第116話
気がつくと日々というものはあっという間に過ぎていくものだ。
私はここに来てからというものこの学園での生活に溶け込むように意識しながら生活を行っていた。
今までのように何もかもに気を張り常に周りを警戒していることを逆に自分一人が警戒しまくっていると落ち着かないと言われたため警戒を止めるように意識して生活し今まで気にしなかった身嗜みを治すようにした。
あとは…やはり周りの人と合わせるために出来るだけ話すように心がけたことぐらいだろうか?
まぁそんなこんなでここ一週間ぐらいはそんな風に暮らしてきたわけだが…。
「休日が潰れるのはなぁ…気に食わないなぁ」
そんな一週間の中で一番の楽しみというのは学生なら誰しも休日というだろう。
…私の場合はその休みがないわけなのだが。
その理由としては私の雇い主というかレイベル殿下の野郎に休日なのに今日自分の元に来て欲しいとか言われたから私は泣く泣く仕方なくアイツの元へ参じなきゃいけないのだ。
別に今日やることもなかったわけだし別にいいんだけどねぇ。
私はそう思いながらもいつも来ている冒険用の服に着替え仮面を取り付ける。
今回はレイベル殿下から冒険者用の服で来るようあらかじめ言われているため今回は外用の服は着ずに行くこととした。
そして最後に腰にいつものナイフを差し入れ私は寮から出ることとした。
目指す目的地はレイベル殿下が保有している豪邸だ…ここからでもわかるぐらい立派で煌びやかな装飾が施されている王の権威を示すかのようなデザインの邸宅に行くわけだがあそこら辺は誰も近寄らないから私みたいな冒険者が近づくましてや入ったっていう情報が回ったら確実に厄介なことになりかねんから念には念をフードをしっかり被り気配を消しながら移動することとしようかな?
学園の外にある街はいつもは勉学に励む生徒も外に出ておりいつも以上に賑やかでもはや道が埋まるぐらいの光景が広がっているな。
こんな中馬鹿正直に移動しようとは私も思ってはいない…なのでここは路地裏の方から行くことにしよう。
あそこだったら人通りが少ないし私の気配を消しながら行けば誰にも絡まれずに行くことが可能だからな。
まぁ表通りの屋台や家の屋根を蹴って邸宅まで行くというルートもあるにはあるがこの街の家は縦に長いし屋台もかなり少ない。
それにあれをよじ登るのも面倒だし何しろ私があんな高い所に自分から好き好んで行きたくはない。
急がば回れというやつだ。
それに会う時間より早く出たのもあって時間があるしな。
そうして寮から出た私は建物と建物の間にある路地裏から目的地である邸宅へと歩き出した。
路地裏には色々な人が蔓延っている。
例えば朝方まで飲んでぶっ倒れた人やらこの街の宿屋の金を支払うことができずに追い出されたもしくは宿屋に行くことができない冒険者兼苦学生。
この街は学園都市ということで発展はできており一見すると生徒と先生そして街の住民で成り立つ綺麗な街のように表面上は見えるがこんな街でもきちんと裏というものがある。
「す、すみやせんッ!きちんと…きちんと来月には借金は返しやすのでどうか…どうかッ!」
「アァッ!?それで先月も返せなかったよなぁ?今日という今日はきちんと返してもらうぜぇ?」
例えばこのように闇金に手をかけているものがいるわけだ。
学園に通いながら自分を高めるために冒険者になるというのはこの学園では定番…というか文化になっているようで良く冒険者になる生徒が多い。
だがそうなると学費と冒険者になるために必要な最低限の防具が必要となる。
そこで問題が出てきて防具の金はどこから出てくるという問題にぶち当たり金があるやつは親とかから借り後の奴らは自費で払わなくてはならなくなる。
そこからは自分の実力次第の問題だ…借りたならそれを返さなきゃならない。
冒険者として活躍して金を稼ぎ返済しなければ学園側へ報告が待っており報告がされればそこからは転落人生手前まで引きずられる。
まぁ自分の実力さえわかっていればそんな冒険者なんてならずに学園の中で暮らすだけなんだが。
だからこの状況は…自業自得だ。
助けるなんてことはしない。
そうしてその状況をチラッと見た後に私はまた歩き出す。
良心が痛まないのかと問われれば痛むわけがないと私は答えるだろうな…おそらく。
まぁ所謂「時と場合による」というものだ。
誰しも人情を対象に抱けば悪役だろうと許してしまうように私にもその人情が湧けばおそらくきっとその場の勢いで許したり助けてしまうだろうなぁ。
「さて…ゆっくりしすぎたかな?少し早足で行くこととしよう」
そう呟き足を早め当初の目的であるレイベル殿下がいる邸宅へと向かうこととした。
そうして辿り着き第一声。
「でっかぁ」
そんな腑抜けた声が出てしまうぐらいには想像以上にデカかった。
いやまぁ寮の窓からでも見えているぐらいだから相当でかいんだろうなとか思ってはいたがこんなにデカいとは思っていなかったな。
さてここから確かこの邸宅の裏に回って…この色が少しだけ違うレンガを三回ノックしてっと。
するとレンガでできた外壁はその部分だけくり抜かれていき扉の形にくり抜かれピタッとその変化を終える。
そうしてそこから一人の長身の燕尾服を纏った如何にも執事という名前が似合う老人が現れ私に声をかけてきた。
「ようこそレイベル殿下の邸宅へ…わたくしはこの邸宅の執事でございます。こちらへどうぞレイベル殿下がお待ちになっております」
そう言い終わるとお辞儀を行いその邸宅の奥へと進んでいく。
私はその言葉を耳で聞いた後その執事と名乗る老人の後ろをついていくこととした。
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