第88話
私たちは魔法陣に乗り地上へと無事に到着し探索者ギルドへ来ていた。
相変わらず人はいなくこざっぱりしており落ち着きがある…のだが私の横にいる奴はそうではないらしい。
ダンジョンの中からここに来るまでというか現在進行形でヨグは両手に花状態が続いている。
まったくこちらの気も知らずにコイツらは何をしているんだか?
コイツらのせいでギルドに来るまでの道中の街の人の目といったら恐ろしいものだった…マジで嫉妬とかじゃなく生暖かい目が向けられていてさらにはその視線が私にも飛んでくるもんだから羞恥より寒気がする。
前世では結構視線に敏感で蔑みとか怒りとか視線で大体感じる物だったがこんな変な視線を浴びるのは初めてだなぁ…二度とこんな視線は浴びたくねぇな。
んで今何をしているかというとドローさんにダンジョンで拾ったアーティファクトを鑑定してもらっているところだ。
にしてもドローさんの視線も私からしたらかなりキツイものだったな。
何せ知り合いであるヨグの両腕に女がついていてヨグがその腕についている女と話しながらこちらまで歩いてきているのだそりゃこれについて説明が欲しいだろう。
残念ながら私には全く説明できんが。
まぁそんなことより今回の成果が大事だ。
ドローさんにはすまないが気になっていることはほっといて仕事に集中してもらいたいものだ。
今回ダンジョンで獲得した魔石を換金し手に入れた金額は一人銀貨2枚というなんとも言えない金額となった。
一応これでも普通の探索者よりかは少し稼いでるぐらいの金額らしい。
というかこれだけで生活って結構辛くないだろうか?
今泊まっている宿で1日銅貨5枚で泊めれて更に日用品とかで銀貨1枚とか消費して朝昼夕食で銅貨5枚以下の生活をしているということになるぞ?
確かに日用品は買えば少しの間は保つだろうがそれでも時代が発展していないからかすぐ物は壊れるし買い替えも欲しくなる。
これじゃあいくら普通に生活できても、もしもの時の金が貯まらない生活になってしまう。
ここの街の人はかなり苦労してるんだろうなぁ…。
「ヨシッと…鑑定が終了したぜ?この3つの紙が今回の成果だ。後は若い衆に任せるぜぇ…」
そう言われてカウンターの上に3つの紙が出された。
…そしてドローさんは椅子を引っ張り少し離れたところに置くとそこに座りこちらを見ながらニンマリとした気持ち悪い顔をしながらこちらを見つめてきた。
ドローさんは確かに良い人だ…自分なりに愛想を良くしようと努力しようとしているところも評価ができる。
だがその笑顔とささやかな行動が人気がない理由だろうと私は表情に出ないようにしながらそう思い机の上に置かれた3つの紙を見ることにした。
アーティファクト名:古の設計図の断片
ランク:F
効果:断片同士で繋げると設計図が出来上がる(1/10)
売値:金貨10枚
アーティファクト名:水精の魔杖
ランク:C
効果:水属性の魔法の威力と親和性が上昇する。水の精霊を呼ぶことができる。
売値:金貨2枚
アーティファクト名:試製一式魔法小銃
ランク:E
効果:5MPを消費して弾を打ち出す。小確率で暴発することがある。
売値:銀貨5枚
このような成果となった。
なかなかどれも興味が惹かれる代物だと私は思う。
この世界のエアガンでもない本物の銃に精霊を呼び出すことができる杖がある。
だが一番目が引かれるものといえば…設計図だ。
なんというか心をくすぐられる感覚に陥ってしまうというか…まぁ古って名前がついてるしこれだけ高価なのだから集めれば相当良い設計図ができる筈だ。
「それじゃあ分配しようか?…まずこの設計図?誰か欲しい人いる?」
そうヨグがリーダーシップを発揮しアーティファクトの分配を始めいきなり設計図の分配が始まったので私は勢いよくヨグの方を見て手を無言で上げる。
すると周りの人は苦笑するが私にはそんなことはどうでも良いコレさえ手に入れれば問題無い。
「あぁじゃあコレはレナさんにあげるよ…じゃあ次…」
私は設計図を手に入れると手に持ち上にかざしたりして色々な角度で見ることにした。
もちろんヨグの話なんて聞いていない。
私は思うがままに研究者としての探究心に則って行動を開始することとした。
形状としては厚さ1cmぐらいも無いような古い紙でできており断片という割には普通に四角い紙だ。
紙に書いている内容は…なんだコレ…字が歪んでいて読み取れないな。
これは集めたら自動で合成されて完成形となる物だと考えた方が良さそうだ。
んでこれが高価な訳を考察するがコレは兵器の設計図にもなる可能性があるから国が集める…とかが有力な考え方かな?
まぁ外れているかもだが…にしてもコレを後9枚集めなきゃいけないのかこのギルドで売ってないだろうか?
そんな感じに設計図を見ながら考えていると肩を叩かれそちらを見る。
そこにはヨグが立っておりどうやらギルドを出てこれから打ち上げを行うとのことだった。
ちなみにいうと私がこの肩を叩かれるに気付くまでにかかった時間は30分。
それまでヨグは私の肩を叩き続けていたらしい。
「…そんなことしなくても揺らしてくれれば気づいたんだがなぁ」
そんな風に私は小さく呟くとヨグは苦笑いをしながら打ち上げの場所までの案内を開始した。
まぁ今のヨグは両手に花状態なのでまたもや視線が辛い状態になってしまったわけだが。
やっぱり主人公ってそこらへんの感覚がおかしいんじゃ無いだろうか?
私はそんなどうでもいいことを考えながら前へ前へと進んでいくヨグの後ろを歩いていくのだった。
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