第93話
やっとの思いで私は設計図通りに魔道具みたいな物を作り上げた。
形は球体で大きさは私の頭より少し小さいぐらい?
…コレでできているはずだが何をすれば良いのだろうか?
まぁ回路に魔力でも込めればこの類はどうにかなるだろうから回路にMPを込めて見れば良いのかな?
「というわけで…起動ッ!」
そう言い私は爪にMPを込め回路に触る。
その瞬間回路が輝き私が描いた回路がまるで生き物のように脈を打つ。
私が作り上げた物はカタカタと動きだしゆっくりと私の爪から離れそして徐々に空中へと浮かび上がる。
私はその非常識な光景に目を見開きながら作り上げた物…『星空の小惑星』に目を向ける。
『星空の小惑星』は一定の距離まで浮かび上がると自分自体を改造するかのようにその脈のよう打っている回路を動かしていく。
…確かに今まで見たことのないぐらい複雑な模様だったがあの模様にこれほどの効果があったとは到底思ってなかった。
私の予想では補助系の魔法陣に似ていたから補助系の魔道具が出来上がるんだと思っていたが…まさかこんな結果になるとは…。
そんなことを思っている間も『星空の小惑星』は改造されていく。
黒かったその球体はクリスタルのように透き通った煌めきを見せる体となった。
その中心には私の描いた2つの魔法陣が浮くようにして配置されておりそれが交差するように重なりその接点に核のようになった対消滅するはずの光と闇の混じる魔力が灰色をしながら周囲を照らす。
それは正に星のような淡い輝きを見せ私はそれを魅入るように見つめていた。
まるで芸術品のように輝く『星空の小惑星』はゆっくりと私へ近づきそして回路が触手のように『星空の小惑星』から離れて…。
そして…私の心臓を貫いた…。
「えッ……?」
一瞬の出来事に理解ができない。
そして数秒が経過し抵抗しようとするが先端に返しがついているようで取ることができない。
痛みはないが異物感はある。
私は自分の突き刺した『星空の小惑星』を見る。
それは悠々と空中を浮かんでいるが一つだけ変わったところがある。
…それは輝きである。
その輝きは先ほどより色褪せている。
ではその輝きはどこに行っているのだろうか?
それは…私の心臓なのだろう。
『星空の小惑星』の回路は心臓に突き刺したところに向かって回路をつたりながらその輝きの元である光と闇が混じった反発する筈の魔力を私の心臓に送り続けている。
私はそれがわかった瞬間冷や汗が出た。
だって普通は対消滅するような魔力を私に送られ続けられているのだ。
そんな魔力が私に注がれれば私の身体はどうなるのかなんて一目瞭然である。
結果は消滅…どうあがいても死ぬという結果となる。
私は身体強化を限界まで引き上げ引っこ抜くように回路に手をかけて力を入れる。
だが取れない。
それから1時間が経過し…『星空の小惑星』は全ての輝きを失くし全ての輝きは私に取り込まれた。
『星空の小惑星』に目を向ける。
それは輝きを失くし元の黒い球体となりひび割れ煙をその場に残す残骸となっていた。
…苦労して作ったものがこんな簡単に壊れたそれだけでショックだが…コレは何の道具だったのかついにわからずじまいだった。
ステータスを開く…だが何も変わりもなく身体を動かすが何も変わりは無さそうである。
…いや変わったことはあった。
それは心臓と記憶。
自分の突き刺されたところに手を当てると鼓動は無く並行思考を行い記憶を探すと何故か知らない記憶がそこにあることがわかった。
普通並行思考をして魔法陣の形を記憶を探すとなると頭の脳から思い出すような感じなのだがその中に私でも作った覚えがない魔法陣…そして記憶がそこにあることがわかる。
そしてこの記憶からこの目の前にある残骸のことも理解することができた。
『星空の小惑星』…正式名称『魔法陣式継承水晶機』。
効果はマスターの記憶の複製と対象にその記憶の継承及びマスターの身体器官の継承。
この道具は遠い昔に次代へ伝承をする為職人などが作り上げた伝承するための機械で死ぬ直前に記憶をオリジナルの魔法陣に込め次代に継がせるというものだったらしい。
この設計図を作ったマスターと設定されている人物も自分の記憶と技術を継承させる為作り出したらしい。
まぁ何故それがここにあるのかなんてわからないが…。
「だが…副次効果である身体器官の継承…いや正常化か…」
コレは医療にも活用されていたようでその効果である正常化とも言える伝承により私の心臓は魔石のようになってしまったらしい。
特に不便はしないがやはり心臓がないから私には脈というものがなくなってしまい心臓がドクドクと音がすることも無くなってしまい何というか…もう人間では無くなってしまった感が否めない。
いやこの記憶では心臓がこんなんでも人間と判定されているらしいから進化の過程で今の人間はこの魔石の代わりに心臓が出来上がった感じなのだろうか?
「まぁそんなことはどうでも良いか…」
そんなことを思いながら気配のある方を見る。
そこにはこの39階層の雑魚敵である三つ目の大蛇『カースヴェイパー』がこちらを睨みながら這いずってきた。
私はそちらに身体を向けカースヴェイパーを睨み手を突き出し魔法陣を構築し始める。
「さて…この記憶の実験台にでもなってもらおうか」
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