪が吹雪いているようにカチンコチンになっているかのようだった。


「おや…コレはコレはレイベル殿下。殿下は本日の授業はどうされましたか?この時間、生徒はクラスでお勉強をなさるのが義務なのでは?」


「おぉ何と…珍しいですな憤怒の大罪者でありレインバード全域を収めるアマガル伯の新星であるアルキアン殿ではないか。なぁにワタシのことは気にしないでくれ…さぁアルキアン殿はマクローバ先生に用があるのだろう?気兼ねなく話すがいいよ」


そうアルキアンと殿下が睨み合いながら話をしそのまま黙って数分勝負の行方は…どうやら殿下の勝ちのようだ。

アルキアンは項垂れており殿下はというとふんぞり返っている。

コレは何が行われたんだこの数秒に…目と目が合う~瞬間に何かが始まったとでもいうのか?

とりあえず殿下はそのままそこで私たちの会話を聞き続けるってことでおけ?


私がその光景をぼーっとしながら見ているとアルキアンが私の肩を叩いた後手を引いて周りの職員が王族の権威にビビって動きがぎごちなくなっている中でもいつも通り作業を続けるマクローバ先生の元へと連れて行かれた。

マクローバ先生はスッとコチラを一瞥した後「えぇ…えぇ面倒」と小さな声で呟き職員室の隣に備え付けられている応対室へと案内された。

それはそれは面倒そうに怠そうに…。


「えぇ…っと確かアルキアン・アマガルさん…いや様と言った方がいいのか?いやコレからはウチの生徒になるんだし呼び捨てでも…えぇまぁそんなことどうでもいいでしょう。えぇ貴方はコレからウチの生徒になるわけですが…」


そんなどうでもいい話から始まり授業の内容やこの学園の校舎の全容とか色々なことを話していく。

話の内容で私はおいそれ私が入学した時聞いてねぇぞという話もあったがとりあえず聞き流す事とした。


「えぇ…まぁそういう感じで…で次の話はあぁコレか。えぇではレナさんの側付きを解消して国費から支払われていた学費を負担し彼女が支払うべきコレまでの学費をも負担すると…」


そうマクローバ先生が肩をすくませながら言うと後ろでドンッという打撃音がしたためそちらへと顔を向けると…笑顔のレイベル殿下がアルキアンのことを見ていた。

隠れていない怒気がコチラまで伝わってくるが当のその笑顔を向けられているアルキアンというとコチラも笑顔でマクローバ先生の方を向きながら大きくうなづいている。


そんな態度だからかレイベル殿下の堪忍袋の緒が切れたようでアルキアンの肩をガシッと掴むと低い声で「決闘ですよ?断らないですよね?」と言いそのまま外へと出て行った。

それに続いてアルキアンも笑顔のまま私を置いて行って出て行ってしまった…。

私は何だ喧嘩でもするのかと思いながら置いて行かれたマクローバ先生の方を見ると心底めんどくさそうにしながら応対室の机にいつの間にか出した紙に羽ペンを走らせていた。


「えぇ面倒ですよ本当に…レナさんはこういうの初めてかもしれないですけどこのイードラ王国は戦闘民族なんです…えぇ何を決めるにも強さが求められます。えぇその昔からの慣習のせいか現代でも気に食わないことがあれば争いで解決して行くのです。えぇ本当…許可証を作って後で学園長に怒られる私の身にもなって欲しいモノですよ」


そうぶつくさ言いながらもマクローバ先生のペン捌きは止まらない。

内容を見れば自分の力では止めることができなかっただとか貴族の端くれとして許可するしか無かっただとか許可証というよりかは反省文を書かされているようで前世では社会の歯車だった私からしたら上からの無理難題に答える下の者は大変だなぁと頭の片隅で思うが…でも私には関係ねぇやと思ってしまった。


いやぁ私はもう反省文とか書かない身分だからね。

お気楽なものさ…マジでそういう点では転生って最高だなと感じてしまう。


「さてと…私もアルと殿下の決闘でも見に行きますか…」


そう呟き応対室と職員室を出て決闘する場所へと歩き出した。

まぁ場所なんてのはどっかの噂好きが勝手に広めたのかゾロゾロと生徒がその決闘が行われる場所へと移動しているのでその波に乗りながら移動する。


そういえばあの何だったか私をこの学園に連れてきた張本人…あの貴族と殿下の決闘もこうやって生まれたのかなぁ?

とか思ったり思わなかったりラジバンダリ。

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